5回
色んな理由を付け断ろうとしたが…
『もう思いつかない…』
断る理由を思いつく限り言ってみたが、全て空振りに終わり断る理由が無くなってしまった。数日前の兄の様に真っ白になった私。相反してどんどん顔色が良くなっていく彼の表情を見て悔しく思った。するとずっと2人のやり取りを見ていたルイスさんが真面目な顔して
「優子さんはクリスを嫌ってはいないのでしょ?」
「えっあ…嫌いも何も真面に話したのは今日が初めてなんですよ。そんな短時間で…」
そう言うと席を立ち私の横に来た彼は膝を着いて目線を合わせ
「前々から思っていましたが、日本男性は女性の美しさや愛らしさを言葉にしない。故に日本の女性は愛される事に慣れてらっしゃらない。お世辞などでは無く、貴女はとても魅力的で愛らしい。貴女は私に釣り合わなと仰るが反対ですよ」
そう言い穴を掘って隠れたい位に褒められ愛を囁かれた。もうムズムズしてお尻が5㎝ほど浮いてるような感覚だ。受けた事も無いどストレートな愛情表現にダウン寸前の私。もう縁組を断る気力も無くなって来たら彼が
「私にチャンスをいただきたい」
そう言いデートを申し込み、5回だけお付き合いして欲しいと懇願する。断る気満々で挑んだお見合い。あまりの彼の押しの強さに根負けしてしまった。
「5回デートしてら諦めてくれますか?」
「5回の内に私の事を知ってもらい、お付き合いしたいと思わせます」
そう自信満々に言う彼。返事に困っていたらルイスさんが
「ボランティアだと思ってお受けいただけませんか」
そう言い援護射撃してくる。秘儀”返事の先延ばし”をしようとしたが、二人に畳みかけられ押し売りに困る主婦の様だ。結局ルイスさんに説得され1回目のデートを約束し、やっと解放してもらえることになった。
疲れた体を引きずり部屋を出ると彼は私の背に手を当て微笑んで
「この後夕陽が見えるレストランで食事しませんか」
「いいですがノルマ5回のデートにカウントしますよ」
そう言えば引き下がると思ったが、彼はそれでもいいと言う。”いい”と言ってしまったので拒否する事ができず、彼に連行されの有名ホテルの30階にある和食のお店に連れて行かれた。
お店の一番奥の個室に案内され緊張する。だってルイスさんは仕事があると言い、ハグをし笑顔で帰って行ったのだ。
目の前の彼は途切れる事無く話しかけて来るが、私は色々有り過ぎて頭が回らない。そこに食事が運ばれて来て思い出す。家でご飯を食べない時は連絡をしなければならない事を。そして
「あの…実家に連絡したいのですが」
「でしたらこれをお使い下さい」
「!!」
噂に聞いた事があったが実物を初めてみた。それは現代では子供からお年寄りまで所持率が高い携帯電話。初めての携帯電話に手が震える。使い方が分からず固まっていると、彼が家に電話してくれた。
『なんでウチの電話番号知ってるの?』
一瞬そう思ったが重い携帯電話を持つのに必死で、そんな事を気にしてられなかった。そして母が出ると帰りが遅く心配をしていた。ゆっくり話を出来る状況に無く、夜ご飯を食べで帰ると言うと母は一言
『本当に大丈夫?お兄ちゃん行ってもらおうか』
心配してくれる母の声で心が少し軽くなる。母に大丈夫だと伝えると
『 !!』
「初めまして。優子さんとお見合いさせていただきましたクリストファーと申します」
彼は私が持つ携帯電話に顔を寄せ、母に私を食事に誘ったと報告。そして遅くならない様に家に送り届けると母に告げる。あまりに近く思わず息を止めた私。実は私は鼻が敏感で強い香りは好きではない。
先入観だが香水の習慣のある外国人は匂いがキツイと認識していた。しかし彼はシトラス系の爽やかな香りがして嫌な感じはしない。
『そこじゃなくて、頬がくっ付きそうなんだって!』
と心で叫ぶ。香りに敏感な私は自分の香りにも敏感で汗や埃を凄く気にする。それなのにこの距離は地獄だ。
『分かったわ。気を付けて帰っておいで』
「うん」
早く彼と離れたくて通話を終えると、彼は徐に私の頬の口付けた。そして固まる私から携帯電話を受取り顔の赤い私を見て
「so cute」
そう言い私を抱きしめた。その瞬間心の中の私が絶叫したのは言うまでもない。
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