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ヒロインの代わりに魔王討伐しちゃったわ  作者: ChaCha


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38/81

それぞれの覚悟と、焚き火の音

夜。

出発を控えた前線基地は、静かな焚き火の灯だけが揺れていた。

明日は魔王アクロンへの“一点突破”作戦が始まる。



ヒキャル


ヒキャルは少し離れた場所で、

磨き上げた剣の刃を光に透かしていた。

ひとつひとつ丁寧に手入れしながら、

ひとつだけ確かな思いを胸に刻む。


(リディア様を護る。

 それさえ果たせるなら――

 俺は何度でも剣を振るえる。)


騎士としての決意。

幼馴染としての想い。

その二つが、無言のまま重なっていた。



シン


シンはいつものように、

リディアの後ろに静かに控えていた。

しかし、その表情は穏やかでありながら、

どこか張り詰めた気配も宿していた。


(戦場では感情は不要。

 ただ……

 “リディア様の隣”だけは、誰にも渡さない。)


冷静に鼓動を抑えつつも、

影は静かに揺らめいていた。



タロウ


タロウは少し離れた焚き火の前で、

スマホを強く握りしめていた。


「……帰れるって、信じたい。

 信じなきゃ、戦う理由がなくなるから。」


スマホのアルバムを開く。

日本の青空。友人の笑顔。

母と妹、そして父が並ぶ――日常の光景。


「でも……今はこっちの世界にも

 守りたい人ができたんだよな……

 ……フラグじゃないぞ。」


ぽつりと呟き、

自らフラグに気づいて頭を抱えた。



クライド(貴公子)


回復したクライドは、身体の動きを確かめるように立ち上がり、戦いの前にリディア嬢へ言葉をかけにいった。


「この戦いが終わったら……

 リディア嬢と、改めて……

 感謝と――」


「えっ?」

(また、フラグたてちゃダメでしょ!!)


リディアは焚き火の前で

ぽかーんと口を開け、

頭を抱えた。


焚き火が“パチッ”と音を立てた。



夜は深く静かに、更けてゆく。

それぞれの胸に宿る想いは異なるが――

ただひとつ、同じ願いがあった。


“生きて帰ること”


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