表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/52

第34話:完全週休2日の警備員と、竹樋の上の真剣勝負

いつもお読みいただきありがとうございます!


第34話は、まさかの「送迎付き&完全週休2日」で魔王城警備員へとあっさり転職を決めた勇者レオンと、文明の利器エアコン&流しそうめんに完全に心と胃袋を掴まれたエルフの女王様のお話です!


社畜魔王リンちゃんの完璧すぎる福利厚生と、プライドを投げ捨ててそうめんに命を懸ける女王様の姿をお楽しみください!


それでは、第34話スタートです!

女神の固有結界(異空間)内にて、リンの分身とレオンが食事を終えると、分身リンは1枚の洗練された名刺をレオンに差し出した。


「魔王リン……いえ、もう一人の私から、あなたにこの名刺をお渡しするよう頼まれています。もう一人の私は、あなたを正社員として雇用したいと考えております」


レオンは目を丸くし、パチパチと瞬きをした。「は? 何だって!?」


「あなたが頻繁に雑務を手伝ってくださっているため、正式なお給料と雇用契約書をお渡しすることで報いたいとのことです。もし興味がおありでしたら」


「……その仕事というのは、何をするんだ?」


「あなたの高い戦闘能力を考慮し、警備責任者の役職が適任であると判断いたしました」分身リンは淡々と説明を続ける。「また、基本的な福利厚生についても事前にお伝えするよう命じられています。勤務日は月曜日から金曜日、毎週完全週休2日制、祝日・有給休暇あり、社会保険完備、そして通勤の便宜も図られます」


レオンは少し言葉に詰まった。「ええと……最後の通勤の便宜っていうのはどういうことだ?」


「出勤時間になりましたらご自宅の前でお待ちください。私があなたをこの女神の固有結界へ転送し、そこから魔王城へのワープゲートを開きます。そして夕方には……」


「契約成立だ!」分身リンが話し終える前に、レオンは即答した。毎日送り迎えをしてもらえると聞いた瞬間、その青い目を輝かせた。「あの……月曜日から日曜日まで、毎日働かせてもらえませんか!?」


「不可能です。良い従業員は労働基準法に基づき適度に休息を取るべきです」


その夜の歓迎宴会は、思いのほか和やかな雰囲気の中で幕を閉じた……。


---


[翌朝:魔法産業プラント視察]


魔王領の朝の空気は、思っていたよりもずっと清々しかった。パリッとしたスーツ風の衣装に身を包んだリンは、エルフの女王と参謀たちを率いて「魔法産業研究センター」へと足を踏み入れた。そこは24時間明かりが灯る巨大な石造りの建物だった。


「こちらが今四半期のメインプロジェクトとなります……」リンは銀色の金属と魔石で作られた美しい四角い装置へと手を差し向けた。


気品ある女王の佇まいを保ったまま、エルフの女王は興味深そうに首をかしげた。「これは何でしょうか、魔王様?」


「『魔石式エアコン』です」リンは敏腕経営者のようなハキハキとした声で説明した。「生産プロセスはアウトソーシング(外部委託)を活用してシステム化されています。ドワーフ族が本体の外装や金属構造、内部メカニックの製造を担当し、エルフ族の皆様には魔石への温度・湿度制御の魔法陣の刻印を担当していただきます」


リンが装置のボタンに軽く触れると、次の瞬間、まるで初春の湖畔を吹き抜けるかのような爽やかで心地よい冷風が、女王とその一行を優しく包み込んだ!


[ハッ!]


エルフの女王と参謀たちは目を丸くし、瞬時に体の力が抜けて、うっとりと深く息を吸い込んだ。


「このエアコンは魔王領の住民の生活水準向上のために設置されます」リンはメガネのフレームをクイッと押し上げた。「そして残りの製品はプレミア価格で人間の商人へと輸出され、その利益は福利厚生基金へと還元される仕組みです」


これを聞いたエルフの女王の翡翠色の瞳が、一瞬で爛爛と輝き出した! 目の前の快適な冷風と美しいデザインに魅了され、彼女は気品を保つことも忘れて思わず本音を漏らした。


「ま……魔王様! 我が樹海にある城にもぜひこれを導入したく存じます! 注文を……いいえ! 私もこのプロジェクトに投資させていただけないでしょうか!?」


リンは勝利を確信した笑みを薄く浮かべた。「売買契約のご提案でしたら、昼食後にじっくりとお伺いいたします」


---


[驚愕の昼食:竹樋の決戦・流しそうめん]


遡ること以前、リンがドワーフに命じて「魔法製麺機」を完成させて以来、リンの情熱は留まることを知らなかった。開発チームに命じて機械を改造させ、パスタ、うどん、そして極細のそうめんなど様々な麺を打ち出せるようにしただけでなく、冷凍庫や魔法製氷機といった厨房用魔導具も次々と開発させていたのだ。


昼時になると、リンはエルフ一行を城の中庭にある石庭へと案内した……。


エルフたちの前に広がっていたのは、想像していたような豪華な長テーブルではなく、半切りにした竹を繋ぎ合わせた巨大な竹樋たけといだった。それは石庭を巡るように長く伸び、冷たそうな清流と透明な氷が流れていた。


「本日の昼食はこちらです……ざるそうめんです」リンは特製のめんつゆが入った器と箸を全員に配りながら淡々と説明した。「ただし、今回は『流しそうめん』という形式で召し上がっていただきます」


エルフの女王は半信半疑で器を受け取った。(水に流して食べる……? なんと奇妙で品のない食べ方でしょう……)


しかし、獣人族の給仕が上流からひとくち大の白いそうめんを流すと、竹樋に乗ったそうめんは氷の間をくぐり抜けながら美しく滑り落ちてきた!


[サッ! サッ!]


竹樋の脇に控えていた狼族の将軍と獣人たちが、熟練の手つきで見事にそうめんを箸で救い上げ、つゆにくぐらせて勢いよくすすった!「ズズッ!」


「ハァーッ! 冷タクテ最高! 麺のコシも凄くて激ウマです、魔王様!」将軍が幸せそうに叫ぶ。


エルフの女王はその光景に軽くショックを受けた……しかし、つゆの芳醇な香りと、目の前を通り過ぎていく白い麺の群れが、彼女の好奇心(と空腹)を限界まで刺激した!


女王は深呼吸をし、高貴なマントと品格を保とうとしながら、静かに竹樋へと箸を伸ばした……。


[ツルッ!]


「あ……!?」 そうめんは滑らかな滑りを見せ、あっさりと彼女の箸を通り過ぎて行った!


[ツルッ! ツルッ!]


焦って何度か箸を突き立てたものの、隣にいた獣人の部下が容赦なく目の前でそうめんを横取りしていった!


その瞬間……エルフの女王の「高貴なスイッチ」がプツンと切れた!


[ドォン!]


わたくしのそうめんを横取りするでない、この獣人ども!!」


女王は品格など投げ捨て、翡翠色のドレスの裾を少し持ち上げると、目をカッと見開いて箸を両手で構えた。上流を睨みつけるその眼光は、まさに世界大戦並みの真剣さだった!


次のそうめんの群れが流れてくると、女王は光速の如き速さで箸を繰り出した!


[ガシッ!!]


「捕まえたぞ!!」 女王はまるで戦争に勝利したかのように歓喜の声を上げた! 彼女はすぐさまそうめんをつゆに浸し、口の中へと放り込んだ。


氷の冷たさ、麺のしなやかなコシ、そして絶妙な塩梅のつゆの旨味が、一気に口いっぱいに広がっていく!


「んんんんんんっ!! 美味しい! 美味しすぎるぞ!!」 女王は頬を膨らませ、翡翠色の瞳をキラキラと輝かせながら、エルフ族の誇りも恩怨も完全に忘れ去っていた。「もっと流すのだ! もっと麺を流しなさい、ドワーフども!!」


その様子を見ていたエルフの参謀は頭を抱えた。(我が女王様……完全に正気を失っておられる……)


---


[締めくくりのスイーツ]


そうめん争奪戦が終わり、誰もが大満足でお腹を膨らませて休んでいると、リンは配下に命じて締めくくりのデザートを運ばせた。


それは透明なガラスの器に入った、丸く愛らしいバニラアイスクリームだった。上には砕いたナッツと、甘酸っぱいストロベリーソースが注がれている。


先ほどの激戦を終えたばかりのエルフの女王は、小さなスプーンでアイスクリームをそっと口に運んだ……。


甘く、芳しく、なめらかで、口の中でスッと溶けていく冷たさ。彼女はうっとりと目を閉じ、至高の幸福感に身を震わせた。


(魔王領の料理……魔王領の福利厚生……魔王領のテクノロジー……) エルフの女王は心の中で完全に屈服するのだった。


---


最後までお読みいただきありがとうございました!


第34話は、まさかの「送迎付き&完全週休2日」で魔王城警備員へとあっさり転職を決めた勇者レオンと、文明の利器エアコン&流しそうめんに完全に胃袋と心を掴まれたエルフの女王様でした!


ドレスの裾を持ち上げて流しそうめんに命を懸ける女王様、なんだか愛おしくなってきますね!


今回の話も楽しんでいただけましたら、ぜひページ下部の【ハート(いいね)】や【ブックマーク登録】、【フォロー】、【評価(★★★★★)】で応援していただけますと、今後の執筆の大きな励みになります!


それでは、次回の更新もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ