契約済んだら買い出しだ
暑いけど、肌寒い。タオルケットじゃまだ早い。皆さん、コロナだけじゃなく風邪にもお気を付けください。
ヴァルキュリアの本拠地に連れて来られたダリアは、驚いていた。古城の隣にある池に囲まれた陸地。そこには少し小さいが、立派な宮殿が存在していた。
「これって、王族とかが使うやつじゃ……」
「つい最近まで、こっちを使っていたけど、お城の補修が終了したからみんなそっちに移ったの。だから、モニカちゃんが王様から頂いたのよ」
王様から宮殿を貰うなんて、モニカってスゲー奴なんだなと、改めて実感した。
橋を渡ると門が勝手に開き、左右に立つ石像が会釈をする。驚きつつもちゃんと見ると、関節のところに金属のようなものが見えた。
「おかえりなさい。あや? お客様ですか?」
駆け寄って来たエプロンドレスを着ている少女に、アプリコットが抱き着く。
「紹介するね。新しく仲間に加わったダリアちゃんです。ダリアちゃん、この子はキャラメルちゃんっていうの。可愛いでしょ?」
「はわわ。キャラメルです。よろしくお願いします」
お互いに挨拶をし、握手を交わす。モニカは満足げに頷くと、宮殿の中を案内しながら、地下室へと降りた。
「他の部屋は後で案内するとして、先ずは契約をしてもらおうか」
地下室はとても広くて涼しいモニカの研究室となっていて、部屋の一番奥にモニカが作った契約武器が並べられていた。
「これが、アンタが作った契約武器か。見た目は普通の武器と変わらないけど……この石みたいなヤツ、なんだ?」
「使用者の登録、ファタモルガナの認識、魔力の干渉……すべてを行う核じゃ。さあ、ダリアよ。そこに立ってもらえぬか?」
「立つだけでいいのか?」
「うむ。なにもせんで良い。武器が勝手にお主を選ぶ」
魔方陣が床に描かれており、ダリアはその上に立たされた。次第に身体が熱くなり、魔力が身体の中心に集まってくるのを感じる。それに反応した魔方陣は輝き放ち、目の前に並んでいる契約武器へと光の線で繋がる。1つの契約武器がダリアの魔力に共鳴し、ふわりと浮かぶとダリアの目の前に来た。――それは剣。70センチほどの片手剣で、ダリアの手に収まると光は消えた。
「おお、契約完了じゃ。これで、正式にヴァルキュリアの一員じゃな」
「……軽い」
自分の所有する剣より軽い。使い慣れている武器と同じタイプの武器であるため、扱いにも困らないだろうと安心した。
「メンテナンスもあるからの、普段はここに置いておいてくれ。必要な時は呼べば、お主の元に来るから安心してよいぞ」
分かったと返事をし、剣を元の場所へと戻した。
地下室を後にし、2階へ案内される。アプリコットとキャラメルの声がする部屋に顔を出すと、2人が気が付き駆け寄って来た。
「ダリアちゃん。ここ使ってね。お布団もちょうど昨日干したから、ふかふかで気持ちいいよ」
「ありがとう。一度、宿に戻って、荷物取ってくるよ」
宿に戻るダリアを、リヤカーを引いたキャラメルが追いかけてきた。
「待ってくださーい! キャルも一緒に行きますー!」
手には買い物をメモした紙が握りしめられている。そのメモをダリアは見せてもらった。
「……食料の買い出しか。結構な量だな。ついでに付き合うよ」
「いいんですか? 助かります。モニカさんもアプリコットさんもたくさん食べるので、買い出しいつも大変なんです」
だから、リヤカーなのかと納得した。宿に向かって歩きながら、ダリアはキャラメルに何故エプロンドレスなのか聞くと、仕事服だからだと笑顔で答えた。
「キャルは、宮殿の家事全般をしているので、この服じゃないと大変なんですよ」
「……1人で? あの宮殿を? マジか」
「はい! キャルはお掃除、洗濯大好きなので、とっても楽しいです」
もちろん、モニカやアプリコットも手伝っているが、モニカには料理を担当させられない。キャラメルは思い出して寒気がした。
「ダリアさん。モニカさんの作った物は絶対に食べちゃだめですよ。三途の川見えちゃいます」
「……分かった」
キャラメルの顔は本気だ。全てを悟ったダリアは大きく頷いた。
宿から荷物を回収し、手続きを終えたダリアは、外で待っててもらったキャラメルと共に市場へ向かう。業務用サイズの小麦粉、砂糖などを購入し、気が付けばかなりの重さになっていた。
「確かに、リヤカーなかったら無理だな」
「はい。タイヤさんがもう無理だよって喋るくらい乗せますから」
――大変。うん、大変だよな。大変だけどさ、オレの手伝い必要ないんじゃないか?
30キロの砂糖と25キロの小麦粉を重ねた状態で軽々と持ち上げていた。今も、200キロまで大丈夫というリヤカーに、これ以上は乗りませんというくらい荷物を乗せて軽々動かしている。
「なあ、重くないのか?」
「全然大丈夫ですよ。いつもより、少ないですから」
「……そうか」
たまに聞こえる軋むような音が、リヤカーの悲鳴に聞こえて、ダリアは苦笑した。
「うわぁ……いつもながらすごい買い物だね」
「あや、メヌエットさん。こんにちわ」
「こんにちは。あれ? えっと、確かシスターマーガレットの保護者、ダリアさんですよね? どうして、キャラメルと一緒にいるの?」
「ダリアさんは、キャル達の仲間になりました」
まあ、そういうことだと言うと、メヌエットはそうなんだと納得した。彼女も買い物に来ていたのだろう。籠に野菜や果物などが入っていた。
「アンタも買い物か?」
「うん。ボク、聖女教会で働いてるんだ。キャラメルとは仕事仲間なんだよ。ねー」
「ねー」
メヌエットとキャラメルはとても仲が良い。楽しそうに会話している2人を見ながら、平和だなぁと実感していた。そんなダリアに、メヌエットは尊敬の念を抱いていた。
「シスターマーガレットと幼馴染なんでしょ? すごいよね。ボク、疲れちゃうよ」
「……なんか、やらかしたか?」
「……聞きたい?」
「やめておくよ」
全てを悟ったダリアは、深々とため息をついた。
――頭痛が痛い、と。
「宮殿」
王族が見つかり、急遽建てられた宮殿。モニカが作った発明品で建てた事もあって、城に移り住んだ後、モニカが貰った。今では「ヴァルキュリア宮殿」と呼ばれている。入口の絡繰人形は、不法侵入者にレーザービームを放つと言う噂があるぞ。




