美園の入院
ある日、沙耶から美園が入院したという一報が入った。受話器を握りしめ、大和は一瞬目眩すら覚えたが、詳しく聞くと「盲腸」だということが分かった。
『あ、なんだ……』
胸を撫で下ろした次の瞬間、どっと汗が引いていくのを感じた。
沙耶「ねえ大和、美園のお見舞いは行くの?」
大和「ああ、ただ勤務時間が複雑だから一人で行くと思う」
沙耶「そっか……大和に会いたかったんだけどな」
大和「ごめんな」
美園の話が一段落すると、そのままお互いの近況報告になった。沙耶は高校時代とは逆に、女子ばかりに囲まれた大学生活を楽しんでいるようだった。ただ、年頃の女の子たちの話題は男の子の話が中心らしく、高校時代に輪をかけて更に耳年増になったと笑っていた。
一方の大和は、製造現場で日々しごかれていると話しながらも、給与やボーナスの多さを少し自慢げに語った。
数日後、大和はケーキと花束を持って、美園が入院している病院へと見舞いに行った。
大和「美園、体調はどうだ?」
美園「あ、大和……」
突然の来訪に、美園は慌てて衣服や髪の毛を整えていた。
大和「入院って聞いて、最初はびっくりしたよ」
美園「盲腸なんて病気じゃないんだけどね」
大和「でも、手術したんだし」
美園「手術前は痛かったけど、今はもう毎日暇してるよ」
大和「なら、もっと来た方がいいか?」
美園「え……でも、大和の所からだと遠いじゃん。だから良いよ」
大和「何遠慮してんだよ、らしくないぞ」
美園「でもさ……」
大和「わかったよ。じゃあ、退院したら自宅に行ってもいいか?」
美園「じ、自宅で襲いかかるつもり……?」
大和「お前、すげー妄想するな?」
美園「ふ、ふんだ、冗談よ冗談!」
大和「アハハ、おっと、馬鹿笑いは周りに迷惑か……。とにかく元気そうで良かったよ。パジャマ姿の色っぽい美園も見れたし、そろそろ帰るよ」
そう言いながら、大和は美園に小声で耳打ちした。
大和「そうそう、美園……お前剃っただろ? 今、ツルツルなの?」
美園「ぜ、全部じゃないわよ! あ……あ、イタタ」
美園は顔を真っ赤にして怒りながら、お腹の傷を押さえて痛がっていた。
大和「じゃ、じゃあな。退院したら連絡しろよな。襲いかかってやるから」
美園「ば、馬鹿大和、連絡なんかするか!」
美園は、はにかみながら悪態をついていた。
大和は元気な美園の姿を見て、安心して帰路についた。
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