膝をつく、その瞬間
杖の先端が震えた。
視界がかすむ。
魔力の繋ぎ止めが――もう限界に近い。
「……っ、まだ……持たせないと……!」
何層にも重ねた広域バリアは、
魔王城へ続く一本の道を守り続けていた。
しかし――
魔物たちの圧と魔力の乱れが、
息をするたび心臓を軋ませる。
(今、わたしが倒れたら……
みんな、前線に取り残されてしまう……)
足がふらつき、
リディアはついに――膝をついた。
「リディア様――!」
ヒキャルが振り向いた瞬間、
魔物の群れが一斉に押し寄せる。
「……来させるな!」
シンの声は静かだった。
影が揺らぐ。
リディアの背後で守りに徹しながら、
冷静に剣を交わすヒキャルとの連携は
すでに何十度も繰り返されていた。
「耐えてくれ……頼む……!」
(まだだ。まだ――)
闇と剣の二重防御。
魔物は入らせない。
“主を守る”ただそれだけのために。
(……タロウくん。
あなたは――どこまで辿り着いた?)
意識が揺らいだその時。
距離の向こうから、
微かな“震え”が感知された。
剣と魔力の響き。
タロウの――戦っている音だ。
(……届いてる……
――タロウくん達が頑張ってる……!)
その一瞬だけ、呼吸が戻る。
「みんな、まだ……生きてる……!」
魔力はほとんど残っていない。
それでも――杖は地に向けられた。
「……
お願い…………!」




