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Drive us crazy  作者: 神代 鶫
未来への物語
54/60

悪魔が待ち望んでいた瞬間

 悪魔と精霊石の融合。そして、それをクローンに入れる。ホムンクルスは少しやっただけで飽きたが、うまくいったものはグラキエスに与えた。


 ――――ああ、なんて、楽しい毎日なのだろう。


「悪魔ってさ、人殺すためだけに存在するわけじゃないよね?」


 後方で、興味なさそうに欠伸をしていたグラキエスに声をかけた。


「失礼なことを言うのは、やめてください。そのような行為に興味すらありませんよ」

「ふーん。じゃあ、やっぱり中級悪魔が実験には適切か。ところでさ、ジャクリーヌに成仏できない失敗作がうろついているらしいんだけど、それ、捕獲すること出来たりする?」

「そんなものを捕まえて、どうするというのです?」


 カミーユは子供のようにキラキラした目で、理由を知りたいからと言った。


「――――アレは実体のない、魂のような存在ですから、捕まえるのは不可能ですよ。捕まえたいのであれば、何らかの方法を作ってください。そういうの得意なんでしょう?」

「サンプルがないと何もできないな。オレには見えないし」

「見えない方がいいと思いますよ。自分が見える者に襲い掛かって来るようですから」


 ますます、興味深いねというカミーユに、行き過ぎた好奇心は身を滅ぼしますよと、くぎを刺しておく。

 融合がうまくいかなかったのだろう。エラー音が鳴り響き、一体のクローンが消滅した。


「あーあ、失敗か。やっぱり、悪魔を足すと本体が持たないな。通常の精霊石を入れて、悪魔に憑依させてみるか? いや、それだと結果として同じか……」


 所詮、人が悪魔を扱うなどできるわけがないのである。この身体も、グラキエスが壊れないように、力の調節をしているのに気が付かない。彼らは愚かな人間だと嘲笑った。


「両方に耐えられる器を新しく作ってみてもいいけど、シェティの方がいい感じなんだよ」


 苦しそうに息をしているティアは、髪の色が灰色に、瞳の色が黒色に見えるほどの暗い藍色へと変わっていた。闇の精霊はシェイドであるため、融合化しているからシェティという名前で呼ぶカミーユに呆れる。そんなグラキエスに、名前なんて記号だからいいんだよと笑って返した。


「人と精霊の融合化。これが、本物だよ。やっぱり、クローンじゃ、ここまでは行かない。再生能力も速度が上がっているから、もう少しってところかな」

「はい。アンゲルスを追加しますか?」

「ああ、いいね。追加してみよう」


 用意した薬を注射すると、ティアは悲鳴を上げた。カミーユとコームに向けられる殺意に、グラキエスは呆れて言葉もない。解き放たれた時、真っ先に殺されるのはこの2人だ。その方が自分としては都合が良いが、そうならないように、カミーユの言うことに従う様にする何かを使うだろう。


「数値が上昇してるね。うん、いい感じだ。このまま上手く行けば成功体を確実に捕まえられる。ああ、そうだ。こっちにもアンゲルスを投薬して、強化してみようか。そうすれば、両方に耐えられる個体になるかもしれない」

「なるほど、やってみましょう」


 どのくらい投薬するかの計算を始めた2人を、汚いモノを見るかのような目で見ていたグラキエスの口元が緩んだ。


 ――――ああ、やっと来ましたか。


 ここに、侵入できないなら、侵入できるようにすればいい。ロニーに渡したメモが通った道を通って邸に入ればいいのだ。そうすれば、誰にも気がつかれない。マザーがいなくなったこの邸は、邸内の監視をやめている。そのことを知っていたからこそ、ロニーにメモを渡したのだ。

 道を通って、姿見鏡から部屋へと出ると、被っていたフードを脱いで顔を見せた。襟足が長めの緑色のウルフヘアに黄色のメッシュ、飴色の瞳。ショートパーカーに、ブラトップ。サルエルパンツにサンダルという服装の女性で、部屋を見渡すとため息をついた。


「ったく、上級悪魔のくせに、人間に捕まるなんてだらしない」


 メモにはもう1つの仕掛けをしておいた。それは、この一帯の情報。グラキエスが知る情報をその紙に詰め込んでおいた。聖女教会と繋がっている妖精族、「セレス」なら気が付くだろうと考えて――――。


「さて、始めるか」


 瞳を閉じたセレスの周りや足元に、複数の魔法陣が展開すると、ペンデュラムピアスが輝きだし、研究室に置いてある魔力の計測器のメーターが振り切れて爆発した。


「うわっ⁉ な、なんだ……?」


 驚き、腰を抜かすコームの隣で、カミーユは煙を上げる計測器を、見つめる。研究室に置いてある培養槽などが、すべて破壊されていく異常事態に、他の研究員も悲鳴を上げた。


「……凄い魔力だ。上からか?」


『セキュリティ強制解除。警告。警コ、ク――――』


 プツリと音声が途切れると同時に、邸の扉が蹴り飛ばされると、シスター達が入り込んで来た。


「あー、もう。うるさいな。何が起こった?」

「カミーユ様、魔導書グリモワールがすべて消滅しました!」

「は?」


 この邸を守っていた魔導書グリモワールは、セレスによってすべて消された。邸の周辺には迷宮の魔法がかけられていたが、グラキエスがこの辺りの大地の情報を与えていたため、すぐに邸に突入できる位置で、聖女教会は待機していたのだ。

 カミーユは舌打ちをすると、鍵をかけて保管しておいたヘッドギアをティアに装着した。


(ああ、やはり、用意していましたか)


 装着すると、外れないように頭の後ろでロックがかかり、バイザーが顔を覆う。


「もう少し、実験したかったけど仕方ない」


 魔法陣が消えて、ティアはゆっくりと起き上がった。


「保険をかけておいて良かった」

 

 割れた培養槽から、クローン達が動き出す。もしものために、自動で精霊石と悪魔が組み込まれるようにしておいたのだ。


「うるさいハエを始末してこい」


 研究室に入って来たシスターとの戦闘が開始されると、カミーユはグラキエスに声をかけた。


「もう、ここは使えないな。移動するよ」

「ええ、分かりました」

「待て!」


 ティアの足を掴むコームは、カミーユを睨みつける。


「これは、どういうことだ⁉」


 ティアのヘッドギア。それは、コームが知らなかったこと。


「シェティ」

「――――はい」


 ティアの手に、闇精霊が纏わりつくと刃に変わり、コームの首をはねたのだった。




「アンゲルス」

 カミーユが作り出した薬。適合すれば進化(強化)し、適合しなければ死ぬという恐ろしい薬。

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