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Drive us crazy  作者: 神代 鶫
未来への物語
42/60

例え、この先が地獄だとしても

 鏡の中に作られた道を通り抜け、フィレールの部屋にある姿見鏡から外へと出た。作った道を閉じると、ソファーに腰を下ろす。外から聞こえる虫の声を聞くと何故かホッとしたが、のんびりもしていられない。カミーユに気が付かれる前に動かなければ。


「シェルターの方は?」

「ああ、もう指示は出してあるから心配するな。それよりも、研究所にいる奴らの心配をした方がいい」

「ええ。先に私の子達を迎えに行くわ」


 フィレールは、了解というと、再び姿見鏡の前に立ち、道を繋げる。


「よし。さっさと行くぞ」


 手を繋ぎ、再び鏡の中へと入った。アルファ達がいる研究所の、使われていない部屋に置いてあった姿見鏡から出る。部屋の外へ出ると、気配を感じ取ったアルファ達が臨戦態勢で廊下へと出て来た。


「マザー⁉ それに、タウ!」

「ユプシロン!」


 勢いよく抱き着くと一回転して床に着地した。


「マザーが……どうして?」

「あの男が用意してあったのよ。ここにも一度来たでしょう? 誰も、存在を知らなかった男……カミーユ」


 マザーの元へと駆け寄って来た彼女達を見て、全員揃っていることにホッとした。


「あの人が、用意していた……。マザー、あの人は何者ですか?」

「この世界の、すべての天敵。神が許すことのない存在とでも言えばいいのかしら。私のクローンをバレないように用意していたのは、あなた達を捨て駒にするためよ」

 

 マザーが生きていて、嬉しさのあまりに顔がほころんでいたが、険しい目つきに変わった。


「タウも、私の傍にいないと、あなた達を殺そうとするでしょう」


 ユプシロンは驚いたようにタウを見ると、タウが「そうだよ」と頷いた。カミーユにされたことを説明すると、ユプシロンは怒りを露わにする。カミーユが彼女たちに望んでいることは、戦闘型ドールとしての役割の身なのだ。


「あなた達を利用できないと判断すれば、保管されている残りのクローンを使うでしょう。だから、あなた達を殺されるわけにはいかない」


 騒がしいことに気が付いた研究員達が集まって来る。マザーを見て、喜ぶ者もいれば、腰を抜かす者もいた。


「……ここは7人体制だったはず。2人足りないわね。どうしたのかしら?」

「は、はい。2人は、カミーユのいる研究所へ連れていかれました」


 マザーは考え込む。いないのはここのトップ2の研究員で、マザーも評価していた2人だ。精霊石も半分ほど持って行ったという。それは即ち、保管されているスペアのクローンを使うという証拠。


「そう……。あなた達、今すぐ研究所に保管してある精霊石や必要な物をまとめて。ここは、危ないわ。避難しましょう」


 研究員達は驚き、顔を見合わせたが、すぐに返事を返すと研究室へと走りだした。


「アルファ、ベータ、デルタ、イプシロン、ゼータ、エータ、シータ、ラムダ、ミュー、クシー、シグマ、タウ、ユプシロン、ファイ、カイ、オメガ」


 ここにいる成功体の名前を呼ぶ。横一列となった彼女達は、背筋を伸ばしてマザーを強い眼差しで見つめた。


「カミーユが、あなた達のスペアを使って私達を殺そうとするでしょう」


 自分の興味が無くなったもの、邪魔なものはすべて排除する。それが、彼のやり方だ。


「あなた達も、今までのように、死んでも大丈夫という考え方で戦えない。私も、死ぬことは許されない。険しい道のりになるけれど、私と共に行きましょう」

『はい、マザー』


 声が揃う。ここを出る準備を早急にしなければ。後方で様子を見ていたフィレールが頭をかいた。


「やれやれ。この人数を移動させるのは一苦労だな」

「アラァ……ご愁傷様」


 振り向き、そう言ったマザーを睨みつける。まずは、繋がっている自分の部屋に連れていく。その後は、カミーユに見つかりにくい場所へ連れて行かねばならない。


(リサリサの知り合いの呪術師を紹介してもらっておいたのは正解だったな。使われていない地を借りれば、外部からの接触は難しくなる。あとはシェルターか。夜来香イエライシャンとアイツのお気に入りがいるから、そう簡単には手を出せないだろうが、足手まといがいっぱいいるからな……。戦い方を教えてあっても付け焼き刃だ)


 どうしたものかと考えているうちに、準備を終えて集まって来ていた。その人数を見て、ため息をつく。全員手を繋いだのを確認し、覚悟を決めて姿見鏡を潜り抜けた。

 全員の無事を確認し、道を閉じると、ソファーに突っ伏して動かなくなる。


「死ぬ……」


 マザーは微笑みながら、棚に置いてある液体の入った瓶を手にすると、フィレールに渡す。中身は栄養剤のようなものだ。それを飲み干すと、息を吐いた。


「マザー、これからどこへ向かうのですか?」

「そうねぇ、どこかいいところあるかしら?」

「ったく、ちょっとは休ませろ。――朝一、案内人が来るようにしてある。大部屋があるから、そこで全員休め。ここはオレの砦だ。部外者はそう簡単に近づけない。休めるうちに休んでおけ」


 連れていかれた部屋に入り、腰を下ろす。やっと、少しは落ち着けた。研究員に話を聞けば、2人がカミーユの元へに連れていかれたのは、昨日のお昼過ぎ。カミーユの研究所へは順調に行っても一週間はかかるため、少しだけ余裕が出来た。とはいえ、油断はできないのが……。

 自分の近くで眠っている彼女達を見て微笑んだ。この子達は、自分の子供のようなものだ。絶対にカミーユの好きにはさせない。――ミスティも。クレアの大切な子供である彼女を守って欲しい。


 夜空に浮かぶ月に向かって両手を合わせて祈る。世界をカミーユから救えるように――と。


 


「フィレール」

 暗殺者としては魔王と呼ばれる男性。闇市を管理している。暗殺者として育てるためだけでなく、普通の子供も金で売り買いしている。姿見鏡を使って道を作ることが出来るが、鏡だけではなく扉でも可能。ただし、扉から扉の場合の方が疲労が激しいため滅多に使わない。手を繋げなければならず、離してしまうとその道から2度と外へ出れなくなる。

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