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呪華ノ鎖  作者: 雪ねこ
第四章
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預けられた体温

「ふぅー……、ひどい目に遭ったぁ……」


ひと騒動がようやく落ち着いたあと。


ノクスは窓際の椅子にどさっと腰を下ろし、天井を仰ぐ。

肩で息をしながら、やれやれと言いたげに呟いた。


「ほんと殺されるかと思ったんだけど~……」


その言葉に、間髪入れず突っ込みが入った。


「ノクスが悪い」

「自業自得でしょう」


ティアとセレナの声がほぼ同時に掛けられる。


「女性陣が辛辣~」


相当疲れたのだろう。

ノクスは笑いながらも、どこか力の抜けた様子だった。

椅子の背にもたれかかり、だらりと腕を垂らす。


そんなノクスを横目に、クローディアスはいつものように紅茶を淹れていた。

慣れた手つきで用意し、順番に全員の前にカップを置く。


セレナは自分の前に置かれたカップを手に取りながら、口を開いた。


「もう動いて大丈夫なのですか?」


昨日一日中寝込んでいたクローディアスを案じての言葉だった。


「あぁ。頭痛はまだ少しあるけど、だいぶ良くなった」


万全ではないことを隠すこともせず、正直に答える。

少なくとも、無理をして動いている様子はなかった。


セレナはその言葉を聞いて目を細めて微笑んだ。


「そうですか。無理はなさらないようにしてくださいね」


静かな動作で紅茶に口をつける。


ふと、袖が引かれる感覚がした。


隣を見ると、眠そうに目元を擦っているティアがいた。

こくりこくりと、今にも眠りに落ちそうになっている。


クローディアスの容体が落ち着いたこと。

そしてノクスやセレナも来て騒がしくなったことにより、緊張の糸が切れたのだろう。


一日中起きていたのだ。

ほとんど休まず、安全が脅かされないように気を張り続け、安全を確保して、ずっと見張ってくれていたのだ。

無理もない。


ティアは小さく瞬きを繰り返しながら、ぽつりと呟いた。


「ねむい……」


袖をつまんだ指が、もう力を失いかけている。

そのままゆっくり、身体がこちらへ傾いてくる。


「おいっ」


反射的に腕を伸ばした。

細い肩を支えるように受け止める。


そうしなければ、そのまま椅子から滑り落ちて床に倒れ込んでいただろう。


「もう寝るか?ノクスもいるし、もう休んで大丈夫だろ」


そう声をかけると、ティアは腕の中で小さく頷いた。


「……うん」


抵抗する気配は無く、素直に体重を預けてくる。

俺の袖を掴んでいた指先に掛かる力もほとんど抜けかけていた。

もう自分でベッドに移動する余裕さえ無さそうな様子で、目を伏せてしまう。


空いている方の腕をそっと膝裏に差し入れ、彼女の身体を抱き上げる。


そのまま椅子から立ち上がると、ベッドへと向かった。


ティアは既に夢の中に沈み掛けてしまっているようで、静かに寝息を立てている。

そんな彼女を起こしてしまわないように気を付けながら、そっとベッドの上に下ろした。


「……おやすみ、ティア」


シーツを被せ、軽く頭を撫でながら小さく呟いた。


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