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美園  作者: 柊聖月
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お土産買ってきてよ

俺の通う高校は、一応共学にはなっているが、女子はひとつの専攻科に集中していたし、また人数も少なかった。だから俺のクラスには女子はいない……。


そんな高校2年の春、修学旅行の予定が決まり、そわそわしていた時だった。専攻科が違う隣のクラスの女子が、廊下で声をかけてきた。


「大和君だよね。私、隣のクラスの『美園』っていうの……、あ、あのさ、今度の修学旅行、お土産買って来てよ。私たちも買ってくるから……」


修学旅行先は、専攻科毎微妙に行き先や宿泊先が違う。だからお土産としては成り立つ。

突然女子から声がかかった俺は、少し照れながらお土産の約束をした。


彼女は、のちに生徒会で一緒になる美園だったが、その時まで名前すら知らなかった。


美園が教室に戻ると、女子数名が笑顔でキャーキャー騒いでいた。その中にはこちらもまたのちに深く関わることになる沙耶もいた……。



美園「大和くん、良いってさ」

沙耶「ずっと憧れてたんだよね。何買ってくるんだろう……、楽しみだね」

友達「皆には内緒だよね?」

美園「バレたら周りが煩うるさいからね。私たちだけの秘密だよ」

全員「うん」


あとで聞いた話だが、女子の間で俺は噂の的だったらしい。だから、お土産の交換を約束できたことは、彼女たちの中で嬉しい話題になったのだとか……。


俺たちの科の修学旅行先のメインは京都だったが、最初に電車と新幹線を使い岡山に行き、そこからバスで移動。最初に倉敷美観地区を散策した。


昔ながらの風情がある『倉敷美観地区』ではあったが、その中に可愛い他校の女子高生との記念写真を撮ったときは、旅先の一期一会に胸が高鳴った。ただ、何人もの男子に写真を頼まれていたので、彼女は大変だったかもしれない。


倉敷を散策したあとバスは宿に向かった。夕食、風呂のあとは、当然枕投げやらプロレスが始まる。翌日のバス移動は爆睡タイムだ。


バスは姫路城を経由してから、京都に移動した。


翌日、京都では定番の清水寺にも行ったが、フリータイムになった1日は、レンタル自転車で古い街並みを散策したりもした。そこで美園たちと初めてすれ違った。



遠目に「お土産」と言っていたが、周りに仲間がいたので見ないふりをした。


まだ特別に意識した女子という訳でもなく、俺は、地元以外の街並みと他校の女子に意識が向いていた。自転車で走っていると「一緒に回りませんか?」と声をかけてくるグループがあったからだ。


とは言えお土産を忘れた訳ではなく、行く先々でお土産を見て回り、可愛らしいアクセサリーを探した。探している時間は、何だか楽しい時間でもあった。女子のお土産なんて初めてだから。


買ったのは七宝焼のブローチだった。3人分のお土産……そんなに高いものではなかったが、もう帰路につくと言う中で、最後のお土産屋でようやく見つけて買ったものだった。


修学旅行後の最初の土曜日。


午前中の授業が終わり、皆が足早に帰宅していく中、残っているのは、俺と隣の教室にいる美園たちだけ。


辺りが静けさに包まれ、俺たちの他に誰もいないことを教えてくれた。昼間の太陽が窓の外から差し込む中、隣のクラスの美園に教室の外からお土産を見せながら声を掛けた。



「約束のお土産。気にいると良いけど……」


そう言い、美園と沙耶ともう1人の友達の分、3つを渡した。


「ありがとう、本当に買ってきたんだね。私たちからも、はいこれ」


そう言うと、鹿革製で細工が施された財布を差し出した。


「え、これって高いんじゃ……?」

「良いんだ、3人で出したから大丈夫」

「そうか〜? 分かった。大事にするよ」


これを機会に、美園や沙耶とは話しをする様になったが、そこには、男ばかりのクラスの奴らとは違う空間があった。


高校2年春17才。ここから、高校を卒業した後まで続く、美園と沙耶と俺の物語が始まった。

本作品はフィクションです。登場人物・団体名等はすべて架空のものです。著作権は著者に帰属します。無断転載・複製を禁じます。

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