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第7話 辺境の逸材

 リヒトたちによって助けられた三人の冒険者は、少しの間ベルタの村に身を寄せることにした。


 村人から分けてもらった夕食をとった後、三人は村のはずれで野営をしていた。


 村には宿屋がなかったため外で一夜を過ごすことになったが、魔物が出る場所で野営することもある彼らにとっては全く苦ではない。


「二人とも本当にすまなかった。すべて俺の責任だ」


 パーティのリーダーであり、赤髪の若き剣士――ガンツが二人のメンバーに深々と頭を下げる。


「頭を上げてガンツ。今回私たちが死にかけたのは誰のせいでもないわ。私たちは少し運が悪かっただけよ」


 黒いローブに身を包んだ青髪の魔術師――クロエがなだめるように言った。


「ああ、クロエの言う通りだ。それにガンツが俺たちを誘って王都を出ようと言ってくれなければ、どのみち飢え死にしていたと思うぜ」


 スキンヘッドの斧使い――ゴルドーも、にししと笑った。


 ガンツたち三人は、元々は王都を拠点として活動していた冒険者だった。


 だがここ数年の凶作や悪徳商会による食料品の買い占めなどが重なり、王都の情勢は急激に悪化。


 食料品をはじめとした物価は高騰し、治安も悪化の一途を辿っていた。


 このままではジリ貧になると危機感を覚えた20歳のガンツは、昔からの顔馴染みだった同い年のクロエとゴルドーを誘って隣街であるプリスペルを目指して王都を離れた。


 この判断自体は正しかった。


 ただ一つ予想外だったのは、道中で運悪く魔物の群れに襲撃されてしまったこと。


 三人ともBランク冒険者であったためどうにか魔物の群れを撃退することはできたが、想定外な足止めを食らった。


 大規模な戦闘になれば魔力や体力の回復にも時間がかかる。


 戦闘や回復に時間を費やすと、次に問題になるのは補給だ。


 物価高のせいで王都で十分な調達ができなかったこともあり、今度は食料が不足した。


 食料も薬草も底をつきた三人は仕方なく現地調達することに。


 木の実や野生動物でもいないかと近くにあった森に足を踏み入れたが、これが追い討ちをかけることになった。


 その森は魔物はおろか野生動物もほとんどおらず、植生に詳しくない三人には木の実を探すのも困難だった。


 そうして見知らぬ土地で似たような景色の中を彷徨っているうちに遭難。


 そのまま体力を消耗し、身動きが取れなくなった。


 ここまでかと覚悟したところ、間一髪リヒトたちに助けられたのだった。


「そうだな。まずはこうして奇跡的に助かったことを喜びながら、明日に備えてゆっくり休むとするか」


 ガンツがそう言うと、クロエとゴルドーも大きく頷いた。


 ようやく生死の不安から解放されたこともあり、二人とも既に眠そうな顔をしていた。


 これ以上の会話は明日以降にしようと、ガンツもその場に横になった。


(俺も今日はもう休もう。今後のことについては明日からまた考えねばならんが)


 一命を取り留めたとはいえ、まだすべての問題が解決されたわけではなかった。


 ここから目的地であるプリスペルまでまだ一週間近くかかるし、その間の水や食料の確保の問題もある。


 ベルタの村は大きな村ではないので、十分な調達ができるかは疑問であった。


(そういえばさっきの少年、随分不思議な魔術を使っていたな)


 草地に寝ころびながら、ガンツは昼間見た光景をふいに思い出す。


(何もないところに器を生成したと思ったら、中から水や食料が出てきた。あんな魔術、今まで見たことがない)


 街から街へと長い期間旅をすることもある冒険者にとって、補給の問題は常につきまとう。


 仮に十分な水や食料を調達できたとしても、それらを携帯しながら移動するのも容易ではない。


 この世界にはほぼ無限にアイテムを収納できる魔道具も存在はしているが、そんな高価なものを持っているのは一部の上級貴族くらいだ。


 となると、必要なときに必要な分の水と食料をいつでも生成することができるリヒトのスキルは、冒険者たちからすれば喉から手が出るほど欲しい能力であった。


(もっと不思議なのは、なぜあんな逸材がこんな辺境の村にいるのかということだ)


 冒険者ギルドにでも行けば、サポート系メンバーとして引く手数多(あまた)なのは間違いないだろう。


 冒険者にならなかったとしても、食料を生成できるのであれば商人として成功する道もある。


 料理ができるなら飲食店を経営することだってできるはずだ。


 どんな事情があるのかは知らないが、少なくともこんな辺境で埋もれているべき人材ではないと、ガンツは思った。


「アイツがうちのパーティに入ってくれたら、すべてうまくいくんだけどな」


 小声でそうつぶやきながら、ガンツは深い眠りへと落ちていった。

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