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ヒロインの代わりに魔王討伐しちゃったわ  作者: ChaCha


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55/81

祝勝会、英雄の夜へ

戦は終わり、

王国は飲めや歌えやの大騒ぎだった。


街には灯りがともり、

広場では即興の歌が響き渡り、

酒場は夜通し満員。

魔王討伐の英雄と新しい伝説を称え、

王国の歓喜は最高潮に高まっていた。


その中心――王宮では、

夜会の準備が進んでいた。


侍女が恭しく差し出したのは、

淡く輝く蒼いドレスだった。

月光の色を宿した髪――

その銀色を引き立てる、聖女のために準備されたドレス。


「ぶっちゃけ行きたくない……。」


思わず漏らした私のぼやきを、

侍従のシンは逃さなかった。


「では、そのように。」


「まって!それ心の声っていうか――」


「心得ております。

 髪飾りをお付けします。」


横顔はいつも通り静かだが、

“行きたくない本心”を無言で理解してくれる

この侍従に、私は救われていた。


「(……はぁ。逃げる隙はなさそう……)」



ため息を落とすと、

シンの手が銀髪を優しくすくい上げた。

月光色の髪に、

青い宝石の髪飾りが静かに留められてゆく。


「……似合っています。」


鏡の中の私は――

ただの公爵令嬢ではなく。

魔王を討ち果たした英雄として

装いを施されていく。


準備を終え、長い廊下を歩き出す。

足音が高く響くほど、

心拍数も上がっていった。


待合室に入ると、そこには両親の姿。


母マユリンヌが

ふわっと抱きしめてくれた。


「愛しい娘!

 とても綺麗よ!」


父ヒロージは

静かに深く頷いてくれた。


「誇らしい。よくぞ生きて帰ってきてくれた」


その一言だけで胸がいっぱいになる。

「ただいま!」


ぎゅっと抱きしめた両親は震えていた。

(そうだよね。すごく心配してくれたんだよね…

これから親孝行も頑張らなきゃ)


コンコン。

執事が扉の前に立ち、深く一礼した。


「会場のご用意が整っております。

 英雄リディア様――

 お迎えにあがりました。」


胸の奥がどくん、と鳴る。


(……ああ。

 魔王を討つより緊張する――

 祝勝会へ、出陣だ。)


ゆっくりと歩き出す。

視線の先には

祝宴の光が揺れていた。


――英雄の夜が始まる。

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