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Drive us crazy  作者: 神代 鶫
未来への物語
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好奇心は時に狂気となる

 部屋に沈黙が訪れる。シリウスはただ困惑していた。実は、シリウス自身もよく分かっていないのだ。古びた手紙が城で見つかり、シリウスにたどり着いた。ソニアに持たせたアルザスからの手紙を読むまで、シリウスも自身が王族であることを知らなかったくらいである。


「いや、ジェシカという名は、聞いたことがないぞ……偽名ということか? ううむ、調べ直さねば」


 頭を掻きむしるアルザスは、その話はいったん預からせてくれと言った。返事をして、エクレールはエスメラルダの元へと戻る。


「ジェシカは研究を続けながら、クレアを探していた。長い時を経てやっと見つけたんだけど、彼女が身籠っていることが分かって、喜んだものつかの間、少しそこから離れた時に連れ去られてしまったの。そして、出産してすぐに引き離されてしまった。疲れて眠っている間に別の場所へ連れていかれてしまって、用済みとなったクレアは殺されたけど、そいつらもクレアに殺された」


 クレアの記憶で見た場面に繋がった。エスメラルダは、モニカからクララとの話を聞いていたので、エクレールの話をいったん止めて問いかける。それは、クララが魔法を使えたかどうかだ。カトリーヌはその問いに首を横に振った。


「いえ。魔法が使えたのはクレア様のみ。だからこそ、クレア様だけ連れていかれたと日記に書かれていました」

「なるほどね……。エクレール。クレアさんがここにいた理由って話してくれた?」

「うん。精霊と会話しているところを見られて、ここに連れて来られたって本人が言ってたって。公爵に狙われていたけど、処女でなければならないって嘘ついて免れたみたいよ」


 その後に、光翼人こうよくじんと出会うこととなる。


「やっぱり、ミスティの精霊との相性は母親譲りなのね。結果として、それがミスティを守ることとなった」


 ミスティと目が合う。エスメラルダが微笑むと、ミスティも嬉しそうに笑った。


「そうだ。マスター、ミスティを追ってくるドールなんだけど、空間を繋いで大移動してたわ」

「移動? エクレール、詳しく聞かせて」

「は~い。移動先は魔王のアジト。あの辺り、あたしでも見るの苦労するんだから」


 魔王のテリトリーは、魔力の流れが複雑で、魔力そのものに免疫がないと体調が悪くなるという。そこへ、ドール達が移動した。それは何を意味するのか。


「あの感じだと、ジェシカ……あ、マザーと魔王は知り合いかな」

「……いや、ちょっと待て。マザーって死んだんじゃないのか?」

「ううん。クローンが用意してあったみたい。あたしの予想だと、マザーがいた方がドール達を扱いやすいからじゃない? あ、ちなみに、マザー達はもう完全に追えなくなってるわ。あの辺りって、抜け穴いっぱいあるから、どこかに隠れたんだと思う」

「魔王のアジトの周りって魔力の流れが複雑なのよね。ジャクリーヌより酷いわよ。隠れ里なんてたくさんあるっていうし……。そこへ行ったということは、逃げる必要があるってことか。なら、今気にした方がいいのはその男ね。……あ、肝心の名前は分かってる?」

「カミーユって本人は名乗ってるけど、本当の名前はグラン。グラントリー=オア」


 アルザスが勢い良く立ち上がる。その身体は震えていた。


「なん、だと……? まさか……いや、そういうことなのか……」

「どうしたのじゃ?」


 見れば、ソニアもその名を知っているようだ。同じように驚いていた。


「……ここに遺跡を作るようにと命じたアイダ公爵は、妻が5人いたんだ。その5人目の女性がメルル=オア。そして、子供がグラントリーという名前だ」


 平民だった彼女は、他の4人からひどい仕打ちを受けて亡くなった。アイダ公爵もそれを見て見ぬふりをしていたため、無残な最期を遂げたという。グラントリーはアイダ公爵が逃がしたというところまでは記録として残されている。


「ただ、公式では4人の妻がいたとしか残されていない。メルル=オアは平民というだけで、その存在を隠されていたんだ。子供の存在も残されていない。知っている者は、あの時に全員処刑されてしまったからな……。彼女の存在が明かされたのは、つい最近のことだ。城の修復工事の時に出て来た箱の中にしまわれていた手紙に書かれていた」


 その手紙は、当時の王の側近と、アイダ公爵から逃げた侍女がやり取りをしていた手紙だった。2人は兄妹であったため、誰にも怪しまれずにやり取りが出来たのだ。侍女は、グラントリーを探していて、見つけ出して、保護しようとしていた。見つかり、身分がバレたら、彼も殺されてしまうと思ったのだろう。グラントリーもそれを分かっていたから、カミーユと名を変えたのかもしれない。


「復讐しようとしているのか……?」

「ううん。そういうことには興味ないみたい。ただの好奇心を満たしたい子供って感じ」


 存在を消されたということは、動きやすいということ。自分を知っている者達が死に、タイミングよく戻ってきて種をばらまき、光翼人こうよくじんを手に入れる。それを使って何か面白いことができるかなというレベルであり、その程度の考えでこういうことをしたと思うと恐怖でしかない。


「面白いことって……そいつ、どういう頭してるのよ……。命を何だと思っているわけ?」


 ヴェロニカが嫌悪を露わにした。ショックを受けているミスティを見ると怒りが収まらない。


「なんとも思ってないと思うわ。特にあたしたちのような存在は……ね。好奇心を満たすための玩具みたいなものよ」


 エスメラルダの許可さえ得れば始末するところだが、身体「光翼人こうよくじん」であるため、そう簡単には出来ない。そして、彼の存在自体が歪められていて、まだ何かを隠している。


「――――で。神様が許さない理由。グラントリーの魂が還らないこと。自分の子供が魂と身体を別にされ、使われたこと。実験の犠牲となったこと……ファタモルガナの存在。精霊の嘆き。そんなところじゃないかって。――――というわけで、グラントリーをどうにかしないと、神の審判……この世界の終わりよ」


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