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呪華ノ鎖  作者: 雪ねこ
第一章
19/25

不穏な気配

その頃。


遠く、別の場所にて、薄暗い室内に5つの気配があった。


円卓を囲むように位置しているが、誰一人として姿勢を揃えていない。

深く腰掛ける者、背もたれにもたれかかる者、腕を組んだまま動かない者。


統一されていない。

だが、場は不思議なほど静かにまとまっていた。 


「——で?」


沈黙を破ったのは、気の抜けたような声だった。


背もたれに体を預け、片肘をついている男が、退屈そうに指先で卓を叩く。


「どうなってんの?あれ」

「確認してる」


間を置かず、別の声が応じる。

抑揚のない、淡々とした声音。


「反応は弱いが気配は拾っている。今のところは落ち着いてるみたいだが」


「“ようだが”、……ね」


すぐさま、別の声がその言葉尻を拾った。

やや低く、どこか棘を含んだ声音。


「歯切れ悪いな。結局さぁ?危険なのかどうかハッキリしろよ」

「現時点で断定はできない」

「はっ!要するに……。“分からねぇ”ってことだろ?」


卓を叩いていた男が、鼻で笑う。


「だったらあーだこーだと難しいこと考えないで、芽のうちに潰せばいいだけだろ?」

「相変わらず短絡的ー」


呆れたように差し込まれた少女の声。


「まだ詳しいことも分からないまま手を出せば、どうなるかくらい想像できるっしょー?もしかしてその頭の中スッカスカなのー?」


きゃははは、っと高めの笑い声が響き渡る。

張り詰めた雰囲気には不釣り合いな声に、男がちっと舌打ちをする。


「このまま放置して手遅れになりました、という事態は洒落にならないかと」


また別の男が口を開いた。


「えー?でもさ、中途半端に刺激して最悪の事態を起こされる方が厄介じゃない?」


「……どっちに転んでも面倒ってわけか」


それまで黙っていた、別の男がぼそりと呟いた。

低く落ち着いた声。

場を俯瞰するような、力の抜けた響きだ。


「で?結局どうする」


わずかな沈黙。

全員の視線が、自然と一箇所に集まる。


「暫くは観察に徹する」


淡々とした声が、結論を落とした。


「チッ……、つまんねぇな」


粗暴そうな男が再度舌打ちした。


「だが、当然の決定だ」


棘のある声が、わずかに笑みを含ませた。


「……好きに動くなよ」


低く、釘を刺すような声が落ちる。

全員に言っているようで、その視線は粗雑な男ひとりに向けられていた。


「分かってるって」


返ってきたのは軽い返事。

男は椅子の背に深くもたれたまま、気だるげに手をひらひらと振る。


「俺はちゃーんと。“大人しく”してるよ」


その言葉に、誰も何も返さなかった。




ほどなくして。

人気のない通路に、靴音だけが響いていた。


「はぁ……」


気の抜けたため息。

粗暴な雰囲気の男が、気だるげに頭をかく。


「大人しく、ねぇ……」


誰に聞かせるでもなく、ぼやく。

その足を止め、トンっと石造りの壁に背を付いた。


「……少しくらい、暇つぶししてもバチは当たんねぇよなぁ?」


まるで悪さを思い付いたように、口端が歪に吊り上げられる。

低く漏れたその声には、罪悪感の欠片も感じられなかった。

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