手に入った愛、愉悦の笑み
アイキム視点
暗殺未遂――
それは、王宮を揺るがす事件だった。
犯人は捕まらず、動機も不明。
ただ、第二王子が狙われたという事実だけが、鮮烈に世に残った。
――しかし。
それを仕組んだのは、他でもないアイキム本人だった。
王宮の警備体制を知り尽くし、
シンとは逆の方向から任務を組んだ。
暗殺者の侵入口を細工し、“あえて防ぎきれない突破口”を作り。
わざと即死をさけた位置を狙わせ――
命の危機を演出した。
すべては、
リディアの“愛”を確かめるために。
***
ベッドに横たわる、瀕死の俺を前に
震える声で名を呼ばれた時――
アイキムは、確信した。
(……ああ。
やっとだ。
やっと、君から“愛”をもらえる)
リディアの聖魔法が放つ愛に満ちた光を感じた。
彼女の声色には、恐怖と悲しみがのっていた。
そのすべてが――アイキムひとりのための感情だった。
リディアの声と手が震えていた。
「……どうして、
あなたが傷つかなければいけないの……!」
その時、今までとは違う感情がのっているのを感じた。
――アイキムは、歓喜した。
(これほど美しい涙を
俺のために流してくれるとは……
ああ、最高じゃないか。
やっと君は――俺のものになった)
彼女は気付いていない。
この瞬間、
リディアの恋が始まった日こそ、
アイキムの勝利確定の瞬間だった。
光が消え、
弱々しく睫毛が震える。
ゆっくりと目を開き、腕をのばす
リディアをアイキムは静かに抱き寄せた。
「俺のために…泣いて……くれるのですか」
温かい腕の中で、
彼女が小さく震えながら囁く。
「……無事で、よかった……
わたし、あなたを……
失いたくない……」
胸の奥で――
歓喜が火柱のように噴き上がった。
(それが聞きたかった。
その言葉を……
ずっと待っていたんだ)
そっとリディアの頬を撫で、
涙をすくい、甘い声で囁く。
「ありがとう、リディア。
君をおいて死ぬことはないと誓うよ。」
抱き寄せた腕に力を込め
劣情をたたえた瞳で
微笑を向けた時――
リディアが、微笑み返した。
――成功だ。
あとは迎えに行くだけ。
彼女を――完全な“王子妃”として。
(あとひと月。
結婚式の日――
誓いの言葉という名の“鎖”を――
君の指に、心に、命に。
永遠に刻みつけるために)
リディアはまだ知らない。
自分を抱きしめていたアイキムが
どれほど歪んだ愉悦の笑みを
噛み殺していたかを。




