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呪華ノ鎖  作者: 雪ねこ
第一章
37/79

交錯する刃

目の前に立つシオンとシラン。

俺の隣にはティアがいる。


それぞれが武器を手にして対峙していた。


空気が張り詰める。


シオンとシランは容姿こそ似ていないものの、背中合わせに立つ姿はまるで鏡合わせのようだ。


先に動いたのはシランだった。


その場で足を踏み出し、円を描くように身体をひねる。

流れるような動作のまま、円刃を投擲した。


それが合図とばかりに、シオンが踏み込んで来る。

一気に間合いが潰れる。

視界の端がぶれるほどの速度で、目の前までシオンの影が迫った。


「させない」


ティアが即座に反応し、振り下ろされる刃を受け止めた。

金属がぶつかる乾いた音が、廃墟に響く。


その瞬間を狙うように、シランの投げた円刃が弧を描いて飛来する。

軌道上にはティアがいる。


「ティア!」


ティアが対応するより早く、俺は地面を蹴った。


真正面で受けるのではない。

わずかに身を滑らせ、進行方向だけを逸らすように受け流した。


円刃は軌道を僅かに変え、ティアの肩すれすれを掠めて通過する。

そのまま、放たれた主の元へと戻っていく。


ティアは剣を押し返すと、その勢いのまま地面に手をついた。

そして間髪入れず、シオンへと回し蹴りを放つ。


「ちっ……!」


舌打ちと同時に、シオンが後方へと飛び退いた。


シオンが距離を取った、その刹那。

入れ替わるように、今度はシランが姿勢を低くして踏み込んできた。


蹴りの反動で、ティアの上半身が無防備に晒される。

その胸元を狙い、円刃が横薙ぎに振るわれた。


「ティア!下がれッ!!」


反射的に叫ぶ。

同時に、首筋に微かな熱が帯びた。


それは、ティアから強制的に引き出される時とは違う。

どこか穏やかで、優しい熱だった。


「っ……!?」


シランの刃がティアに触れたその瞬間、手応えが消える。

肉を裂く感触はない。

代わりに、黒い花弁が弾けるように舞い散った。


シランの刃がティアに届く直前。

ティアの姿は、俺の背後へと転移していた。


「レイン、ありがとう。助かった……」


背後から届く声に、短く息を吐く。


以前、ティアが勝手に部屋へ侵入してきたときに使っていた転移。

契約主の近くであれば、自由に移動できると言っていた。


――ならば

契約主(こちら)から、位置を移動させることも可能なはずだ。

どうやら、その考えは正しかったらしい。


初めての命令行使。

この感覚か、とわずかに思考を巡らせながら、視線を前へ戻す。


契約主(マスター)持ちの特権とやらか」


ぽつりと、シオンが呟いた。


「便利そうで、厄介だな」


低く落とされた声と同時に、距離が一気に詰められる。


背後に下がっていたティアが、即座に前へ踏み出した。

振り下ろされる刃を、片方の短剣で受け止める。


「でも、そんなもの、要らないでしょ?」


間髪入れず、シランが身体ごと回転させながら間合いへ滑り込んできた。

軽い声音とは裏腹に、殺気だけが鋭く喉元へと迫る。


横合いから迫る気配に、半歩だけ位置をずらす。

直後、円刃が空気を裂きながら目の前を通過した。


ティアがもう片方の短剣を振るい、シオンの胴を狙う。


「あぁ、必要ない」


素っ気ない声音でシランの言葉に返事する。

受け止めていた刃を押し返しながら、シオンは後方へと跳んだ。


「そんなもので私たちを縛ろうなんて考えるなら――。能力を使ってでも、殺してやるんだからッ!!」


言葉の終わりに叩きつけるように、円刃が縦に振り下ろされる。


俺もティアも、ほぼ同時に飛び退いた。

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