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呪華ノ鎖  作者: 雪ねこ
第一章
21/23

手にした刃

アステルの言葉に従い、街へと繰り出した。

昨日と同じ街並みを通り抜け、あまり人通りの多いとは言えないエリアへと足を踏み入れる。

両隣にはまるで当然のように、クローディアスとティアがいた。


人通りが少ないせいか、通りはどこか落ち着いた空気に包まれている。

表通りの賑やかさとは違い、ゆったりとした時間が流れているようだった。


足を向けた先にあったのは、他の店よりもひときわ無骨な造りの建物だった。


石と木で組まれた外壁は黒ずんでおり、長年使い込まれてきたことを感じさせる。

入口の上には、剣と槍を交差させた簡素な看板が掲げられていた。


飾り気はほとんどない。

だが、その分だけ用途がはっきりしている。


入口の扉は分厚い木製で、何度も開け閉めされたのか、取っ手のあたりだけが妙に擦り減っている。

その横には、打ち直しでもしているのか、小さな作業台と打ち捨てられた金属片がいくつか転がっていた。


ふと、鼻を掠める匂いに気付く。


鉄と油。

それに、ほんのわずかに焦げたような残り香。


「如何にも武器屋って感じだな」


もっと物々しく、入りづらい場所かと身構えていたのだが、思っていたよりもワクワクしていた。

ぎぃ、と低い音を立てながら、木製の扉を押し開ける。


店内に足を踏み入れると、鉄の匂いが先程よりも濃くなった気がした。


店内は外観と同じく無骨で、壁一面に剣や槍、短剣が整然と並べられている。

どれも使い込まれているわけではないが、装飾は少なく、実用性を重視したものばかりに見受けられる。


ぱっと見、店内は誰の姿も見られず留守なのかとさえ思えた。

しかし店の奥の方からカン、カン、と規則的に金属を打つ音が聞こえている。

視線を向けると、半開きの扉の向こうで、誰かが金属を打っているのが見えた。


「どうやら、留守では無いようですね……」


クローディアスが耳打ちをする。


その直後。

打音が、ぴたりと止まった。


数拍遅れて、重い足音が近づいてくる。

やがて奥の扉が押し開けられ、ひとりの男が姿を現した。


大柄な体格。

無造作に結ばれた髪に、煤で汚れた作業着。

腕には焼け跡や古い傷がいくつも残っている。

こちらを一瞥すると、男は僅かに眉を寄せた。


「……客か」


低く、ぶっきらぼうな声で、まるで客を歓迎する姿勢のようには見えない。

男は腕を組みこちらを見据えた。


値踏みするような視線が、こちらをゆっくりとなぞる。


「で?何を探してる」


低く、無駄のない声音。

愛想はないが、商売としての問いかけだけはきっちりと投げてくる。


店の奥から漂う熱気と、壁一面に並ぶ武器。

その中心に立つ男の視線が、静かに答えを待っていた。


店主の言葉に、わずかに視線を巡らせる。


剣、槍、斧と、壁一面に様々な武器が並んでいる。

どれも一目で分かるほど扱いに癖がありそうで、ほぼ素人と言っても違いない自分には軽く手を出せる代物には思えない。


そもそも、自分が何を持つべきかすら分かっていないのだ。

その様子を見ていたのか、店主が鼻で小さく笑った。


「なんだい。こんな離れまで武器買いに来るなんざ、どんな物好きかと思ったらド素人かい」


あまりに率直な言い方に、思わず苦笑が漏れる。


「あー……まぁ、そんなところだね」


そんな俺を横目に、店主は店の一角へと歩いていく。

そこには他の武器よりも、幾分小ぶりな刃が並んでいた。


「最初なら、扱いやすいもんにしとけ。おめぇみたいな細身の小僧なら、こっちの方がいいだろう」


一本の短剣を手に取りこちらへ放る。

慌てて反射的に受け取ると、見た目よりもずしりとした重みが掌に乗った。

冷たい感触。

だが、不思議と手に馴染む気がする。


「私のとお揃い?」


言われてみればティアも短剣を使っていたな。

それも2本。

刃の長さも全然違うけれど、お揃いかと問われれば、間違いでは無いのかもしれない。


「そうだな。おまえとお揃いだ」


そう言うと、嬉しそうに微笑んだ。


「じゃあ、それにするか」


軽くそう言って、店主の方へと向き直る。

懐から金を取り出し、そのまま差し出す。

店主は無言で受け取り、手早く数えた。


「確かに」


受け取った短剣を改めて握り直し、腰元へと収める。

先程よりも、わずかにしっくりとくる気がした。



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