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第10話:ハイヒールの一撃、タブレットの設計図、そして前払い金

読者の皆様、いつもお読みいただきありがとうございます!


第10話は、ついに領地の生命線である「水問題」に挑む凛ちゃんのお話です。

AIの合理的すぎるアドバイスと、無駄に洗練されたハイヒールの一撃でお送りします!


ぜひお楽しみください!

凛は広大で静まり返った漆黒の玉座の間へと戻り、そのまま優雅に玉座へ腰を下ろした。足を組み、胸ポケットからスマートフォンを取り出す。


(……何から始めるべきでしょうか……)


二色の瞳が、10,000 Mbpsの5Gシグナルに接続された画面を見つめる。彼女は『AIアドバイザー』アプリを立ち上げ、最も合理的と思われる質問を入力した。


【質問:貧しく乾燥した領地を持続的に発展させるには、何から始めるべきですか?】


ピコン!


青い光とともに、ミリ秒単位で回答が生成される。


【分析完了:優先度順に以下の基本課題の解決を推奨します】


1. 水資源:清潔な水の確保と灌漑システムの構築(最優先)

2. 食料安全保障:農業生産の向上と飢餓の撲滅

3. 衛生と住環境:感染症の予防と生活水準の向上

4. 雇用と経済:持続可能な収入源の創出

5. 教育と技術:長期的な発展基盤の確立


凛は画面を読み終えると、小さく頷いた。


(……理解しました。水がなければ、工場や市場を作っても意味がありませんものね。まずは『水』からです)


彼女はさらに掘り下げた質問を打ち込む。


【質問:清潔な水と灌漑システムを確保するには、どのように進めるべきですか?】


【AI分析結果:以下の手順で自然水資源の調査から開始してください】


1. 自然水資源の調査:河川、渓流、湖沼、地下水、降水量

2. 貯水施設の建設:溜め池、小型ダム、村の貯水池

3. 灌漑システムの構築:用水路の掘削、農地への配水網

4. 浄水処理:不純物の除去、消毒、給水体制の確立

5. メンテナンス:水質検査と設備の修繕


「……まずは水資源の調査、ですね」


ジト目で画面から目を離し、傍らで汗をかいている副官ガスカルを見上げた。


「ガスカル。この近くに……『川』はありますか?」


ガスカルは慌てて片膝をつき、額の汗を拭いながら絶望的な声を上げた。


「は、報告いたします凛様! 最も近い川は……三百度り(約300キロ)離れた人間どもの領地にございます!」


凛は三秒間沈黙した。「……では、『湖』は?」


「ございません! この地は歴史上、一度たりとも湖が存在したことなどございません!」


「……」


凛は冷め切った感情を立て直し、最後に尋ねた。


「では……『地下水』は? 井戸を掘ったことはありますか?」


ガスカルは肩を落とした。


「凛様、この地の地下は頑丈な花崗岩かこうがんで覆われており……我ら魔族の力では、五メートルと掘り進めることができないのです!」


スマホ画面を見つめる凛。


(……AIの言うことは工学的に100%正しいです……ですが、この世界には何一つ存在しないのですね)


---


【水脈の探査と、一撃の貫通力】


凛はため息をつくと、城のバルコニーへと向かった。そして【飛行魔法】を起動し、静かに上空数千メートルへと舞い上がる。


静寂に包まれた層雲の上の世界で、凛はスマホを掲げ、4K Ultra HDモードで周囲の地形を撮影。10,000 Mbpsの超高速回線でAIアプリへとアップロードした。


【質問:高空撮影画像から、地下水が蓄積している可能性の高い地形を分析してください】


ピコン!


【分析完了:地形および岩石の侵食傾向から、城の北西エリアに地下水が蓄積している可能性が高いです。追加の地質調査を推奨します】


(……あそこですね)


凛はAIが示した城裏の広場へと降下した。そっと目を閉じ、地中深くへ魔力探査を走らせる。


(……本当ですね。深さ八十五メートルほどの場所に、濃密な水属性のマナが満ちています)


「り、凛様! ここの花崗岩は鋼鉄よりも硬いのです! 我ら土属性の魔族を総動員しても、数メートルでツルハシが砕け散ります!」


騒ぎ立てるガスカルを無視し、凛はマナが最も濃密なポイントに立った。


(……加減を慎重に計算しなければなりませんね。衝撃が強すぎれば、地下水の圧力で爆発が起きるか、あるいは余波で城が崩壊します……衝撃波を一直線に、正確に八十五メートル下まで収束させます……)


凛は右足を少し上げ、履いていた清潔な黒のハイヒールを、花崗岩の地面へとトントンと軽く打ち付けた。


カツン――。


ズズズズズズズズズズン――!!


広範囲の地震も、飛び散る破片すらない。完璧に制御された物理エネルギーの衝撃波が一直線に貫通し、八十五メートルの花崗岩層をナノレベルで粉砕した。


ザーーーーーーーーーーーーッ!!


直後、猛烈な圧力を持った透明な地下水が、五十メートル以上の高さまで勢いよく噴き上がった!


「ぎぇえええええええっ!?」


ガスカルと魔族の兵士たちは目玉が飛び出さんばかりに驚愕し、顎が外れそうなほど口ぐうぐうと開けた。


(ハイヒール……!? ハイヒールで軽くとんとん叩いただけで、威力を完璧にコントロールして八十五メートルの岩盤を貫通させたというのですか!? 武神だってそんなこと不可能ですぞ!!)


ガスカルは恐れおののき、地べたにひれ伏して激しい歓喜の声を上げた。


---


魔導書タブレットと、領地開発費】


凛は異空間ストレージから大型の『タブレット』を取り出した。画面には、AIが生成した『三段階ろ過施設と溜め池』の3Dモデルが表示されている。


凛はタブレットをガスカルたちに向けた。


「聞きなさい。汲み上げたばかりの地下水は冷たすぎ、鉱物濃度も高いのです。そのまま作物に与えれば冷害で枯れてしまいます」


凛は画面をスワイプしながら冷淡に命じた。


「このタブレットの設計図通りに溜め池を掘りなさい。サイズと深さは、絶対に狂わせてはなりません」


青く光り輝く3D設計図。ガスカルたちの『勘違いフィルター』を通すと、それはまさに【天界より授かりし知恵の魔導書】に見えていた。


「は、ははぁっ! 凛様!」ガスカルは感涙にむせんだ。「この魔導書の教えに従い、今夜のうちに完璧な溜め池を掘り進めてみせますぞ!」


凛はタブレットを見つめ、ジト目で呆れたように息を吐いた。


(……ただのタブレットです。魔導書ではありません……ですが、無事に完成させてくれるなら、魔導書と呼ぼうがまな板と呼ぼうがどうでもいいですが)


---


指示を出し終えた凛は、城の陰へと移動すると、【転移魔法】を発動させた。


視界が歪み、一瞬でだらしない女神の観察室へと到着する。


散らかった部屋のソファで、アニメ柄のパジャマを着た女神が狂ったようにスマホゲームのガチャを回していた。


「きゃーっ! またすり抜けたぁぁー……って、え!? 凛ちゃん!?? なんでここに!?」


凛はジト目のまま冷ややかな視線を向け、静かに手を差し出した。


「女神様……」


「な、なにかな……?」


「領地開発費の前払いを要求します……カップ麺を買いに行きますので」


女神:「……はい?」

ここまでお読みいただきありがとうございました!


無事に女神からカップ麺代(前払い金)をむしり取ることができるのか……!?

そして魔族たちはタブレットの設計図通りに溜め池を完成させることができるのか!


少しでも「面白い!」「凛ちゃんのハイヒール一撃がカッコいい」「駄女神が哀れ」と思ってくださった方は、ぜひページ下の【ポイント評価(★★★★★)】や【ブックマーク追加】、【いいね!】を押していただけると、執筆の大きなモチベーションになります!


皆様の応援が凛ちゃんのカップ麺(と作者の執筆エネルギー)になります!

それでは、次回の第11話でお会いしましょう!

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