スマホとマンホールと異世界と
高校へ向かう通学路。
山田太郎16歳は、いつものようにスマホを握りしめたまま歩いていた。
音楽アプリ、動画、SNS――画面で世界は完結していた。
(今日の昼メシ、何にしよ……)
(てか宿題まだ終わってねぇ……やば……)
そんな他愛もないことを考えながら、足元も見ずに足を進めたその瞬間――
ゴンッ!!
マンホールに足を取られ、視界が一瞬で真っ逆さまに落ちていく。
無意識にスマホだけはぎゅっと握りしめていた。
――そして、次に目を開けた時。
タロウの周囲には、豪華な装飾の宮殿と、衣装の違う人びとが並んでいた。
王侯貴族、華やかなドレスの令嬢、黒いローブ姿の魔術師、白いローブを纏った神官のような人物までいる。
「……………………
………………へ?」
誰かが低く声を発した。
「勇者召喚――成功か?」
別の人物が、驚いたように声を上げた。
「魔力計測を! 急げ!」
タロウの頭は完全に追いつかない。
けれど、本能的に
『これはやばい展開』
だということだけは理解していた。
「え、えええええ……!?
おまえら誰ーーーーー!?」
宮殿がざわめき、魔力測定の燭台が光を放つ。
魔術師が結果を見て叫んだ。
「魔力量……最大値!!
勇者適性、100%!!!」
「……は?」
周囲がどよめく中、
近くの神官が静かに膝をつき、頭を下げた。
「異世界の勇者よ。
魔王アクロンを討つため――
どうか、この世界を、救ってください。」
「いやいやいやいやいや!?
俺、スマホ持ってるだけの高校生なんですけど!?
てか……ここどこ!!?
なんかコスプレイベント会場!?
……!!!」
その瞬間――
物語が、始まった。




