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生還者の声
治癒の光に包まれたクライドは、
ゆっくりと呼吸を整えると――
声を震わせながら語り始めた。
「……森の北で、
魔王軍の魔物に遭遇しました。
しかし、そこにいたのは……
本来の姿とは違う“成れ果て”でした。」
それは魔物でありながら、
牙も爪も半分ほど消え、
身体の輪郭まで “ゆがんでいた”。
喰われた痕跡。
リディアが感じた異様な感覚は、
彼の証言で確かな形を持った。
「……魔物は、
喰われながら戦っていました。
自分の身体が“消えている”ことにも
気づかずに……
それでも……
“誰かを守ろうと”していたのです。」
声がふるえる。
クライドは伏せた瞳の奥で
何度もその光景を思い出しているようだった。
「魔王アクロンは……
奴らを完全に支配しているわけではない。
“奪った力”を、さらに魔物たちから喰らって……
力を集めている――
そんな気がします。」
沈黙が落ちた。
それは全員の胸に
“絶望”ではなく
“恐ろしい現実”として刻まれた。




