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第24話:魔王の外交、小麦粉の契約、そして困惑する勇者

圧倒的200IQの合理的思考を持つ魔王リンと、彼女の意図を深読みしすぎて勝手に自爆していく勇者レオン。すれ違い(勘違い)とシュールなギャグが交錯する、サプライチェーン拡大編をお楽しみください!

農園の軌道に乗った野菜栽培により、カップ麺の「かやく(乾燥野菜)」の自給化に成功したリン。しかし、魔王城の倉庫で生産記録と備蓄量をチェックしていた彼女の200IQの頭脳は、即座に次なるボトルネックを弾き出していた。


(魔王領での自家栽培は、トッピングのコスト削減に過ぎません。市場を制覇するほどの圧倒的大量生産を行うには、魔王領の資源だけでは小麦粉も油脂もスパイスも圧倒的に不足しています)


サプライチェーンの限界を察知したリンは、スマホのAIアプリを開き、無表情のまま問いを入力した。


> **リン:**「工業規模で迅速に大量生産を行う方法を教えて」

> **AI:**『【処理中…】最も効率的な生産拡大手法は、サプライチェーンの最適化です。資源の豊富な地域から上流原材料をアウトソーシング(輸入)し、高付加価値の最終製品へ加工・供給することをお勧めします』


リンは画面を見つめ、静かにうなずいた。


(なるほど。資源を巡って戦争をするのはエネルギーの無駄です。人間に交渉して買い付けるのが最も合理的な判断ですね。隣接する国境の街なら農地も広く、取引相手として最適です)


---


**① 魔王領からの親書**


翌朝、人間側の国境の街の門前にて。


黒い魔王の紋章を掲げ、ビシッとスーツを着こなしたオークの将軍が堂々と歩いてくる姿に、門番たちは顔を蒼白にさせた。


「止まれ! 貴様、何者だ!」門番が剣を抜き放つ。


オークは礼儀正しく立ち止まり、一通の手紙を取り出して低い声で告げた。

「魔王様からの親書をお届けに上がりました」


「ま、魔王だと!?」周囲の兵士たちが一斉に武器を構える。


「落ち着いてください。これは交易交渉の申し入れであり、宣戦布告ではありません」


領主のもとに届けられた手紙には、拍子抜けするほどシンプルな文面が記されていた。


> **【魔王領からの親書】**

> 国境の街の領主へ。

> 農産物およびスパイスの大量購入、ならびに魔王領からの製品輸入についての協議を望む。差し支えなければ、明日自ら赴く。

> ——リン


---


**② 勇者の深読み**


「魔王が自ら人間界の街にやってくる」という報せは、近くの街に滞在していた勇者レオンの耳にも即座に届いた。


「……は?」


お茶を飲んでいたレオンは、ゆっくりとカップを置いた。額に深いシワが刻まれる。


(あの魔王が……また人間の街に来るだと? 前回見かけた時は、ただの一般人みたいに呑気に買い物をしていただけだったのに、今回は正式な外交文書を送ってきただと!?)


(一体何を企んでいる? 偵察か? 軍事情報の収集か? それとも街の弱点を探って大規模侵攻の準備をする気か!?)


今回の公式な動きは怪しすぎる!


(奴の狙いが分からない以上……黙って見ていられるか! 俺自身で確かめるしかない!)


---


**③ 魔王降臨**


翌日、市庁舎の前は重苦しい緊張感に包まれていた。


魔導馬車から降り立ったのは、白髪オッドアイの少女——魔王リン。その背後には、鋭い眼光で周囲を威圧する獣人族の女戦士ガスカルと、巨大な段ボール箱を抱えたスーツ姿のオークが控えている。


「原材料の件で、会議に来ました」


リンが無表情で告げると、厳めしい一行の雰囲気に兵士たちは固唾をのんだ。しかし、オークが大事そうに抱えている箱の中身は、ただのカップ麺(各種味)である。


---


**④ 屋根の上の監視者**


向かいの建物の屋根に潜んだレオンは、リンが会議室へ入っていくのを鋭い目つきで見つめていた。


(入ったか……魔王と領主の密談。世界の命運に関わる交渉に違いない)


1時間……

2時間……

3時間……


部屋からは叫び声も激しい魔力の発現もない。カンカン照りの屋根の上で3時間正座させられたレオンは、次第にお腹が空いてきた。


(……長すぎる。一体どんな恐ろしい条件を突きつけて脅迫しているんだ!?)


---


**⑤ 交渉成立**


*ギシッ——*


扉が開き、リンたちが静かに出てきた。


「完了しました。あとは第1ロットの原材料が工場へ届くのを待つだけです」


「かしこまりました、魔王様。輸送ルートの手配は万全を期します」ガスカルが厳格に礼をする。


屋根の上のレオンは困惑を深めた。


(……終わった? 流血も交戦の気配もなく、そのまま帰る気か!?)


---


**⑥ 勇者、聞き込みを行う**


馬車が走り去った後、レオンは屋根から飛び降り、ほくほく顔で書類を抱えて出てきた老貴族に声をかけた。


「すみません、少し良いですか」


「おや、レオン様! 一体どうされました?」


「先ほど……魔王は何をしに来たのですか?」レオンは真剣な面持ちで尋ねた。


「ああ、貿易の件ですよ!」貴族は笑顔で答えた。


「……貿易?」


「ええ」


「街を脅迫したり、破壊しようとしたりは?」


「滅そうもない! 大変礼儀正しい方でしたよ」


「では、軍事情報や防衛体制について尋ねてきたりは……?」


「そんなお話は一切ございませんでした!」


レオンは眉間を限界まで寄せた。「では、一体何をしに来たんですか!?」


貴族は誇らしげに契約書の写しを見せた。


「魔王様は、大量の**小麦粉、卵、スパイス、ハーブ**の買い付けに来られたのですよ! その見返りに、魔王領の『新しい即席食品』を我が街へ優先的に特別価格で卸してくれると! 我が街に莫大な利益をもたらす素晴らしい商業契約ですよ!」


「………………は?」


契約書に躍る『小麦粉50トン』『スパイス10袋』の文字を二度見し、レオンは絶句した。


---


**⑦ 魔王の真の目的(?)**


(親書まで送って……人間の街に来て……小麦粉を買って……ラーメンを売る……だと!? 経済的侵略か? それとも粉末に呪いでも仕込む気か!?)


混乱する頭を押さえながら馬車の後を追ったレオンは、街道沿いの団子屋の前で足を止めるリンを目撃した。


「これ、1本いくらですか?」


「ひ、1本銅貨5枚だよ、魔王様!」


リンは無表情でコインを払い、その場で団子をパクつくと、満足そうに再び馬車へ乗り込んで去っていった。


木陰からそれを見ていたレオンは、その場に崩れ落ちるようにしゃがみ込んだ。


(……待て、あいつ、ただ団子買って食べて帰っただけじゃねえか!!)


時代の勇者は、あまりの困惑に道端で頭を抱え込むしかなかった。200IQの魔王がただカップ麺を売りたくて、ついでに美味いお菓子を食べたかっただけだとは、知る由もなかったのである。


魔王として恐れられつつも、本人は至って真面目に「カップ麺ビジネス」と「組織的な商業取引」を楽しんでいるリン。そして、それを世界滅亡の危機だと勘違いして深読みし続ける勇者レオンのギャップが見どころのエピソードでした!


少しでも面白かったと思っていただけましたら、ぜひページ下部の【ブックマーク登録】**や**【評価(★★★★★)】で応援していただけると嬉しいです!


次回もお楽しみに!

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