第45話:戦場の静寂と絶望の業火
読者の皆様、こんにちは!
第45話では、アクロシア全土の戦力を結集した総力戦が描かれます。
絶望的な激闘の末、ついに崩れ落ちた炎帝竜イグニア。しかし、戦場に訪れた一瞬の静寂の後に待ち受けていたのは……。
魔王城の平和な日常と、戦場の凄惨な展開の対比をどうぞお楽しみください!
魔王城の大広間に設置された巨大な魔導スクリーンに、赤々と「GAME OVER」の文字が浮かび上がった。
駄女神ガチャラはソファにバタリと倒れ込み、不満げに声を張り上げた。
「ボスの攻撃が激しすぎるでしょ! なんなのあの理不尽な強さは!」
「そうですわね……」
隣に座るエルフの女王シルフィリアも、溜息をつきながら頷いた。
「リンちゃん、手伝ってよ! このドラゴン、火ばかり吐いてちっとも隙がないの!」
ガチャラは、静かに教科書を開いて勉強していたリンに向かって手を振った。
「嫌です。それに、正面から愚直に突っ込んでいけば攻撃を受けるのは当然です」
リンはページをめくりながら、目線すら上げずに淡々と返答した。
「リンちゃんのケチ! ちょっとだけでいいから操作してよ〜! お願い〜!」
何百万年も生きているはずの女神が、まるで幼子のように駄目をこね続けるが、リンは静かに勉強を続けた。
……
一方、西方砦の สมรภูมิ——。
弓を引き続けるロイの指先は、絶え間ない過負荷により激しく震えていた。
「くそっ……あんなに特訓したってのに!」
「真っ先に『怖くない』って威張ってたのは誰だっけ?」
戦線へ復帰してきたレオンが、軽く声をかけてロイの意識を繋ぎ止める。
「[エリアヒール]!」
クララはレオンの足を止めさせない絶妙なタイミングで広範囲回復魔法を発動させた。レオンは速度を落とすことなく、そのままイグニアへと突進する。
「うるさい! 怖がるのは当たり前だろうが!」
ロイが叫び返す。
「[ナインフォールド・スラッシュ]!」
ロイとエリーナの援護射撃により飛翔を阻まれたイグニアに対し、レオンは躍動し、九条の金色の剣気を叩き込んだ。
イグニアは苛立ちとともに巨腕を振り下ろし、レオンを叩き潰そうとする。
レオンは[ホーリーガード]を展開し、遠方からクララが[ホーリーシールド]を重ねて張った。
激しい衝撃に弾き飛ばされたレオンは、アウレリアの剣を地面に深く突き立て、長い溝を刻みながら踏みとどまった。
「調子に乗るなよ、羽虫どもが!」
怒り狂うイグニアが再び[エンペラー・フレイム]を解放しようと顎を開く。
「[ウォーターウォール]!」
エリーナが即座に巨大な水の壁を構築し、クララの[ホーリーバリア]がそれを補強した。
猛炎を防ぎ切ったものの、全員が甚大なダメージを負う。クララは間髪入れずに[エリアヒール]を放ち、パーティーの体力を引き上げた。
だがその時、レオンたちの足元に巨大な赤色の魔法陣が展開された。
「まずい……! [インフェルノブラスト]の詠唱陣よ!」
エリーナの悲鳴のような警告が響く。
「全員、撃てーーーっ!!!」
背後から地鳴りのような叫びが上がった。
無数の矢と魔導弾が雨あられとイグニアに降り注ぐ。一撃一撃の威率は小さくとも、圧倒的な数の暴力がイグニアの詠唱を力ずくで中断させた。
「攻撃の手を緩めるな! 撃ち続けろ!」
冒険者ギルドのギルドマスターが自ら弓を引きながら指示を飛ばす。その背後には、救援に駆けつけた数十万もの冒険者たちが控えていた。
「王国中の戦力が集まったみたいだな……」
レオンは剣を支えにして体を起こした。
「相変わらず下手くそな射撃だぜ」
ロイも泥を払いながら立ち上がる。
「素人なんだから仕方ないでしょ」
エリーナも息を整えながら身体を起こした。
「3年前の悲劇以降、魔法を使えない方々も暇を見つけては弓の訓練を重ねてきたのです。それだけでも十分に立派ですわ」
クララは優しく微笑むと、パーティー全員へ極大の補助魔法を途切れなく付与し始めた。
[ブレス][ラック][ディフェンスアップ][ホーリーシールド][オールステータスリジスト][クーリングコート]。
「すげえ……Sランクの聖女はバフの詠唱速度まで桁違いだ……!」
周囲の冒険者たちが感嘆の声を上げる。
「余計なものに見とれるな! 奴に体制を整えさせるな!」
ギルドマスターが怒鳴り散らすが、その胸中では(頼むぞ……あいつらはこの国最強のパーティーだ。あの化け物を倒せるのは奴らしかいない)と祈っていた。
絶え間ない集中砲火にイグニアの怒りは頂点に達した。全身の魔力を解放すると、自身を中心に全方位へ灼熱の衝撃波を爆発させた。
魔導士たちの水の壁は打ち砕かれ、盾役の兵士たちも大盾ごと吹き飛ばされて戦場に転がった。
しかしレオンたちは[ホーリーガード]と[ホーリーバリア]で耐え抜き、後方に控えていたロイが煙の隙間から矢を放つ。
「[シャープシューティング・アロー]!」
クララの[エリアヒール]を受けたレオンが前線へ飛び出し、[ナインフォールド・スラッシュ]を叩き込む。ロイとエリーナの追撃が完璧に噛み合い、ついに——イグニアの巨躯が猛然と地面へ膝をつき、倒れ伏した。
激闘の末、パーティー全員が疲弊しきってその場に崩れ落ちる。
(まだだ……この程度で仕留められるはずがない!)
レオンは最後の力を振り絞り、大剣を両手で高く掲げて極大の光を収束させ始めた。
しかし——。
巨躯横たわるイグニアの体は、ピタリと動きを止めた。
咆哮もない。
身じろぎもない。
呼吸の音すら途絶えた。
騒乱に満ちていた戦場全体が、嘘のように一瞬の静寂に包まれる。
レオンは緊張の面持ちで、目の前の巨体を見つめた。
「……死んだのか?」
ロイが静かに弓を下げる。
「なさそうだな……」
エリーナも不気味な違和感に目を見開く。
「私も、嫌な予感がするわ……」
傷を癒やそうと手をかざしていたクララの動きが止まった。
「皆さん……」
クララは震える声で絞り出した。
「一度、下がってください……!」
ズシン……。
イグニアの体の下から、地鳴りのような振動が響いた。
ズシン……ズシン……。
先ほどまでを遥かに凌ぐ熱波が、周囲の空間を歪めながら膨れ上がっていく。
レオンの目が限界まで見開かれた。
「みんな! 下がれーーーーッ!!!」
だが——。
カッ……!
立ち込める煙の奥で、真紅の双眸が鋭く見開かれた。
イグニアの口元が、冷酷な嘲笑の形に歪む。
「この我れが、このような羽虫どもの足掻きで屈するとでも思ったか……」
顎の直前に、巨大な真紅の魔法陣が展開される。
「お前たちの希望ごと、灰燼と化すを見るがいい!」
[エンペラー・フレイム]!!
零距離から放たれた極大の灼熱が、幾重もの防護を容易く飲み込み、数キロメートルにわたって全てを焼き尽くした。
攻撃が収まった時——戦場には、立ち尽くす人間の姿は一人として残されていなかった。
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最後までお読みいただきありがとうございました!
第45話では、アクロシア全軍の総力戦と、イグニアの圧倒的な絶望の反撃をお届けしました!
一瞬の静寂からの[エンペラー・フレイム]……はたしてレオンたちの運命は!?
絶望の淵に立たされた人族の戦いの結末を、ぜひ次回も楽しみにお待ちください!
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それでは、次回の更新もお楽しみに!




