前線から届いた“異変”
討伐隊が王都を発っておよそ一週間。
森を抜け、山道を越え、さらに北へ――
魔王アクロンの勢力下にあるという地域へ
全軍はゆっくりと近づいていった。
その夜、野営地に使われた古い砦へ
伝令が息を切らしながら駆け込んで来た。
「至急、魔術師団長セバスチャン殿と
勇者タロウ殿をお呼び願います!!
前線に異変――戦線が崩壊寸前との報です!」
砦内が一気にざわめく。
顔色を変え、指揮官たちが地図を広げ始めた。
報告によれば――
魔王軍の攻勢が突然激化。
これまで防衛線を支えてきた
先発討伐隊との連絡が一切途絶えたという。
セバスチャンは地図を睨みつけつつ、短く言った。
「魔力の乱れが不自然だ。
これは……ただの魔物暴走ではない。」
ヒキャルは険しい表情で剣を握り、
シンは表情を変えないまま、
リディアのそばに控えた。
そして、指揮官の言葉が
砦の空気を凍らせた。
「――選抜隊の生存は、確認されていません。」
沈黙。
その場にいた全員が先発討伐隊の
“全滅”を意識した瞬間だった。
タロウは拳を固く握り、無言で地図を見つめた。
その横で、リディアが小さく呟く。
「……生きていてほしい。
あの人たちにも、帰りを待つ人が……」
指揮官の号令が響く。
次の行動が決まった。
「前線までの道を確保しながら最速で進軍する!!
被害の確認、救援と行方不明者の捜索を開始せよ!!」
角笛が鳴り響く。
静かな砦が戦場への通過点と変わった。
リディアは胸元に手を当て、祈りを捧げた。
その隣でタロウは、
スマホにそっと触れた――




