第30話:大魔法、森を伏す「ダークエンド」
いつもお読みいただきありがとうございます!
第30話は、いよいよエルフの森の決戦(?)編です。
リンちゃん的にはただの「採用面接」なのですが、エルフや人間側から見れば完全なる「世界滅亡の危機」……!
お互いの絶妙な勘違いと圧倒的な温度差を楽しんでいただければ幸いです!
それでは、第30話「大魔法、森を伏すダークエンド」をお楽しみください!
第30話:大魔法、森を伏す「ダークエンド」
移動の最中、リンはエネルギーの出力スケールを調整するため、技術的な並行処理を行っていた。
(ビジネス交渉を円滑に進めるためには、まず【スキル:女神の結界】と【ファースト・プライオリティ】をオフにしておくべきですね。交渉を容易にするための【フィルターシステム】だけを起動しておけば十分です)
リンは精神力を介して知覚センサーを拡張し、森林全体へと感知網を広げた。この森には侵入者を惑わす複雑な幻惑大魔法が施されていたが、リンの目には杜撰に記述されたただのコマンドコードにしか映らない。リンは古木の迷宮を一切の迷いなく、正確な最短ルートで突き進んでいく。
(ドワーフ族も頑固で有名でしたが……エルフ族はそれ以上にプライドが高く、交渉難易度は格段に上ですね。何しろ歴史上、彼らは他種族との交渉に一切応じたことがないのですから)
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【城門前と魔法の豪雨】
ほんの数分後、リンと狼将ガスガルは、エルフたちの美しく壮大な大理石の城壁前に広がる広場へと到達した。
そこには——魔導鎧に身を包んだエルフの将軍が、強固な陣形を組んだ数千ものエルフ兵を率いて待ち構えていた!
エルフたちの姿を目にしたリンは足を止め、書類バインダーとクリップボードを胸前に掲げると、淡々とした声で挨拶を切り出した。
「こんにちは。採用面接に伺い——」
「放てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
エルフ将軍はリンに言い終える隙すら与えず、森全体に響き渡る大声で剣を振り下ろした!
(魔王に詠唱の隙を与えるな! 奴に喋らせることも、魔法陣を描かせることも絶対に許すな! 射程外から一気に仕留めるのだ!)
将軍は極限の警戒心とともに心の中で叫んでいた!
シュバッ! シュバッ! シュバッ! ドカン! ドカン! ドカン!
古代ルーン文字が刻まれた矢の豪雨が、リンとガスガルに向かって猛烈な勢いで降り注ぐ!
キィン!
リンはスキル【アブソリュート・ディフェンス】の特殊能力【アブソリュート・バリア】を発動。
キン! キン! ガキィン! ドカーン!
すべての矢は透明な球状バリアに阻まれ、霧散していった。バリアの向こうでジト目のまま佇むリンは、クリップボードに付着した魔法の煤を見つめる。
(第1波攻撃:リンの不機嫌度、微増……書類バインダーが汚れました)
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矢の豪雨が一切通用しないと悟るや、エルフ将軍は前線から飛び出した! 古代ルーンの蒼い光をまとわせた長剣を構え、種族最強の奥義を繰り出す!
「樹界断空斬!!」
バッ!
大魔法を帯びた刃が、バリアごとリンを両断せんと凄まじい速度で迫る!
しかし……リンは一歩たりとも退かない。ただ無表情のまま立ち尽くし、将軍の斬撃をバリア越しに正面から受け止めた。
ガキィィィィィィィィィン!!
剣がバリアに接触した瞬間——
パリーンッ!
将軍の剣に刻まれた魔法陣が木端微塵に粉砕された! 強烈なカウンター衝撃波がエルフ将軍を襲い、数メートル後方へと吹き飛ばす。手にした剣は危うく手放されかける始末だ!
クリップボードを抱えたリンは、相変わらず無表情のままである。
エルフ将軍は顔を上げ、驚愕に目を見開いてリンを見つめた。全身から冷や汗が噴き出す!
(第2波攻撃:リンの不機嫌度、中度……うるさいです)
「全魔導士隊! 力を合わせ【樹界大砲】を一斉掃射せよ!!」
将軍は歯を喰いしばり、必死の指令を下す!
数千の魔導士たちが一斉に杖を掲げ、深緑の魔力をチャージする。直径10メートルを超える巨大な魔力球が形成され、破壊の極大レーザーとなってリンへと解き放たれた!
ドッカァァァァァァァァァン!!
迫り来る極大レーザーを、リンはジト目で一瞥する。そして左手を軽く一振りした……。
ヴンッ……!
リンの周囲の重力場が一瞬で歪む! 圧倒的な威力を誇る大魔法の光線は軌道を大きく折り曲げられ、上空数千メートルへと突き抜けると、森林の上空で【美しい緑色の花火】のように華々しく弾け散った!
バンッ! シュワーーー……
エルフ兵たちは開いた口が塞がらない。自分たちの総力を挙げた大魔法が、あっけなく綺麗な打ち上げ花火に変えられたのだから……。
リンは小さく息を吐いた。ふぅ……。
(第3波攻撃:……堪忍袋の緒が切れました)
リンは【ファースト・プライオリティ(最優先事項)】モードを起動。周囲の空気一帯が氷点下へと急降下したかのように凍りつく。リンは虚無のジト目でエルフ軍を見つめると、ポツリと一言だけ呟いた。
「理解しました」
ゴオオォォォ……!
リンは念動力でゆっくりと上空へと浮遊する。白い髪と衣が風になびき、右手を天空へと掲げた——。
ブワッ……!!
幻惑樹海全体を覆い尽くすほどの超巨大な古代魔法陣が、大空に顕現した! 神級のルーン文字が禍々しい漆黒と紫の光を放ちながら急拡張し、太陽の光を完全に遮断。森全体の空が、まるで真夜中のように暗黒へと染まり上がった!
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【人間界へカットイン:王宮の戦慄】
同時刻、人間族の王宮大広間にて——。
【遠距離偵察隊】が、魔導馬を飛ばして王宮へと雪崩れ込んできた。膝を突き、ガタガタと震える声で国王と貴族たちへ報告を叫ぶ!
「ほ、報告いたします陛下! エルフの森にて超大災害級の異常事態が発生! 魔王リンが力を振るい……森林全域を覆う超巨大魔法陣を展開! 天空が完全に闇に包まれました!」
それを聞いていた【宮廷魔導師】(人類最高峰の大魔導師)は絶句し、手にしていた杖を床に落とした。青ざめた顔で目を見開き、戦慄に打ち震えながら呟く。
「な……四次元ルーンの描画パターンに、天空の減光現象……ま、まさかあれは……【ダークエンド(Dark End)】か!?」
国王は狼狽しながら問いただす。「それはいかなる魔法なのだ、宮廷魔導師よ!?」
宮廷魔導師は震える声で答えた。
「あの魔法は……この世界において【私とエルフの女王】の二人しか扱えぬ伝説の超極大滅亡魔法です! 展開範囲内の全万物を完全に消滅せしめる絶対の破壊……。奴はそれをエルフの森全域に展開したというのか!?」
「は、はい……」偵察兵は青ざめて頷く。「ですが魔王は……【一切の詠唱を行っていませんでした】」
「バカなッ!?」宮廷魔導師は叫んだ。「私ですら森全体を覆うほどの魔法陣など構築不可能! しかも数十分もの長大詠唱を要するのだぞ!? もしそんな規模の魔法を解放されたら、エルフの森も都市も、地図上から完全に消滅してしまうではないか!!」
偵察兵はゴクリとツバを飲み込み、困惑した表情で伝えた。
「それが……森は無傷です。都市もエルフの民も全員無事でした。ただ兵士たちだけがいっせいに気絶し、エルフ将軍が膝をつくだけにとどまり……おそらく、魔法の『発動に失敗した』のではないかと……」
ガクッ……!
兵士の報告を聞き終えた瞬間、宮廷魔導師は膝の力を失い、大理石の床へと崩れ落ちた! 呆然とする貴族たちの前で……。
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【人類には理解できぬ「ダークエンド」の真実】
宮廷魔導師が崩れ落ちたのは安堵からではない……【神の領域に対する深淵なる恐怖】ゆえだ!
本来、【ダークエンド】とは人間の知性を遥かに超えた超精密かつ破滅的な滅亡魔法。
・あまりに複雑すぎるため、長時間の詠唱を要する。
・膨大なマナを消費するため、極小のピンポイントエリアでしか展開できない。
・そして何より……発動すればエネルギーが狂暴化し【無差別に対象を消滅】させてしまう。爆発のエネルギーを『制御』できる者などこの世に存在しないからだ!
だというのに、魔王リンが行ったのは——
無詠唱、わずか一瞬での発動。
森林全体を包み込む絶対的な展開規模。
そして最も恐ろしいことに、リンは魔力エネルギーを分子レベルで【微調整】していたのだ!
「兵士の意識」のみを選択的に刈り取り、一般市民や建造物には一切のダメージを与えず、将軍だけを絶妙に膝をつかせる出力調整……。
これは『未完成の不発魔法』などではない……【あらゆる生命の領域を超越した極限の魔力制御】そのものだったのだ!!
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ドカーン!
広場を覆っていた煙と漆黒のオーラが引き始めていく……。
数千のエルフ兵たちは地面に倒れ伏して気絶しており、エルフ将軍だけが肩で息を荒くしながら、震える手で草地に膝をついていた。
コツン……コツン……
ハイヒールが草地を鳴らす静かな音。リンは上空からしとやかに舞い降りた。衣類に乱れはなく、埃ひとつついていない。
リンは恐怖と混乱に目を見開くエルフ将軍の前まで歩み寄ると、静かに立ち止まった。
バインダーを開き、応募書類を胸に抱え直したリンは、相変わらずのジト目で淡々と言い放った。
「お話し合い(面接)に伺いました」
人間側とエルフ側から見れば「不発に終わった大災厄」……!
しかしその実態は、リンちゃんが「大切な採用応募者」たちを傷つけないよう、分子レベルで極限調整した微粒子レベルの魔力操作なのでした(笑)。
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次回もお楽しみに! ✨




