表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Drive us crazy  作者: 神代 鶫
未来への物語
41/60

闇夜に輝くは月

物語は後半に突入しました。あと少し、お付き合い頂ければ幸いです。

 ユプシロンと似たような服を身に纏う女性の手に、光を反射して輝いているフィンガーアーマー。彼女は「タウ」。椅子に座り、外を眺めている女性の傍に控えていた。タウの現在の使命は、その女性の世話という名の監視をすること。女性は……死んだはずのマザーであった。あの時死んだはずのマザーが、何故か生きている。憂鬱な顔で、外を眺めていたマザーはため息をついた。


「……まったく、予想通りすぎて嫌になるわね……」


 自分の知らないところで、自分のクローンが用意されている。その可能性はあると思ってはいた。彼にとっては自分がまだ必要なのだ。「マザー」としての自分を。こうなると思って、手は打ってあるが、どの程度時間が稼げるかはわからない。マザーも、カミーユの行動を理解することは出来ないでいた。


「ユプシロンのところに戻りたいでしょう?」

「いいえ。戻ると言うことは、ユプシロンの死を意味します。わたしでいられるようにしてもらえただけで十分です」


 自分のクローンを作らなかった、いや、作ることが出来なかった理由。それは、最後の一体が死ぬとカミーユが目覚めるように設定されていたからである。死んだあの日、マザーの魂は別のところに一度保管され、目覚めたカミーユが、マザーの魂をクローンへ移した。

 カミーユが目覚めたとき、調整中だったタウは、ドールとして必要の無いモノをすべて消去されてしまい、言いなりの人形と化していたが、マザーはそれを見越しており、彼女達を、カミーユの支配から逃れるように細工をしていた。勿論、カミーユにバレない程度であるため、完全なものではないのだが、カミーユが目覚めた後に自分を生き返らせる可能性があると見越して、自分の傍にいれば完全にカミーユの支配から逃れられるようにする、二段階の細工をしておいた。


「結果としては良かったのだけれど……。帰って来たと思ったら、研究所から出てこない。邪魔な研究員は他のとこへ追い出す。まったく、どうしようもない男ね。私もここから出ることは出来ないし……困ったものだわ」

「どうしますか?」

「そうねぇ……ミスティのことに気が付いちゃったみたいだし……まあ、あの子は守られているからそう簡単に捕まらないだろうけど、下手に戦闘になって、やられちゃっても困るのよねぇ。ああ、レベッカ達は大丈夫よ」


 レベッカという女性のクローンがタウだ。彼女たちが暮らす家には優秀な護衛がいる。そう簡単にはカミーユも手が出せない。それに、成功体ということは、精霊との相性が良いということだ。自分の身は自分で守れるように、魔法の使い方を教えておくように頼んである。そのことを知ったタウは、安堵のため息をついた。


「……廃棄――――いえ、ミスティの事に関しては些か納得できませんが、レベッカ達に手を出されないならいいです」

「クローンにはもう興味もないみたいだから、大丈夫よ。だからこそ、あなた達を捨て駒として使おうとしているんでしょうし……世界を救うためにして来た私の努力もこのままだと水の泡ね」


 本当に、どうしたものかしらと呟き、外を見た。抜け出すのは不可能な崖の上。この部屋にはついていないが、一歩外に出れば監視するための装置が至る所に置かれている。何とかして、他の成功体と連絡を取りたい。クローンに興味がないカミーユのことだ。残っているクローンをスペアではなく、そのまま使う可能性を否定できない。……クレアを、連れ去られてしまったあの時、油断した自分を酷く攻めた。

 

(私の願い事は、どうしても叶わないのね……。だとしても、最後まで足掻いてみせるわ)


 マザーのその思いは、すぐに叶うこととなる。


 夜になり、皆が寝静まった頃、部屋に置かれた姿見鏡に波紋が広がった。


「……探したぞ、ジェシカ」


 聞き覚えのある声に、マザーはゆっくりと上半身を起こす。


「よく、ここがわかったわね。フィレール」


 そこから現れたのは魔王フィレール。彼は、マザーのことをジェシカと名前で呼ぶ、唯一の人物である。


「ったく、追うのが大変だったぞ。ここに来るまでも魔力マナの流れがおかしくなっているせいで、バレないように繋げるのに苦労したんだからな」

「アラ、それはご苦労様」


 フィレールはマザーの傍に移動すると、手を取って立ち上がらせた。


「何が起こった?」

「――――諸悪の根源がお目覚めよ」

「あー……なるほどな」


 眉間に皺を寄せたフィレールが舌打ちをした。マザーと繋がっているフィレールは、それがカミーユのことだと瞬時に理解することができていた。


「そろそろ限界か。それで、どうする?」

「そうねぇ……無駄にされる前に抵抗するべきよねぇ」

「了解」


 マザーの手を取って、鏡の中へ入ろうとするその手をいったん止めて振り返った。


「タウ」

「……はい」


 扉の外で待機していたタウに、中に入るように声をかける。俯いている彼女へ手を差し出した。


「ここにいたら、あなたは死んでしまう。だから、――――私と一緒に行きましょう」

「……は、はい!」


 置いて行かれると思っていたのだろう。泣きそうな顔をしていたタウは、嬉しそうにほほ笑むと、差し出された手を取り、フィレールに導かれるように鏡の中へと入っていった。波紋が再び広がったのち、鏡は静まり返ったのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ