静かに狂っていく第二王子 ~if byシンルート~
リディアを掠め取られたアイキム視点
リディアとシンが結ばれた。
王子としての責務を果たしながら、
完璧な微笑みを浮かべて歩く。
政務も外交も滞りなくこなし、
臣下たちは口をそろえて言った。
「第二王子殿下は、これまで以上に優しくなられた」
――それは“歪み”だった。
彼は優しくなったのではない。
激情を、徹底的に“内部に封じ込めただけ”だった。
王宮の奥、薄暗い私室。
「……どうしてだ。
どうして、君が“あの男”の隣にいる?」
本来ならリディアは王宮に住み、
自分の妃になるはずだった。
誰より美しく、
誰より善良で、
誰より自分を理解してくれる未来だった。
彼は、そう信じていた。
それなのに――
公爵邸に運ばれ、
シンに寄り添い、
そのまま彼を選んだ。
王宮から見ても、二人は完璧な夫婦だった。
合わさる才能、噛み合う心、
そして――溶けるように笑い合う姿。
アイキムの胸を焼くのは、
決して消えない“喪失感”。
「リディア……
君が俺に微笑んだあの日から……
ずっと、俺のものになるはずだったのに」
机の上には
リディアの肖像画が一枚。
「リディア……
リディア…リディア…リディア……
本当は、ここにいるはずだった。
俺の隣で、微笑んでいたはずだった」
指先でそっと流れる銀髪をなぞり
自身の唇をゆっくりと肖像画に重ねた。
机上に置かれた
シンの名が書かれた書類が目に入る。
アイキムは微笑む。
「…そうだ。
彼を消せば――
リディアは、俺のもとへ…
シン……
君が奪ったのは“王子の婚約者”じゃない。
俺の――人生そのものだ」
嫉妬と執着で染まった声。
その奥に潜むのは
ただひたすらに、
リディアという少女への歪んだ愛だった。
狂気の自覚は、もうない…
その笑みは、どこか悲しく、歪んでいた。




