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Drive us crazy  作者: 神代 鶫
未来への物語
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絶望の中に残された希望

 メモは、この鏡を使った人物……フィレールの部屋の姿見鏡から外へ出ると、鳥に姿を変える。窓から外へ飛び出して、フィレールの元へ向かおうとしたが、彼の気配が途中で途切れており、木の枝にとまった。ナエマがその気配に気が付き、様子を伺いに地から現れる。


「――鳥……? ああ、アイツに用があるのか。届けてやろう」


 鳥は羽ばたき、ナエマの手にとまると、普通のメモに戻った。フィレールの元へメモを届けるために来た道を戻る。戻った部屋の空気はどんよりとしていて重たかった。


「なんだ、まだ落ち込んでいるのか」


 ティアの救出が出来なかったことがショックで、ジェシカとルミナスが落ち込んでいる。特にルミナスはティアと仲が良かったため、ショックが大きいようだ。


「上級悪魔の仕業だろう? どうにもできないさ」

「……悪魔を使うのは想像の範疇だけれど、まさか上級悪魔を使うなんて……」

「その悪魔からの手紙だ」


 ナエマは、フィレールにメモを渡すと、ジェシカとルミナスが顔を上げる。受け取ったメモを見たフィレールが「なんだ、これ」と呟いた。


「楽器は入れ物の中。翼の神の箱庭。生きながら、死んでいる……? 楽器……?」


 チリンチリンと、どこからか音が聞こえた気がした。その音色に、ナエマの目が細くなる。


「……悪魔は入れ物の中。光翼人こうよくじんの箱庭に生きながら死んでいる。悪魔も閉じ込められているのだろう」


 悪魔の中に楽器と共に現れる者もいるが、どこからか聞こえた音色、あれは間違いなくあの悪魔だなとナエマは確信していた。


「生きながら死んでいる……カミーユが被験体に対して使う言葉よ。恐らくティアを使って実験をしているという意味……」

 

 ルミナスがショックのあまりに泣き出した。ジェシカは、ルミナスを落ち着かせるように、優しく包み込んだ。


「上級悪魔が召喚されて、これを寄越した。つまり、なんとかしろと言っているんだろう。さっさと聖女教会に連絡するんだな」


 フィレールは舌打ちをすると、ジェシカに確認する。聖女教会は、上級悪魔と因縁があると彼女に聞いていたからだ。間違いなく、面倒なことになるだろう。だが、一行も早くティアを助けなければならない。部屋の隅で話を聞いていたタウが、口を開いた。


「……あそこは、危険です。場所がバレているのにも関わらず、そこで研究を続けているのは、絶対に大丈夫だからです。外部からの侵入も、そこから出ることもできない――――檻です」

「あー……確かに、たどり着くまでが大変だったな。その大丈夫は100パーセントなのか?」

「はい。カミーユがすべてを握っています。必要に応じて出入りできるようにしていますが、用心深いのでその穴を抜けるのは困難かと」


 ナエマがため息をついた。


「行くのは聖女教会だ。さっさと動け。死んでもいいのか?」

「……フィレール」

「……わかった」


 フィレールはメモを手に、部屋を後にした。


「……タウ。ティアについて、カミーユは何か言っていた?」

「特定の研究員と話していたのは確かですが、内容までは……」

「特定? 誰かしら?」

「コームという研究員です。――――マザー⁉」


 ジェシカの顔が青ざめ、ルミナスも震えだす。ティアに執着していた男だ。許可なく実験を行おうとして何回か注意した覚えがある。ルミナスもコームと面識があり、ティアに酷いことをしていた大嫌いな研究員だ。本当にティアが死んでしまうという絶望感に襲われたルミナスは泣き出した。


「……マザー」


 タウがジェシカの前に跪く。


「我々、クローン……成功体は、本来の役目を果たす覚悟は出来ています。その時は、迷わずに、使い捨ててください。でも、わたしは……その役目を果たせない。役に立たなくて、申し訳ありません」


 悲しそうな顔をしたタウを「そんなこと言わないで」と抱きしめる。覚悟が出来ていないのは、自分の方だ。彼女達のことが大切な――――自分の子供のような存在になってしまった。本来なら道具として使わなければいけないのに。自分が付いていけばタウも戦える、役目を果たせるが、その場に自分がいることで足手まといになるのは分かっている。それだけは、避けなければならない。


「……マザー。わたしたちのクローンを新しく作ることは可能なの?」


 ルミナスの問いに、可能だけれど、設備がないと返した。ここでは、作ることが出来ない。どこかの施設を利用すればできるかもしれないが、危険を伴う。手元にあるのは僅かな精霊石と資料のみだ。

 ナエマは猫に姿を変えると、地へ吸い込まれるように消えた。向かう先はムタビリス。リサリサの店だ。店内に入れば、鳥の着ぐるみを着たリサリサが歓迎してくれる。


「いらっしゃいまーせー。ごちゅうもんのしな、にゅうかしてますよー」

「相変わらず、仕事が早いな」


 奥から、小さな箱を持ってきたリサリサは、ナエマに手渡した。


「さがすの、たいへんでしたよー。――――最近、忙しいみたいだね。それと関係あるのかな?」

「……知っているのに聞くのか、情報屋」

「いや、知らないから聞いているんだよ。フィレールさんは口が堅いし、悪魔はうるさいし。聖女教会とはさすがに繋がりがないからね、情報が全く入って来ないんだ」


 商売あがったりだよと嘆くリサリサに、ナエマは代金を渡す。


「まいどありー。で、そんなもの何に使うんだい?」

「……使わなければそれでよし。保険のようなものだ。世界が滅びるかもしれないからね」

「……思ったよりも、事態は深刻そうだ。まあ、またなにかありましたら、いつでもどうぞー」


 ナエマは邪魔したなと言い、店を後にした。



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