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Drive us crazy  作者: 神代 鶫
未来への物語
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悪魔は考える

 研究所の培養槽に、バラバラにされた悪魔が入れられている。悪魔にも位があるなんて、面白いと思ったカミーユは、弱い奴ほど脆いことに気が付き、中級悪魔を中心に実験を行っていた。


「喋れるのも中級悪魔からって不思議だよね。再生能力が高いのも……どういう仕組みなんだろう。ほとんど一緒なのに、違いが出るのは、罪の重さによって変わるのかな」

「そうですね。この悪魔はたくさんの人を食べたようですし……カミーユ様が召喚した悪魔は、神に近いと言っていました。そういう違いでしょうか」


 他の研究員とカルテを見ながら話をしていたカミーユが、帰ってきたグラキエスに気が付いた。


「ああ、捕獲出来たんだ。良かったよ、貴重なサンプルを1つでも確保できて」


 受け取り、魔法陣が描かれた台の上に横たわらせると、魔法陣は輝きだして、ティアを拘束した。異変に目覚めたティアは苦しそうにもがいている。精霊が出てこようとするが、火花放電が起き、精霊にダメージを与えて抑えこんでいた。


「迎えに行く順番間違えたね。コレを先に保護すべきだった。あんな人形達を先に保護するなんて、意外と抜けてるな」


 価値が無い人形など、壊してしまえばいいと思ったが、仕掛けておいた鈴はバレてしまったようだ。苦労して手に入れたのに、勿体無いことをしてしまったが、ティアが手に入ったことで帳消しだ。


「さて、まずはどういう状態か調べないと。――――どうだった? 最初は様子見してたんだろう?」

「……私が出なければ、捕まえることは不可能でした」

「へ~。確か、闇精霊との相性がいいんだっけ?」


 ティアについての資料をチェックしている。その資料は、カミーユの隣にいる男性「コーム」が持っていたものだ。彼は、ティアのいた研究室に勤めていた研究者で、彼女がサナトリウムに入院すると決まった時に反対し、マザーに追放された。それでも諦めきれず、彼女のデータを複写して持ち出していたのだ。マザーが死んだことを風の噂で聞き、戻ってきたところカミーユに気に入られ、ティアの事を報告した。


「はい。闇精霊が守ろうとするため、なかなかうまくいかずにいたのですが、サナトリウムで行われた実験の結果……」


 そこで、言葉を切り、悲鳴を上げる精霊を見て笑った。


「守るために、中にいたのが仇になったということですね」


 ティアの中にいたことで、出れないように閉じ込められた闇精霊は、出るためにティアと融合したのだ。――それを期待されていたとも知らずに。


「精霊が人間を守ろうとすること自体が意味不明だ。コレに、なんの価値があるのか――理解しかねる。存在価値は……まあ、今の状態ならあるけれども。この状態じゃなかったら、ただの人形。遊び飽きたら捨てられるだけの存在だ」


 融合化したことで研究員が複数死亡し、手に負えなくなってしまったため、精霊封じで抑え込んでいた。


「この状態で、クローンを作るとどうなるのかの実験をしたかったみたいだけど、なんでそんなにクローンにこだわるのか不思議だよ」


 コームが、このために用意しておいた複数の薬を棚から取り出した。


「まずは、どれからにしますか?」

「うーん、そうだね……」


 グラキエスには興味のない話が始まり、席を外す。人とは愚かな生き物だと改めて実感する。自分が手を下さなくとも、近いうちに死ぬ未来が見える。そんな人間に命じられ、捕まえてきた人間と、精霊の行く末に興味などない。


「……バラバラにした代償は高いですよ」


 培養槽に入れられた悪魔達。その中には、グラキエス以外の上級悪魔が従える悪魔がいる。敵討ちなどしないが、この状況を知ったらどうなることか。自身にかけられた「名前」という鎖、神の印というふざけた物さえ何とかできればいいのだが。


「……シスターがここにこない理由は、この一帯を包み込むように張られた結界ですね。どさくさに紛れて、彼を捕まえてもらえると助かるのですが……」


 シスターに助けを求めなければならないなど、悪魔の恥だが、そうも言ってはいられない。それに、聖女教会と繋がっている彼女と連絡さえつけば、何とでもなる。


「ヒッ!」


 自分を見て悲鳴を上げる男性が、廊下の影に隠れた。


「……失礼な人間ですね」


 影から、こちらの様子を伺っている。グラキエスは悪魔とはいえ上級悪魔だ。人を殺すことは滅多にないし、そもそも、グラキエスはそういった類ではない。


「オマエのちっぽけな命など、興味すらありませんよ。……ああ、そうだ、良いことを思いつきました」


 グラキエスは、隠れている男性「ロニー」の名を呼ぶ。


「な、なんで名前を……」

「名前を憶えて貰えない人間ですから。逆に憶えました。それより、おつかいを頼みたいのですが」

「おつかい……ですか?」


 悪魔が、自分におつかいを頼むってどういうことだろうかと、隠れるのをやめたロニーが、恐る恐るではあるが近寄って来る。


「書く物は持っていますか?」


 ロニーは白衣のポケットからペンとメモ帳を取り出し、渡そうとするが、字は書けないので代わりに書いてくださいと言われた。分かりましたと、グラキエスが言うことをメモしていく。


「楽器は入れ物の中。翼の神の箱庭。生きながら、死んでいる」

「……なんですか、これ。ポエム……? ヒッ! ごめんなさい、ごめんなさい!」


 グラキエスの目が笑っていないことに気が付き、頭を何回も床にぶつけながら土下座する。


「今すぐ、それを持って、私を召喚するのに使った部屋の鏡に投げ入れなさい」

「え?」


 言っていることの意味が分からず、ぽかんと口を開けているロニーの手からメモを奪うと、自分の力を込める。


「はい、行ってらっしゃい」


 メモを返すと、ロニーは立ち上がり、ダッシュで階段を駆け上がっていった。マザーが使っていた部屋に飛び込むと、鏡に向かってメモを投げる。メモは鏡の中へと吸い込まれていった。


「……ふぅ……。ん? でも、このくらいなら自分でやれば……」


 何故、俺に頼んだのだろうかと疑問に思うロニーだったが、「この事を誰かに喋ったら、死にますよ」というグラキエスの声が聞こえて、短い悲鳴を上げたのだった。


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