魔王の回想 -200年前、あの日から-
200年前。
世界は、驚くほど眩しく見えた。
長く想い続けた彼女へ、
意を決して贈った指輪。
頬を赤く染めて……
彼女は**“はい”**と、答えてくれた。
(これ以上の幸せは、もうない――そう思っていた。)
世界が光に見えた。
本当に、光に包まれていた。
その光は――
トラックのライトだった。
そのまま、俺は即死した。
はずだった…か、
――異世界に召喚された。
目を開けると、自分を囲む貴族と兵士たち。
魔王が魔物を従え、国が滅びかけている。
“救い”として、俺は呼ばれたらしい。
「魔王を討てば帰れるのですね?」
「――勇者次第では。」
その言葉を信じ、剣を握った。
彼女の笑顔を、
心の奥で何度も思い出しながら。
(待っててくれ。必ず帰る。)
-最速の勇者-
攻略は速かった。
授かったチート能力で無双。
戦う理由が、はっきりしていたから。
仲間ができた。
共に戦う者が増えた。
守りたい人達もできた。
だが――
最終決戦の日、
魔王の背後に現れた影が、
俺のすべてを崩壊させた。
『……勇者よ。
魔王を討つたびに、“次代の魔王”が生まれるのだ。
今度は――
“お前の番”だ。』
その瞬間、光が消えた。
終わったと思った戦いは、
終わりの始まりだった。
魔王の力が流れ込み、
身体が壊れていく。
“人ではない何か”へ
ゆっくりと年月をかけ姿を変えられていく。
仲間が泣き、
人々は恐れた。
守ったはずの者たちが――
俺を討とうとした。
(違う……やめろ、俺はまだ……
人を……守りたい……)
叫びは届かない。
人間の声として聞こえていなかった。
俺は逃げた。
自分が討った魔王の城。
誰も寄りつかないこの場所が、
唯一、人を傷つけないための場所だった。
(もう誰のそばにも近づけない。
俺の声も、意思も届かないのだから。)
それ以来――
ずっとここにいる。
「勇者は帰れない。
やがて魔王になる。
それが……この世界の仕組みだ。」
「だから……
次の勇者が来るのを待った。
希望を― 託せる誰かを。」
目を閉じたまま、
アクロンは静かに語る。
「……勇者。
お前は、願えるか?
“両方守れる道”を――
まだ、信じられるか?」
その問いは、
剣より重かった。




