黒の章、再開待っててよ
エヌセッズの年長メンバーはギルド建物内でのみ、チート能力【メタ認知スキル】が解放されるという裏設定がある(イントロンのみ適応)という認識のもとでお読みください。
久しぶりにグレイスメイアに立ち寄ったカロナがエヌセッズの酒場に顔を出すと、マスターであるボルターの姿はなかった。
「メフェナー、ボル公は? 出かけてんの?」
酒場内で黙々とひとり仕事をしているメフェナに声をかけると、メフェナは片眉を上げながらなんてこともなくこう答えた。
「ん〜、出すと面倒だからしばらく消えててもらおうと思って」
カロナの顔が輝いた。
こいつは面白いことが起きそうだ……そんな楽しい予感に、思わず顔がにやけてしまう。
「へー、珍し〜、どしたの? あいつ、メフェナのこと怒らせるようなことしたの?」
「んーん、違う違ーう。別にあたしが気にするようなことじゃないんだけどぉ、なんていうの? 今ここでボルターに好き勝手しゃべらせるとぉ、すごーく本編のネタバレしゃべりそうだから、下手に登場させられないのよねぇ……」
ボルターの弱みを握るチャンスかと思ったが、たいして楽しそうな理由ではなかったためカロナの興味は早急に失せた。
「あ。そゆこと。
ふーん、じゃあせっかくあいつがいないんなら、あいつのツケってことで高い酒でもゴチになっちゃおーっと」
カロナがカウンターに腰を下ろすと、メフェナもカウンターに入ってきた。
付き合いが長いため、この辺の間合いの取り方は言葉に出さなくても完璧だ。
すぐにジョッキに注がれた酒が出てきた。
「でもぉ、なんだかんだでカロナの最初の1杯はエールなんでしょお?」
「さっすがメフェナ、わかってるぅ!」
言うが早いかカロナは一気にエールを飲み干した。すぐにおかわりが注がれる。
「あんたもインディも本当エール好きよねえ。あんたたち昔、ずーっとエールだけで朝まで飲んでたことあったわよねぇ、覚えてる?」
「……ちょっと、酒がマズくなるでしょ。変なこと思い出させないでよ」
カロナはメフェナを睨みつけるが、メフェナは全く気にしない。自分の分の酒も用意し、口をつけながらカロナの相手をする。
「インディと別れてから出会い……ないんだって?」
「うるっさいわねえ! 出会いはあるの! 続かないだけ!」
唾を飛ばして怒鳴るカロナに、メフェナは大人な表情で微笑んだ。だが歳はお互いそんなに違わない。
「カロナってば、面倒な男の沼にハマっちゃった系〜?」
「ハマってないから!」
グビグビとエールを飲み干したカロナはジョッキを叩きつけるように置いた。
メフェナはさっと流れるようにそのジョッキを回収する。
「面倒な男ってさぁ、やっぱ面倒だから付き合ってると嫌になって別れるんだけどぉ、別れた後、なーんか物足りなくなるのよね〜」
メフェナの言葉に、カロナがカウンターをだんだん叩きながら激しく同意する。
「くーっ! それ! それなのよ!
普通の男って、面倒がなくて楽だし居心地いいし最初はいいんだけどさー!
だんだんなーんか物足りなくなってくんのよねー! なんていうの? 刺激? 重さ? あのムカつく面倒くささが妙に恋しくなるっていうか!」
深くうなづきつつ、メフェナが上等な酒をグラスに注ぎ、そっとカロナの横に置いた。そしてちゃっかり自分のグラスにも同じ酒を注ぐ。
「面倒くさい男ってさぁ、その面倒なところがかわいかったりするのよねえ」
どこか悟ったような口調のメフェナに、カロナが髪をかき回しながら悶える。
「くーっ! 悔しいけどなんか分かる! ムカつくしかわいさ余って憎さ百倍だけど! あの面倒くささが妙に懐かしいのが悔しいーっ!」
「ちなみにインディとヨリを戻す予定は〜?」
「ないない! もう無理! 絶対にないわ、あんな面倒くさいの! ムカつき過ぎて顔見ると頭かち割りたくなっちゃうし!」
「ふーん……。周りの話聞いてるとさぁ、インディって割と本気でセリちゃんのこと落としにかかってるって話らしいけど……」
メフェナの言葉が終わらないうちに、カロナが瞬時に抜いた手斧がカウンターを叩き割った。
「……あの身の程知らずめが……。
私のセリに手を出そうなんてやつはね……うーんと恥ずかしい格好をさせて、ヒイヒイ泣きわめかせて、そんで公開処刑にしてやるわよ……」
残忍極まりない笑みを浮かべたカロナが、うふふふふ……と不気味な声で笑う。
「……いいわね……インディ泣かすの楽しそうじゃない。私も混ざろうかしら」
ほろ酔いになったメフェナも妖艶に微笑む。
「いいわよ、二人でやりましょうか。ちなみにインディの弱点はね……」
その後、エヌセッズの姉御二人組は、人の耳に入れてはいけないような、はしたなくもおぞましい話に花を咲かせるのであった。
・・・
「ところでボル公はいつまで消しとく気?」
あらかた高い酒を飲み尽くしたカロナは、気が済んだのかボルターのことを思い出した。
「ん~? そぉねぇ……なに口走るか分かんないから、本編が完結するまで消しておこうと思ってるんだけど〜」
メフェナの言葉は歯切れが悪い。
なぜなら本気になったボルターを完全に消し続けることはメフェナのレベルでは無理だからだ。
下手をすると今にでも異次元空間をこじ開けて登場してくる可能性すらある。
「そんな面倒なことしなくったって、イントロンの新作出さなきゃいいだけじゃない?」
カロナが至極真っ当な指摘をする。
「んー……あたしもそう思ってたんだけど〜ぉ。
なんかねぇ、ここと全然関係ない作品投稿してるときに気づいたんだけどぉ、本編の再読アクセスがざわざわし出しててぇ、『そろそろ本編再開かも?』ってウズウズしてる人がいるみたいなのよねぇ」
「あらまあ、ありがたいことね。ちょっと気が早いけど」
「でねぇ、こっちもなーんかムズムズしてきてぇ……なにかサービスしてあげようかしら♡ なーんて気分になってきちゃってぇ、久しぶりにイントロン出そうかなぁって思ったんだけどぉ、ボルターが出てくるともうネタバレの話しかしないだろうなって思っちゃってぇ……」
「ああ、それでまさかのこのペアなわけね」
カロナはようやく合点がいき、何度もうなづいた。
「だってぇ、本編出番なし確定要員だからネタバレしたくてもできないものね〜、あたしたち。
ねえカロナ……月日の流れって、感慨深いものがあるわよねぇ……。
最初の頃なんてさぁ、投稿したって一切見向きもされなかったし総スカンだったじゃない?
投稿してさぁ、新着のトップページにいる時間だけほんのすこーしアクセスされてさ、その後はもう無よ、完全な無」
「……? メフェナ? どしたの? なんの話?」
話についていけなくなったカロナが困惑しているが、メフェナは気にせず語り続ける。
「それが今なんか、もう完結して年単位経ってるのまでアクセスついたり、知らないうちにポイント増えてたり。ナニゴト? って不思議に思うタイミングで誰かが読んでくれてるのよねえ。
……人の縁って面白いわよねぇ。知らないうちに気がついたら繋がってて……、何がきっかけで繋がったのか分からないけど……なんていうのかしら……きちんと形にして残しておけば、いつかは誰かの目に留まるのねーってことを最近つくづく実感するのよねぇ……」
「……メフェナ? それ誰の話? ていうかどこと通信してんの?」
どこか遠い目をするメフェナの肩をカロナが揺すろうと手を伸ばした瞬間――。
めりめりと何がが歪んでいくような不快な音が酒場内に響き出した。
「いやぁん、あたしの異界化結界が限界よぉ。もうボルターが出てきちゃうわぁ。
残念だけどカロナ、そろそろ飲み会はお開きね」
「ま、タダ酒も飲めたし、今日のところは満足ね。
……で? 結局メフェナは何が言いたかったの?」
キビキビと帰り支度を整えたカロナには、もはや酔いは残っていない。
このあと発生するかもしれないバトルに備えて、完全に戦闘モードに入っている。
「本編の投稿再開は5月の連休明けを予定してるわ。24章と……欲を言えば25章まで出力してから推敲して投稿したいところだけど、もう23章は大体完成してるし、5月中に投稿するのは確定よ」
「それ……活動報告ですればいい話じゃないの?」
「だってぇ、4月分はもう出しちゃったばかりじゃない……。そんなに何回も何回も欲しがるなんてぇ……もぉこの……ゼ・ツ・リ・ン・め♡」
「あーもう、最後に無理やりエロい声出さなくていいから。
……げ、ヤバ。ボル公の手が出てきた。じゃあメフェナ、あとよろしく!」
タダ酒飲み放題の追及から流れるべく、カロナはボルターの全身が異次元空間から抜け出してくる前に、エヌセッズの酒場から遁走するのであった。
こんな粗品の時間潰しで申し訳ありませんが、もうしばらくお待ち下さい。




