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呪華ノ鎖  作者: 雪ねこ
第二章
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もう1人の黒ユリ

「だから……、お姉様、か」


同じ黒ユリの呪華。

だからこそ、ティアのことを姉だと呼んでいたのか。


「なんで姉を殺そうとする」


コレットは瞬きをして、不思議なことを訊かれたとばかりに首を傾げる。


「だって一緒にいたいじゃない?せっかく巡り会えたのに、離れ離れになるのは寂しいもの」


コレットは、どこか寂しげに眉を下げる。

その表情だけを見れば、ただ誰かを想う少女のようにも思えた。

当たり前のことを言っているだけにも思える。


せっかく会いたい人に会えたのだから、離れたく無い。

一緒にいたいという気持ち自体は自然だ。


だが、だからこそ、殺そうと考えるその思考が理解出来ない。

理解すらしたいとは思えないが。


「あぁでも……」


ふと、コレットは思い出したように口を開いた。

その視線は上の方へと向けられ、漂わせている。


人差し指を頬に当てながら、言葉を続けた。


「あぁでもマスター持ちっていうのも羨ましいわよね。どうやって契約したのかしら?フィサリスみたいに出来なかったし……」


んー、と考えを巡らせながら、独り言を呟く。


そして、何かを思い付いたように、口元に笑みが浮かべられ、

「お姉様を取り込んでひとつになれたら、私もマスター持ちになれるのかしら?」

宙を漂っていた視線が、こちらへと向けられた。


背筋がゾッとした。


「っ……、本気で言ってるのか……?」


絞り出すように言葉を返す。

だが、コレットはその問いに答えない。


それどころか、名案を思い付いたとばかりに、両手を重ね合わせた。


「お姉様とひとつになって、それで確かめてみればいいわよね!」


楽しそうに、言葉が弾む。


「ダメだったら捨てちゃいましょ」


悪びれる様子は、どこにもなかった。

それどころか、それが当然の選択肢であるかのように、恐ろしい言葉を口にしていた。


まるで物のように。

少しでも気に入らなければ興味を無くし、粗雑に扱う子どものように。

人を人として扱わない感覚。


「お姉様や白銀(しろがね)の花を連れてるせいなのかしら……。フィサリスの術の効果が薄いんだもん。他のみんなみたいに、幻を信じて動いてくれない……。面倒だわ」


コレットは、その場をうろうろと歩き出した。

その視界にはこちらは既に映されておらず、ぶつぶつと独り言のように不満を並べていた。


そして、次の瞬間。

パン、と両手を合わせ、乾いた音が響かせた。


「……あの醜い金の亡者の豚みたいに」


くすり、と笑う。


「殺して、みんなのご飯にでもしてしまいましょう!えぇ、そうしましょう!」


振り向いたその顔には、場違いなほどに明るい、

歪んだ満面の笑みが浮かんでいた。


「なにを、言っている……?みんなの、ご飯……?」


その言葉の意味の理解が、追いつかない。

理解しようとすればするほど、理解したくないと拒絶する。

そんなこちらの動揺を気にも留めず、コレットは首を傾げた。


不思議そうな顔を浮かべ、「んー?」と声を漏らす。


「随分と前だったかしら?ここにいた乱暴な犯罪者をね、殺してあげて、炊き出しにして街の人たちにご馳走したの」


まるで思い出話をするような口調で、さらりとおぞましいことを口にしていた。


「なんでそんなに怖い顔をするの?喜んでくれたんだからいいじゃない。あの子だって、私が偶然立ち寄らなかったら、死んでいたのよ?処分にも困ってたんだから、一石二鳥……、ううん、一石三鳥じゃない」


悪意の欠片も感じられない声音。


そして、ふわりと微笑みを浮かべ、

「ふふ、大丈夫」

ゆっくりと、こちらに近付いてくる。


「私はお姉様。お姉様は私」


ゆっくりと、当然のように。


「同じ存在なんだから、なにも問題ないわ」


「おまえとティアは違う」


押し殺したような低い声で、はっきりと拒絶する。

そのまま彼女を睨み付けた。


「え?」


コレットが足を止め、目を瞬かせる。

感情が堰を切ったように溢れる。


ティアなら、

目の前の命を、無差別に“物”のように扱ったりはしない。


確かに、初対面のときに一度だけ「ちょうだい」と言われたことはある。

自分のものにしたいと、ねだるように。

けれどそれは、俺に対してだけだ。


誰にでも向ける言葉じゃない。


「おまえみたいな奴と契約を交わすなんて――」


怒りや嫌悪をそのままに、そのまま剝き出しにして、目の間の彼女へとぶつけた。


「こっちから願い下げだ!」

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