帰りたいだけだったのに
タロウの剣と黒い魔力がぶつかる。
重い衝撃が響き、玉座の広間全体を揺らした。
「なんでだよ!!
なんでなんだよ!!
俺は帰りたかっただけ!
この世界の人たちも助けられる、
一石二鳥だと思ってたんだ――ッ!!」
タロウの叫びに、
アクロンの瞳が一瞬だけわずかに揺れた。
「……我も。
200年前、同じように願った。
**“両方守れる方法”**を探した。」
剣を握らず、
魔王は静かに語り出す。
「だが……やがて人ではなくなっていった。
“守った者たち”を殺してしまわぬよう――
我は姿を隠し、
自分が討ち果たした魔王の城に戻った。」
玉座。
長い時を抱えた瞳。
生と死の境界で留まり続けた者の気配。
タロウは息を呑む。
「そんなの……
そんなの、悲しすぎるだろ……!」
「だからこそ、我は――
勇者に討たれることを願った。
いつの日か、“新たな誰か”が
この運命に抗うことを……
我は、待ち続けていた。」
黒い魔力がゆっくりと立ち上る。
アクロンは初めて――
剣に手を添えた。
「タロウ。
もしお前が“その方法”を見つけられるなら――
お前こそが、新たな希望となるだろう。」
タロウは強い眼差しで、
魔王を見据える。
「……見つけてやるよ。
だって……俺は勇者だろ!?」
一瞬の静寂。
「ならば――見せてみよ……勇者!」
ついに剣が交差し――
本格的な戦闘が始まった。
轟き、魔力の余波が大広間を揺らす。
だがその中で、
タロウの瞳だけは濁らなかった。
(帰れる方法は……
きっとどこかにあるはずだ!)




