第9話:視察、勘違い、そしてクソ女神の5G通信
宇宙破壊レベルの超絶スキル、使い道は……井戸掘りと畑開拓!?
ジト目魔王・凛による、勘違いだらけの極貧領地経営コメディ!
ガチャのために次元超越5G回線を生み出した駄女神と、勝手に感動しまくる民たちに挟まれた凛の無双(?)開拓劇を、ぜひ頭の力を抜いてお楽しみください!
広大で静寂に包まれた黒塗りの玉座の間。
銀髪に二色の瞳を持つ少女——魔王の姿となった凛は、石造りの玉座で優雅に脚を組んでいた。
ふと立ち上がった彼女は、初めて魔王城の外へと足を踏み出すことを決意する。
しかし、その二色の瞳に映ったのは、「非効率」と「不合理」の極致とも言える悲惨な光景だった。
深くひび割れた赤茶けた大地。畑には枯れ果てた褐色の稲が力尽きるように倒れている。今にも崩れそうな木造の家々は、茅葺き屋根に大きな穴が開いていた。
朝食を済ませたばかりの凛の前に広がる、あまりにも劣悪な環境。そして何より酷かったのは、ボロボロの土壁の隅だった。
汚れにまみれた小さな獣人(猫族)の子供が地面にしゃがみ込み、土埃の上に落ちていた小さな乾燥パンのくずを丁寧に拾い上げ、軽く払っていた。薄っすらとした笑みを浮かべ、小さな声でぽつりと呟いている。
凛はその場に三秒間、完全に硬直した。
死んだ魚のような瞳が、わずかに暗く沈み込む。
(……これ、決定的に間違ってますね)
凛は無言で歩み寄ると、子供の手からパンくずをひょいと取り上げた。目の前にあるあまりの惨状に眉をひそめ、湧き上がる不快感と苛立ちのまま、火魔法で灰一つ残さず焼き尽くした。
「ふぇ……っ!?」
子供が今にも泣き出しそうになった瞬間、猫族の母親が飛び出してきた。我が子を抱きかかえ、凛が腹を立てたのだと思い込み、ガタガタと震えながら命乞いをする。
「ひぃっ……! お許しください、魔王様! この子が何かご不快なことをいたしましたなら、どうか私をお罰しください……っ!」
母親が必死に哀願する傍らで、凛は次元ストレージから超巨大なホールケーキを取り出し、ぷいと横を向いて差し出した。
「……持っていきなさい」
凛はそっけなく呟いた。
――しかし、重度の『勘違いフィルター』を通した母子の目には、全く違う光景が見えていた!
((ま、魔王様が……気高く、気品に満ちた優しい眼差しでケーキを差し出してくださっている……!?))
さらに、母子の耳には凛の呟きが、重厚で威厳に満ちた『魔王』の声として響いていた。
『我が民よ……このような粗末なものを口にすることを、この我が許すと思うか? これを受け取るがよい。汝らの豊かさを保証することこそ、我が責務である――』
「ま、魔王様ぁぁぁっ! なんというお優しさ……っ! 感謝いたしますっ、感謝いたしますっ!」
親子は溢れ出る涙を拭うことも忘れ、地面にひれ伏して感涙にむせび泣いた。
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【神の5G通信と、呆れた事実】
問題を根本から解決するため、凛は足早に魔王城へと引き返した。
Tシャツのポケットから普段使いのスマートフォンを取り出すと、画面にはしっかりとWi-Fiの接続アイコンが表示されている。
女神の話によれば、この異世界ではどこでも「5G」が繋がるらしい。
もちろん、これは物理学上の奇跡などではない。
次元観察室に引きこもるあのクソ女神が、人間界の5Gネットワークのコードをコピペし、自分自身の手でコードを書いて次元を超越するインフラを構築したのだ!
理由ただ一つ。「毎日のログインボーナスを逃したくない」「ギルドバトルに遅刻したくない」「イケメンガチャで沼っている時にラグが発生するのが許せない」という極私的な欲望のためだけに!
全宇宙の歴史上、最も高度で革新的な通信技術——。
それは、ただ一人の廃人ゲーマー女神の煩悩によって生み出されたものだった。
凛は試しにスピードテストのアプリを起動してみる。
【ダウンロード:10,000 Mbps/レイテンシ:0 ms】
(……10ギガの回線に、レイテンシ0ms……さすがは神の技術力ですね。くだらないことに対する謎の執着心だけは認めますけど……)
凛は即座に女神へビデオ通話をかけた。
画面からポコッとホログラムが飛び出し、コスプレ姿の女神が無駄に眩しい笑顔を振りまく。
「どうしたの凛ちゃん〜?」
凛「なぜ魔王領の街や住民たちは、あそこまで極貧で悲惨な暮らしをしているのですか?」
女神(眉をひそめて不思議そうな顔をする):「え? ああ……それ? 気にしたこともなかったわ」
凛「……」
女神(肩をすくめて能天気に):「だって私、世界にバグが起きないように監視する女神だし? 人々がどう生きてるかとか、ぶっちゃけ興味ないのよね〜」
――プチッ。
凛は女神の言い訳を最後まで聞くことなく、無言で通話を切り捨てた。
(……あのクソ女神に期待した私が馬鹿でした。自分で何とかした方が、よっぽど未来がありますね)
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!
魔王凛ちゃんの異世界生活初日、いかがだったでしょうか?
静かに効率よく生きたいだけなのに、周囲のあまりの非効率さとトラブルに巻き込まれ続ける彼女の苦労がお分かりいただけたかと思います。
1. **ギルドバトルとガチャのために次元を超える5G回線を作り上げたクソ女神**
2. **星を砕く極大魔法しかなくて生活魔法が一切存在しない極端すぎるスキルリスト**
3. **重度の『勘違いフィルター』で凛ちゃんのツンデレ対応を勝手に聖母の慈愛へと変換する猫族の親子**
さて、ここからいよいよ本格的な【領地開発編】へと突入していきます!
スマホのAIアドバイザーの助言と、出力0.000000001%の宇宙破壊スキルを駆使して、赤茶けた荒野をどうやって超ハイテク都市へと変貌させていくのか。そして副官ガスカルの胃袋と心臓は無事保つのか……!?
読者の皆様に少しでも笑顔と笑いをお届けできたなら幸いです。
それでは、次なる領地開発の物語でお会いしましょう!
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