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第15話:お母さんの手作りカレーと、勇者の深き絶望

読者の皆様、いつもお読みいただきありがとうございます!

第15話は、魔王城にまさかの「あの方々」が手料理を持って訪問してくるアットホーム(?)なお話と、一方その頃の勇者レオンの重苦しい葛藤をお届けします。

ギャップ溢れる展開をどうぞお楽しみください!

魔王領に黄昏の静けさが訪れる頃……。


リンが玉座の間でスマホの画面を拭いてメンテナンスをしていたその時、ポンコツ女神が残していったピンク色の転移門が眩しく発光し、空間が大きく揺れた。


「リンちゃ〜ん! お見舞いに来たわよ〜!」


「やあリン、魔王の仕事は順調かい?」


門から姿を現したのは、地球のカジュアルな服装に身を包んだごく普通の夫婦――リンの両親だった。


お母さんは湯気が立ち上る芳醇な香りを漂わせた巨大なステンレス鍋を抱え、お父さんはスーパーのポリ袋に入った新鮮な野菜や食材を提げて、散歩感覚で魔王城に足を踏み入れてきたのだ。


その瞬間、背後に控えていたガスカルと悪魔の護衛たちの目が飛び出さんばかりに見開かれ、思考が完全に停止した!


*(……に、人間!? 魔王城の核心部に、人間が二人も歩いて入ってきただと……!?)*


ガスカルは全身の筋肉を硬直させ、即座に戦闘態勢をとった。*(これは人間どもの国から送り込まれた暗殺者に違いない!)*


「魔王様、お下がりください! 卑しい人間め、我が魔王城に足を踏み入れるとは――」


*ガッ!*


ガスカルが飛び出そうとした瞬間、いつの間にか目の前に移動していたリンの手刀チョップが、正確無比にガスカルの脳天へと振り下ろされた。


*ゴツン!*


「あぐっ!?」


ガスカルはそのまま石造りの床へと顔面から激突し、目を目を回して舌をダラーンと垂らした。


「私の両親です」


リンは感情の籠もっていない平坦な声で言い放った。


床に顔を埋めたままのガスカルは、大混乱に陥った。*(はあ!? 世界を滅ぼせるほどの絶対魔王様のご両親が、ただの人間……!? それとも人間に化けた古代の超絶悪魔なのか……!?)*


ガスカルは疑問を口にしようと口を開かけたが、上空から見下ろすリンの「殺気立ったジト目」と、煩わしそうなオーラに気づいた瞬間、言葉を丸呑みした。


*ゴクリ……!*


ガスカルは冷や汗を流しながら、平伏した姿勢のまま必死に両手を合わせて頭を下げた!


「ははは、気を使わなくていいんだよ、悪魔さん」お父さんが爽やかな笑顔で手を振り、殺伐とした空気を見事に和らげる。「うちのリンがいつも迷惑をかけてごめんね。リラックスしてね」


お父さんのフレンドリーな神対応により、凍りついていた玉座の間の雰囲気が一瞬で温かなものへと変わる。お母さんは嬉しそうに巨大な鍋を掲げた。


「そうよ〜。お母さん、日本風のカレーを大きな鍋で煮込んできたの。城で働くみんなも一緒に召し上がらない? 一人じゃ食べきれないわよ」


「ガスカル……城で働いている者を呼んできてください」リンが静かに命じる。


「は、ははーッ! 恐悦至極にございます!」


ガスカルは平伏した状態から飛び起きると、脱兎のごとき猛スピードで城中のモンスターたちをかき集めに走った。


こうして、魔王城の玉座の間でささやかな夕食会が催された。両親の楽しげな笑い声と、地球の絶品カレーの味に涙を流しながら平伏して味わう巨漢モンスターたちのシュールな光景。リンは両親の隣で大好物のカレーを口に運びながら、*(少なくとも今日の夕食は、カップ麺よりずっと合理的ですね)* と心の中で呟くのだった。


---


### 黄昏の帰り道と、勇者の深き絶望


一方その頃――。


一日中、魔王領の畑を遠くから覗き見ていた**勇者レオン**は、夕暮れと共に引き揚げ、トボトボと街道を歩いていた。


*(……魔王が、野菜作り……? 一体どういうことなんだ……?)*


レオンは拳を強く握りしめ、答えの出ない問いを呟く。


*(何らかの呪いの儀式か……? いや、どう見てもただの畑仕事だった。自分で食べるためだけに育てているのか? あの魔王が……!? 一体何を考えているんだ?)*


次元を破砕するほどの絶大な力を持つ存在が、なぜ自らお茶を飲み、配下に指示を出してキャベツ畑に水を引いているのか。


レオンの脳裏に、かつて人類軍と共に激突した「リンの分身」との絶望的な戦いが蘇る。(レオンはそれが単なる分身だとは夢にも思っていない)。


*(……この世界に、あの化物にまともに勝てる奴なんて本当にいるのか……?)*


レオンは無力感に歯を食いしばった。


(『勇者』の称号を得た俺には、魔王を討伐する義務がある……だが、あんな存在に挑むなんて不条理すぎる! あの日……俺たちは指一本すら動かせなかった。奴の中級魔法たった一発で、前線部隊がまるごと消滅したんだぞ……)


重苦しい溜息が、レオンの胸から漏れ出る。


*(あんな絶望を突きつけられたら……誰だってショックを受ける)*


レオンは目を閉じ、共に戦う仲間たちの顔を浮かべた。特に**クララ**をはじめとするパーティの面々――彼らは今も、魔王との決戦に向けて猛修行を重ねている。自分たちが立ち向かおうとしている相手が、どれほど理不尽な化物なのかも知らずに……。


---

ここまでお読みいただきありがとうございました!

魔王城でのアットホームなカレーパーティーと、一人重苦しく悩む勇者レオンの温度差を楽しんでいただけましたでしょうか!

**【次回予告】**

次回の第16話からは、ついに勇者レオンの過去編へと突入します!

レオンとクララたちの出会い、Sランク冒険者への成り上がり、そして彼が「勇者」と呼ばれるきっかけとなった壮絶な魔物大暴走モンスターサージを描いていきます。

ぜひお楽しみに!

**【読者の皆様へお願い】**

面白かった!続きが気になる!と思っていただけましたら、ぜひ**「ブックマーク追加」**や**「評価(★★★★★)」**をお願いいたします!

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