表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
呪華ノ鎖  作者: 雪ねこ
第二章
72/82

治療の代償

扉を開け、馬車の外へと出るなり、ふっと力が抜け落ちた。


安堵からか。

それとも、ティアに生気を分け与えた影響なのか。

突然、膝から崩れ落ちそうになる。


「レイン!?」


すぐ後ろから、驚いた声が聞こえた。


咄嗟に、両脇の下へ細い腕が差し込まれる。

ぐらついた身体を、そのまま後ろから支えるように抱き留められた。


お陰で地面へ倒れ込まずに済んだ。


視界の先では、これまで少し離れた場所で見張りをしてくれていたのだろう、クローディアスが慌てたようにこちらへ駆け寄って来ていた。


「レイン様!」


焦った声と共に、足音が近付いてくる。


「っ……、悪い」


息を吐きながらそう言うと、背後から慌てた声が返ってくる。


ティアは、今にも倒れ込みそうな俺を前にして、焦りと驚きが入り混じった表情を浮かべている。

俺の言葉に、ぶんぶんと勢いよく頭を横に振った。


「全然悪くない……!そんなことより大丈夫!?」


「大丈夫だよ。ちょっと気が抜けたっぽい」


答えながらも、身体にはまだ倦怠感が残っていた。

それでも今は倒れている場合じゃないと、自分の身体に鞭を打ち、膝に力を入れる。

ぐらつきながらも、どうにか体勢を立て直した。


「ほら、大丈夫だから、な?」


そう言ってみせるものの、目の前の2人の表情はまったく晴れない。

ティアは今にも泣き出しそうな顔でこちらを見上げているし、クローディアスも露骨に眉を寄せていた。


「いやぁ~、無事に治せたっぽいね〜。良かった良かった」


クローディアスが走って来た方向から、ノクスとセレナの2人がゆっくりと歩いて来る。

こちらの状態が見えていないのかと思わせる、空気を読まない軽い口調だった。


普段ならば、空気読めだとか咎めたくなるものだが、今回ばかりはその軽さが有り難く感じられた。


「最悪の事態は避けられて良かったです」


セレナも静かにそう続ける。

淡々とした声音ではあるものの、その声には安堵の色が滲んでいた。


そんな何気ないセレナの一言に、ティアとクローディアスが同時に、ぴくりと反応した。


「最悪の事態?」

「え、どういうこと?」


しまった、と思うよりも早く、2人の視線がこちらへ突き刺さった。

ティアは純粋に不思議そうな顔をこちらに向けていただけだが、クローディアスの方は完全に“説明を求める顔”になっている。


嫌な予感しかしない。


咄嗟に

「あー!なんでもないなんでもない!」

と両手をぶんぶんと振って誤魔化しにかかった。


このまま追求されたら確実に面倒なことになる。

いつもなら、こういう“面倒な追及役”はクローディアス1人だけだ。

だが今回は違う。


ティアまでいる。


このままでは、2人がかりで説教される未来しか見えなかった。


「そんなことより!」


ほとんど勢いに任せて言葉を遮る。


「ティアが元気になったんだからいいだろ?」


半ば強引に話題を逸らす。

最初こそ、ティアは「むぅ……」と納得しきれていない顔をしていた。

けれどすぐに、その表情は別のものへ変わった。

不満ではなく、不安と心配。


「もしかして……、無理させた……?」


まるで自分の所為だと言わんばかりの言葉に、思わず目を瞬かせる。


(……まぁ、状況だけ見ればそう考えてしまっても仕方ないか)


ティアは不安そうにこちらを見上げたまま、俺の服の裾を握り締めていた。

その様子に、自然と口元が緩む。


「おまえのせいじゃない」


くすりと笑いながら、ティアの頭へそっと手を乗せた。


「ちょっと疲れただけだから。気にすんな」


柔らかなわしゃりと白髪を軽く撫でると、ティアがくすぐったそうに目を細めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ