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Drive us crazy  作者: 神代 鶫
未来への物語
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白猫郵便

 エクレールの話を聞き終えた面々は、それぞれ動き出していた。自室へ戻ったリリベットとその傍に控えるチョコチーナは、本棚に並べられている本の中にまだ何かあるのではないかと探すことにした。本を取ってページを捲っていたチョコチーナは、動きを止めて、リリベットの前に立つ。


「チョコチーナ?」


 袖に隠してあるナイフをいつでも取り出せるように構えた瞬間、床から出て来たのは二又の尻尾の白い猫。猫は鳴くと人へと姿を変えた。


「――――あなたは……」

「久しぶりだね。リサリサの店以来だ」

「まあ! 猫が人になったわ」


 目を輝かせているリリベットに、オマエの主は変わっているなと、相変わらずの無表情で言う呪術師ナエマに、チョコチーナは警戒を解いて挨拶をした。


「お久しぶりです」

「ここに来るのは些か骨が折れるが、あの時置いていった代金の分は働かせてもらうさ。――――ああ、あのナイフはきちんと埋葬しておいたよ」

「ありがとうございました」


 チョコチーナは、ナエマをソファーにどうぞと促す。リリベットは、本を棚に戻すと、ナエマの向かいに座った。


「リリベット様、こちらは呪術師のナエマさんです。リリベット様を狙っていた、犯人の手掛かりを教えてくれた恩人です」

「まあ、そうなの? あなたのおかげで助かりました。ありがとうございます」

「気にしなくていい。あれは、偶然だ。それよりも、これを預かって来た」


 ナエマがテーブルに置いたのは手紙。無記名の物と、ミスティへと書かれた手紙の2通だ。


「危ないモノではないさ。そんなリスクは負わない。名無しの方は全員、目を通してほしいそうだ」


 拝見しますと、チョコチーナは手紙を手にして、封を切った。中を取り出し、リリベットに手渡す。そして、テーブルに置かれたクッキーが入ったガラスの容れ物を開けると、ナエマにどうぞと差し出した。


「糖分が必要と見受けられます」

「さすが、妖精族だね。朝からこき使われた挙句に配達のお願いをされたよ。まったく、呪術師使いが荒い奴らだ」


 クッキーをありがたく受け取り、口に運ぶ。


「全部食べていただいて構いません。ここから帰るのも一苦労でしょう」

「ああ、助かるよ」


 リリベットが手紙を読み終わる頃には、クッキーはほぼ食べ終わっており、チョコチーナは部屋に置いてあるアイスティーをグラスに注いで渡した。それを飲み干したナエマは息を吐く。


「――――さて、読み終わったかな?」

「ええ……すぐに伝えます」

「ああ、そうした方がいい」


 ナエマは立ち上がった。


「クッキーの礼だ。悪魔共が騒がしいぞ。そっちにも気を付けた方がいい」


 じゃあな。と言い残し、猫の姿になると床に吸い込まれるように消えていった。頭を下げて見送ったチョコチーナは、気配が消えたのを確認して、ゆっくりと上半身を起こす。


「……リリベット様、手紙には何と書かれていましたか?」

「マザーが、私達に知る限りの情報を与えてくれたわ。チョコチーナ、行きましょう」

「はい」


 アルザスはソニアと、ジェシカについて調べるために、許可なしでは入れない書庫にいる。2人もそこへ向かう。


「聖女教会へはいかがいたしますか?」

「エスメラルダに、伝えてもらうわ。私の声が届いているはず」


 それは、あの別れ際でエスメラルダから貰ったもの。名前を呼べばいつでも駆け付けてくれるという約束。少し間をおいて、リリベットにだけ「任せて」という彼女の声が聞こえた。

 階段を下りていくと、重厚な扉があり、3回ノックした。


「リリベットです」


 勝手に扉が開き、リリベットとチョコチーナが中に入ると、ゆっくり扉は閉じる。

 

「どうされました?」

「これを」


 渡された手紙へ視線を動かしてから、リリベットを見た。


「マザーから頼まれたと、呪術師が届けてくれました」

「……拝見します」


 奥の方を調べていたソニアが顔を出した。傍まで来ると、リリベットに頭を下げて挨拶をする。


「何かありましたか?」

「ええ。手紙を預かってきました。ソニアも読んでください」


 アルザスの隣に並ぶと、失礼しますと言い、手紙を覗き込む。先に読み進めていたアルザスの眉間に皺が寄り、手紙を持つその手が震え出した。


「……これが本当ならば、大変なことになる」


 マザーとドールは、呪術師に用意してもらった地に隠れた。今後、自分達がミスティを狙うことはない。

 しかし、これから施設に残されているクローン達が、一斉にジャクリーヌに攻撃を仕掛けてくる可能性がある。その目的は勿論、ミスティを捕まること。そのためなら、すべてを破壊する。

 今までのドールは心で力をコントロールしていた。今後、ジャクリーヌに現れるのは、リミッターを解除をされた戦闘型ドールである。

 だが、ファタモルガナとは違い、ジャクリーヌの騎士団で対応できると書かれていた。


「ソニア、他の騎士団と連携して戦う準備を。一般市民を巻き込むわけにはいかん」

「はい。すぐに対応します」


 その続きにはカミーユについて書かれていて、マザーは世界をカミーユから救出するために協力していた。彼は、この世界に生きとし生けるものすべての天敵だ――――と。


「……クローンには興味が無くなって、ミスティ殿を捕まえることを考えていることだけは確か、か。カミーユの手に渡れば、この世界にとって最悪なことが起こるかもしれない。目的はなんだ? この世界を支配……いや滅亡させようとしている?」

「いいえ。好奇心を満たすためだけの行動……。それによって何が起ころうとも、気にしないのでしょう」

「結果として、自分が消えてしまってもいいと考えているかもしれません。リリベット様、こちらはどうなさいますか?」


 チョコチーナが手にしているのは、ミスティ宛の手紙だ。アルザスがそれはこちらで預かると言った。ジェシカについて、聖女教会に確認したいことがあるついでに寄ればいい。お願いしますと差し出された手紙を預かり、4人は書庫を後にした。



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