自己紹介
「良かった。目が覚めたのですね」
クローディアスがそちらから走って来たのだろう方から聞こえてきた声。
倒れ込んだままの体勢のまま、そちらに顔を向ける。
視界に入ったのは、見慣れた従者の姿。
そして、そのさらに奥に二つの影。
先に目に入ったのは、小柄な少女だった。
年の頃は、せいぜい10にも満たないように見える。
肩口で揃えられた毛先に向けて白から淡い水色のグラデーションの全体的に淡い色の髪は光を柔らかく反射し、整えられたそれは乱れ一つない。
華奢な体躯。細い手足。
髪色に合わせたような白を基調としたドレス。
一見すれば、何処かの貴族育ちの年相応の子ども。
だがその佇まいが、あまりにも静かで落ち着いていた。
無駄な動きが一切ない。
呼吸すら感じさせないほどに、存在の輪郭が整いすぎている。
そしてその佇まいと同様に落ち着いているような印象を受ける一因の銀色の目は、揺れることも無く真っ直ぐに俺を見据えていた。
「いやぁ~、思ったより元気そうでなによりなにより!」
少女の見た目と相反した大人びた言葉遣いとは逆に、自棄に砕けた間延びした声。
少女の隣に立っていた長身の男が、こちらを覗き込むように顔を傾けた。
「いやぁ、ちゃんと起きてるねぇ」
間延びした声。
少女の隣に立っていた長身の男が、軽く肩をすくめる。
黒に近い暗い灰色の髪は、無造作に伸びて肩口にかかっている。
整えていないようでいて、どこか計算された乱れ方だった。
特に気になったのはその首。
俺の首に刻まれている文様とは多少デザインが異なるものの、似たような植物の蔓が纏わりついたような紋様がその男の首にも刻まれていたのだ。
覗き込むように傾けられた男の顔には笑みが浮かべられているというより張り付けられているよう。
口元と同様ににんまりと弧を描く目元は、その奥に見え隠れする金色の所為か底が知れない印象を受ける。
「思ったより元気そうで安心したよ~」
その声を聞きながら、起き上がろうと手をつく。
するとタイミングを計ったかのようにクローディアスが手を差し伸べてくれた。
手を差し出してくれた従者の顔を見た瞬間、ふっと肩の力が抜ける。
無意識に、わずかに口元が緩んだ。
引き上げられるようにして上体を起こす。
必然的に俺の身体の上に倒れ込んでいた女の体勢も追従する。
「おっとぉ?これはこれは、お邪魔だったかな~?」
その様子を見ていた男が、片手で口元を隠すわざとらしくにんまりと笑みを深くした。
隣の少女が横目で男を冷めた視線をやり、「はぁ……」とため息を吐く。
「やめなさいノクス。……茶化す場面ではありませんよ」
咎められ、男が軽く肩を竦めた。
「はいはい。失礼失礼」
隣の少女が一歩前に出る。
静かに頭を下げた。
「このような形でお連れしたこと、お詫びいたします。私はセレナ。こちらの軽薄そうな男はノクス・オクシペタルムです」
「姫様ひどーい。軽薄そうな男って紹介はひどくない?」
「事実でしょう?」
「ぐすん。ボク悲しい」
手元が隠れて見えない程に広がった袖で涙を拭う。
と言っても何処からどう見てもこれはフリだ。
その場にいる誰もがノクスと紹介された男に冷めた視線を向けていた。
「そしてそこにいる子はフリティラリア。長いので私たちはティアと呼んでいます」
そこまでそれぞれの名前を紹介してから、セレナは一度周りを見回した。
「ここは長話するのには適していませんね。場所を移動しましょうか。お腹も空いているでしょう?食事にしながら話をしましょうか」




