ボンキュッボンは予想外のトリガーでした
会場の端――
シャンデリアの光が反射して、
淡くルビー色の光が揺れていた。
タロウの視線は、そこを捉えて離さない。
(……いた。どタイプ……!
ボンキュッボン……すげえ…グッとくる…
何て話しかければいい?
え、いや、何も言わずに立ってるの逆に不自然!?
会話って……どう始めるんだ?)
恋愛初心者、山田太郎――
呼吸がうるさい。
挙動不審すぎて侍女に心配されるレベル。
それでも、足が自然と向かっていた。
桃色の瞳が、こちらをじっと見ている。
伯爵家令嬢――ルクレツィア。
この祝勝会で最も注目される美貌の娘。
タロウ、意を決して声をかけた。
「は、は、はじめまして!!
ぼ、僕は山田太郎です!!
こ、こ、ここの景色、すごいきれいですね!!
あっ、うわ、僕の声でけぇ!!」
(挙動不審を極めた者の発言)
しかし――ルクレツィアは瞬きを止めた。
「……山田……太郎?」
「あ、はい!!山田太郎です!!
え、知ってるんですか!?
いや、まさか有名人?俺?
……モテる?モテ期?来た!?
これ……完全に来たやつでは?」
「……山田太郎?
乙女ゲームの……山田太郎……?」
その瞬間、ルクレツィアの表情から“時”がズレた。
思考の層が、重なる。
――視界がうっすら揺れた。
(……え……山田太郎?
この世界にそんな名前のキャラ、居たっけ?
あ……待って……
こいねが……?
乙女ゲーム《乞い願う恋》――
主人公の名前……確か……)
『山田太郎』――。
あのゲームの……勇者ポジション。
そして、ヒロインは――
私じゃない。
「……まさか。
あなた、
爆発的モブ主人公じゃないわよね?」
タロウは、爽やかに笑った。
「えっ……?
僕、モブじゃないです!!
――勇者です!!!
恋愛初心者の!!!」
そのあまりの爽やかさに、
ルクレツィアは一瞬だけ固まり――
――ぷっと、笑ってしまった。
「……はは。
本当に、そういう性格……なのね。
まじで、山田太郎かもしれない……。」
タロウは意味を理解せず――
ただ思った。
(笑った!!美女が笑った!!
これ、もしかして――
自然な流れでデート誘える流れでは!?
お茶!!まずお茶!!
いや、海!!海とか!?
いや、まずはお茶!!
てか俺、楽しすぎて手汗えぐ!!)
タロウの心臓は早鐘のように鳴り――
ルクレツィアの胸の奥では、
眠っていた“前世の記憶”が、
確かに――ロードを始めていた。




