奇跡の法則は、気合いと優しさ
「……もう一度……立たなくちゃ……!
わたしには――
まだ……やれることがあるッ!!
きぃあぁああいぃいいだぁああああ!!!!!」
リディアが杖を振り上げると、
小さな体から放たれた声は
基地全体に響き渡った。
ドンッ――!
大地を叩いた杖から、
光と虹色の魔法陣が一気に広がり出す。
〈聖精霊域再展開:治癒光輪の加護〉
光が瞬く。
それは、ただの治癒魔法ではない。
聖魔法と精霊魔法――
ふたつの本質が交わった“複合魔法”。
魔術師団長セバスチャンが目を見開いた。
「……っ! あの術式は……
リディア殿の“独自魔法”か!?」
幼少からの訓練。
師匠との研究。
父との実践演習。
母に教わった精霊魔法。
それらすべてが、この瞬間へ収束する。
光輪が旋回し、
倒れていた騎士たちの傷口を
次々と癒していく。
「……立てる……!」
「腕が……動く!」
「知らなかった……あの方は……
本物の……聖女じゃないか……!」
倒れていた者が、
次々と立ち上がり――
剣を握り直す。
セバスチャンは、
杖を胸に抱きながら呟いた。
「聖魔法の理――
“優しさと気合い”で発動する。
……やはり、君はよく理解しているよ。」
光は戦場全体に染み渡る。
重症の者にも、
もう立てないと思われた者にも、
一筋の温かい光は伸びていた。
「……助かった……!」
(やはり……貴女こそ……
“僕の全て”だ。リディア様。)
倒れゆく陣形は――
再び立ち上がった。
そしてリディアは、
杖を抱きしめたまま空を見上げた。
(これで――みんな、まだ戦える。)
(あとは……タロウくん。)
赤く染まった空の向こう――
勇者の気配だけが、
確かに響いていた。




