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美園  作者: 柊聖月
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黄色い声援とマラソン大会

大和が通う高校では、毎年冬になると全校生徒によるマラソン大会が開かれている。男子は10km、女子は5km。距離は短いが山道を走るため、平地を走るマラソンに比べてかなりきつい。


女子は全校生徒1,000名に対し100名に満たない人数なので、安全のため男子よりも前にスタートした。規定タイム以下だと補習……、つまりミニバイクに乗った先生の付き添いありの再マラソンになる。


サボらず真面目に走ればクリアできる設定なのだが、高校男子たる者、隠れて煙草を吸う奴らもいれば、汗水流すことに格好悪さを感じてサボる奴もいる。


だからルートを外れて近道を走ったり、諦めて歩き出す奴もいた。近道には先生が待機しているというのに……。


マラソン大会の主役は運動部で、その中でもサッカー部や野球部がメインだ。彼らには部活対抗の目標があり、上位に入らなければならない。負ければ時代的に顧問からとんでもない罰があったからだ。


大和は毎日、学校までの往復20kmの山道を毎日チャリンコで通っていた。だから体力には多少自信があった。


高校2年の時、大和は近道をする奴らに負けまいと必死になりながら、全体の200番台でゴールした。運動部に所属する人数を考えればまずまずの順位だった。


そんな大和がゴールする直前、大和の目の前に見慣れない風景が広がっていた。修学旅行でお土産を交換した美園や沙耶たちが、大きな声で声援を送ってくれていたのだ。


「大和く〜ん、頑張って〜!」


既に疲労困憊だった大和だったが、美園たちの声援に応えるべくラストスパートしてゴールした。ただ美園たちの姿を見ながら、一抹の不安も覚えていた。


ゴール後、汗を垂らしながら着替えに向かう途中、美園たちがやってきた。



美園「大和くん、格好良かったよ」


大和「あ、ああ…ありがとう。でも、あんなに目立って……。


美園、噂とか大丈夫か?」


美園「大丈夫だよ。大和くん、生徒会役員でしょ? 春から私も沙耶も一緒だから」


大和「え? 一緒なの?」


美園「そうだよ」


沙耶「よ、よろしくお願いします!」


大和「あ、え、ああ……こちらこそ」


美園「沙耶、緊張しすぎだってば」


沙耶「だって……」


美園「大和君。沙耶はね、大和くんが好きなんだよ」


沙耶「美園〜〜〜! なんで言っちゃうの! もう……バカ」


大和「……」


こうして大和たちは、春から生徒会という時間を共有することになった。


ちなみに、大和が高校3年生になった時のマラソン大会では、美園たちの黄色い声援はその耳には届かなかった。


美園たちに格好良いところを見せようと練習した結果、大和は前年よりも早い100番台でゴールした。だがこの時、美園たちは自分たちのマラソンを終え、まだ着替え中だったのだ。汗をかいているから、支度にも時間がかかり……。


大和は心の中で泣いていた。『捻挫した足に朝、痛み止めの注射まで打って走ったのに〜〜〜』と。


ゴール後に教室に戻る時、美園たちが校舎からでてきた。



美園「あ、大和……。えっ、なんでここに? どうしたの?」


大和「どうしたって、ゴールしたんだって」


美園「え〜〜〜! 何でゴールしちゃうのよ」


大和「何でって……お前らの応援に応えようと、今年は必死で練習してたんだよ」


美園「……ごめん、応援出来なくて」


大和「気にすんなよ、ちゃんと声援は聞こえてたからさ」


美園「……」

本作品はフィクションです。登場人物・団体名等はすべて架空のものです。著作権は著者に帰属します。無断転載・複製を禁じます。

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