公爵邸に運ばれた夜~if byシンルート~
シンとリディア、運命が交わる世界線
魔王を討ち滅ぼした日。
リディアが戦場で静かに崩れ落ちたその身体は
王宮にではなく――
彼女が一番安心できる“家”、公爵邸へ運ばれた。
シンは一度もリディアの側を離れなかった。
眠るリディアの手を包み込みながら、
震えそうになる指先を必死に押さえ込む。
「……戻ってきてください。
僕は……リディア様のいない世界なんて、考えられない」
その声はかすかで、でも確かに“祈り”になっていた。
*
――どれくらいの時間が過ぎただろう。
リディアがゆっくりと瞼を開いた。
「……シン……?」
涙で滲んだ瞳が、初めて“弱さ”を見せる。
「はい。ずっと、おそばに」
「……怖かった。あなたに、もう会えないかと」
その一言で、シンの世界が崩れる。
「僕もです。
リディア様がいなければ……僕は、生きていません」
二人はただ手を握り合っただけ。
でもそこには、どんな誓いよりも深い絆が生まれていた。
*
数日後、まだ回復途中のリディアは
庭のベンチでシンと肩を並べていた。
「……ねぇシン。
あなたと一緒にいると、すごく落ち着くの」
「僕もです。リディア様以外……考えられません」
穏やかに寄せる影。
鳥のさえずり。
朝の光。
その全てが、二人を包み込む。
リディアがぽつりとつぶやいた。
「もし……あなたが望んでくれるなら――
ずっと隣にいてほしいって、思ってしまうの」
シンは胸に押し寄せる熱を抑えきれず、
深く、静かに頷いた。
「……僕の一生を、あなたに捧げます。
リディア様が望むなら――
僕は、あなたの隣で生きていきたい」
それは“侍従”の誓いではない。
初めて、ひとりの少年が
大切な少女へ向けた 乞い願った想い だった。
そしてリディアが微笑んだ瞬間――
二人の未来は“恋から愛”へと動き出していた。




