異世界スキル習得中・現在進行形
「勇者認定されたらしい高校生、山田太郎です……。」
本人の意思とは関係なく、タロウは王宮暮らしになった。
朝食は豪華、部屋は広い、ベッドはふかふか。
ゲームの世界みたい――なのに、チュートリアルは一切なし。
そして、本気の訓練地獄が待っていた。
まず、王国騎士団長アルケイドのもとで剣術と体術の叩き込み。
木剣は容赦なく飛んでくる。
倒れたら、立つまで終わらない。
「勇者に“ギブアップ”は存在しない!」
「ハードモードどころか、これラスボス前の世界線なんですけど!?」
さらに魔法訓練では――
王国魔術師団長セバスチャンが待っていた。
深みのある声、きらめく眼鏡、完璧すぎる立ち居振る舞い。
名前は執事なのに、真っ黒なローブを纏っている。
性格は体育会系。
そう――リディアの師匠でもある。
「詠唱とは心! 魔法とは気合い! 魔力とは気迫である!」
「根性論きたーーーーー!?」
魔力量測定で“最大値”を叩き出したタロウは、
火・水・風・土の全属性を扱えると判定された。
おかげで訓練はさらに加速し、日々
“各属性の気合い詠唱100回/筋トレ100回/反復横跳び”という謎メニューまで追加される。
そんな最中、王国に重大な報が届く。
――魔王アクロンの復活兆候が強まり
凶暴化した魔物が増え続け
前線ではすでに緊迫した戦いが始まりつつあるという。
タロウへの基礎訓練完了を急ぎつつ――
魔王討伐騎士隊が編成されることとなった。
その志願者の中に、
公爵令嬢リディアの名があった。
聖魔法と精霊魔法、両方に高い適性を持つ美少女。
年齢14歳。
だが、その実力と判断力は王宮でも認められていた。
身分を問わず飾らない言葉と人を思う心、
美しい姿と淡く透き通る薄紫の瞳が――
ひそかな注目を集めていた。
彼女に同行すると申し出た者が、もう二人いた。
ひとりは、侍従として育ったシン。
誰より早く申し出て、“当然のこと”のように受理された。
もうひとりは、騎士見習いのヒキャル。
公爵家騎士団の名のもと、騎士へと昇格しリディアの護衛任務に正式に同行することが決定した。
――そして勇者タロウ。
突然巻き込まれた世界で、ただひとつ分かっていることがあった。
「……つまり、もう魔王討伐に向かうってことだよな?
これ、最後まで帰れない系イベントじゃないよな……?」
その問いに、誰も噓を返すことはできなかった。




