祝勝会の灯り、日本語が届く場所で
噴水広場を後にし、
私はゆっくりと会場へ戻った。
胸の奥はまだじんわり痛んでいる。
歩く足どりは少し重かったが、
騒ぎの中心へ近づくにつれ――
不思議と、息がしやすくなっていく。
(ひとりじゃない。
……そう、思いたいな。)
人混みを抜けた時、
遠くから手を振る影があった。
タロウだった。
私に気づいた瞬間、
表情がぱっと明るくなって、
そのまま大股で歩み寄ってくる。
「おーい!リディア!!
……って、通じてんの俺たちだけなんだよな、日本語!!」
「そうね。秘密クラブみたいで便利よね。」
「いやほんとそれ!!
――でさ!めちゃくちゃ俺のどタイプがいた!!
ボンキュッボンの美女!!
今なら誰でも釣れるって団長に言われた!!
迷ったら突っ込めって!!」
「……王国騎士団長が何を教えてるのよ。」
思わず吹き出してしまった。
胸の奥に溜まっていた曇りが、
少しだけ溶けた気がした。
タロウは真顔になって、
少し恥ずかしそうに呟いた。
「……俺、恋愛初心者なんだよね。」
――その言葉に。
私は、すこし微笑んで答えた。
「……それは……私もよ。」
日本語だからこそ、
素直に言えた言葉だった。
(ああ……)
(話せるって、こんなにあたたかいんだ。)
タロウは安心したように笑った。
「じゃあさ――
とりあえず俺が突っ込んでくるから、
帰りに感想聞いてくれる?」
「ええ。
日本語で報告して。」
「よっしゃ任せろ!!!
恋愛はっ!――まずは話しかけるとこから!!」
タロウはやけに気合いを入れて
再び群衆の中へ消えていった。
私はその背中を見つめながら、
ほんの少しだけ――息を吐いた。
(……ありがとう。
今日はもう泣かなかった。
笑えた。)
祝勝会はまだ終わらない。




