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Drive us crazy  作者: 神代 鶫
未来への物語
55/60

干渉する妖精

 コームを殺したカミーユは、グラキエスとティアを連れて脱出しようとしていた。しかし、用意しておいた、隠し通路への扉は開かない。この一帯はセレスによって完全に支配されているからだ。

 彼女は、妖精族の長の娘であり、見た目は20代だが長い時を生きていて、魔法に関してはチートと言っても過言ではない。カミーユがおかしくした流れを正常に戻し、その流れを完全に支配した彼女の瞳は、魔力を帯びて光を放っていた。


「――――干渉出来なくなったか。中々、厄介な物を作ったな」


 ヘッドギアをつける直前に、少しだが干渉出来た。上手く行くかは分からないが、やれることはやった。

 精霊石を入れられたクローンは、セレスによって活動を停止している。悪魔と融合させられたクローンの動きは鈍く、シスター達に次々と倒されていった。


「あとは……アレか」


 上級悪魔を縛り付ける呪詛、グラキエスという鎖。それの効果を倍増させている神の印。ろくでもないモノを作ったねぇと呆れる。


『……なるほど、妖精族のせいか』


 呪詛の前に立つ男性が、干渉してきたセレスを見て納得した。


「それが、おまえの本当の姿だな。グラントリー=オア」

『――――ああ、久しぶりに聞いたよ。どうやって知ったのか気になるところだけれど……計画が台無しだ』


 カミーユとは全く違う顔。その男が、グラントリーだとすぐに気が付いたセレスは、鼻で笑った。


「そりゃ、良かった。ついでに、ソレも壊させてもらうよ」

『出来るモノなら、どうぞ――――何⁉』


 鎖が消滅していくことに驚いて、目を見開いたグラントリーの胸元にある神の印は、ミシミシという音と共にひび割れて、砕け散った。


「――――悪魔には有効だったかもしれないけど、あたしにとってはただのガラクタさ」


 ガラクタという言葉に、激怒したグラントリーは、セレスを鬼の形相で睨みつけるが、返って来た呪詛に悲鳴をあげた。


『あ、あああああああっ⁉』


 全ての呪詛が返る前に、現れた黒い手がそれを握りつぶし、グラントリーを現実へ連れ戻す。それは――――ティアの力。呪詛を消すほどの力を持っていることに少し驚いたが、本来の目的である悪魔をカミーユから解放することは成功した。


「――――助かりましたよ」


 解放された上級悪魔は、セレスの前に現れるとお礼を言う。与えられたホムンクルスのボディなど、必要ないため、捨ててきた。今頃、崩れ去っている事だろう。


「楽器で連想される上級悪魔は、おまえだけじゃないんだ。音が無ければ、分からなかったかもしれない。もう少し、うまく書けなかったのか?」

「ああ、すみません。バレないようにと考えた結果があれだったんです。しかし、久しぶりですね。前に会ったのは……いつだったか」

「そんなことより、いいのか? 逃がしても」

「ええ。かまいません。向かう先はジャクリーヌでしょう」


 隠し通路の扉を破壊して、カミーユはティアと共に姿を消していた。足止めしようと思えばできるが、やらなくていいと言われたのでやらなかった。本当にいいのかと問う。


「すべての始まりであるジャクリーヌで、終わらせる。我々もそれを望んでいるんですよ……悪魔ですけど、ね」


 悪魔とはいえ、無差別に人を襲うわけではない。特に、上級悪魔は人を殺すために存在しているわけではないのだ。もちろん、召喚した人間との契約内容によって、行うことはある。それがクララが亡くなった原因なのだが、そのあたりの詳しいことは誰も知らないため、上級悪魔との戦いでクララが死んだということだけが伝えられていた。


「私が出ていくと、シスターに攻撃されそうですから、ここにいる悪魔達は彼女達に任せて、報告するために帰ります。……でもその前に」


 下の階から聞こえる戦闘音は、まだ収まりそうにはない。いくら、セレスが抑えても数が多すぎるのだ。その音でかき消されていた、走っている足音が聞こえたと同時に、勢いよく部屋に入って来た男性は扉を閉める。恐怖で震えているのはロニーで、彼は運悪く、ティアがコームの首をはねた瞬間を見てしまったのだ。


「コ、コームさんが……なんで、どうして……」


 部屋が明るいことに気が付いたロニーが、勢いよく振り返ると、声にならない悲鳴を上げて腰を抜かす。


「まったく、失礼な人間ですね」

「そ、そ、その声は……カミーユ様が従えている悪魔……!」

「従えていた、の間違いですよ。もう、彼との契約は無効になりましたから。それにしても、よく逃げて来れましたね」


 白衣はボロボロ、擦り傷程度の怪我はしたようだが、あの戦場と化した研究所から逃げ出してきたロニーを褒める。


「ここの研究員か? 随分と騒がしいな」


 光るセレスに、金魚のように口をパクパクするロニーはオーバーヒートしそうになる頭を一生懸命整理する。そんな彼を見て、よくもまあ研究員になれたねと呆れたように呟いた。


「死にたくなかったら、そこでおとなしくしてろ。あたしの邪魔するなよ」


 首がもげるのではないかと心配になるほど、大きく何回も頷いたロニーは悪魔の方を見た。


「あ、あの、一体何が起こってるんですか?」

「そうですね……カミーユという男は、神を怒らせたのです。その罪と罰ですよ」

「……な、なるほど。確かに、マザーとは全く違う考えの人でしたから、神様が怒るのもしょうがないですね。えっと、それで俺はどうすればいいのでしょうか?」


 自分で考えなさいというところだが、この男「ロニー」は雑用がメインだった。研究にそこまで携わっていないのはかわいそうですし、メモも届けて貰ったことですし……と考えた悪魔は、セレスの方を見る。嫌そうな顔をされたのは気が付かなかったことにした。


「いいですか、ロニーくん? 戦闘が終わるまではここにいなさい。ここが一番安全です。その後は彼女、セレスの指示に従って行動しなさい。分かりましたか?」

「は、はい!」

「よろしい。では、今度こそ失礼しますよ。セレス、後はよろしくお願いします」


 何か言いたげなセレスに向かって、手を振った悪魔は帰って行くのだった。


「ロニー」

 貧乏くじ引きまくりの研究員。本来は頭が良いはずなのに、予想外のことなどに対応出来ずにパニックになる男性。人付き合いが良く、具合が悪くても誘われたら断らないで怒られる。


 彼にはモデルがいるのですが、元気にしているのだろうか……。

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