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Drive us crazy  作者: 神代 鶫
「彼女達の物語」
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光と闇

 ミスティが眠りから覚めないまま、3日も経過していた。エクレール曰く、魂の記憶という情報が多すぎた代償で、時間がたてば目が覚めるから心配ないという。その間に、少しだけ進展があった。それはあの幽霊の正体。モニカが遺跡のことを報告すべく、城に向かったところ、カトリーヌがアルザスと面会していたため、カトリーヌも同席してもらい報告したが、それを聞いた彼女はひどく動揺した。


「クレア……その、幽霊の名前はクレアと言うのですね……。もしかしたら……でも……」

「聞き覚えがあるのですか?」

「……ええ。違うかもしれませんが、それでもよろしいでしょうか?」


 発言の許可を得てから、カトリーヌはクレアについて話し始めた。聖女教会の最初の教祖クララの生き別れとなった双子の姉が「クレア」という名前ということ。年数からしても、可能性が高い。聖女教会は光翼人との争いが起こる前に設立したのだから――――。


「……水牢と、そのクレアという女性については、記録が残されていない。モニカ殿の報告からして、光翼人はクレア殿と親しい関係であり、人質として捕らわれたのだろう」


 ずっと疑問だった。光翼人が簡単に人に捕まり、人によって傷を負うわけがない。そこには何らかの理由があるはずだと。そういうことだったのかと納得する。現にクレアはごめんなさいと謝っていた。


「魂が、この場所に留まっているということは、まだやり残した事がある……それが何か分かればいいのですが……」

「うむ、それについてはすでに対応しておるぞ」


 琴音がクレアと話ができるかもしれないと、博物館や遺跡などへ足を運んでいた。


「場合によっては一筋の光となる可能性もあるからな。彼女が成仏できれば、言い報告ができるじゃろう?」

「――はい。クララ様も喜ばれると思います」


 カトリーヌはよろしくお願いしますと頭を下げた。モニカが任せてくれといい席を立とうとしたが、2人にお話ししたいことがあると引き留められ、モニカは椅子に座り直した。


「今日は、挨拶だけのつもりでしたが、最近暗殺された方がいらっしゃると聞きまして……」


 そう言いながら、数枚の紙をテーブルに置いた。それは一部のシスターにしか閲覧することを許されていない機密情報、聖女教会が手に入れた人身売買などで取引された子供の個人情報だった。


「レダ様からの許可は得ています。見ていただいて構いません」

「そ、そうか……。では、失礼して……」


 アルザスは、恐る恐る紙を手にした。


「シスターセシリアと、メヌエットからこの街で起こったことの話を聞きました。恐らく、ヘザーが暗殺されたのはこれが理由かと思います」


 それは、「ルル・ニーチェ」という少女の情報だった。生まれてすぐ、両親に売り飛ばされたが、赤ちゃんを欲しがる買い手が見つかり、すぐに売られた。


「……買い手は――ヒースクリフ⁉」

「なんじゃと⁉」


 聖女教会は、売られた子供達などの情報を調べ、救出すべきか判断するのだが、この少女は買われた時に祝福を受けていたため、大丈夫と判断された。


「ヒースクリフに娘がいた記憶はないぞ。どういうことじゃ?」

「その次のページを見ていただけますか? それを見ていただければ、分かると思います」


 二枚目の紙に書かれた情報。「ルル・ニーチェ」をヒースクリフに売った相手。その名は「フィレール」。夜来香に暗殺技術を叩きこんだ魔王の名前が記載されていた。


「彼が売った子供に手を出してはいけない。それは祝福と呼ばれている暗黙のルールです。ヘザーはそれを知らずに、手を出してしまった」

「ルイゼ……⁉ これは、どういうことじゃ? ルイゼはエドガーの娘ではないのか?」


 ルルは、ヒースクリフに買われてすぐに名前を「ルイゼ」に変えていた。そして、ジャクリーヌで幸せに暮らしていることまでが調査結果だ。


「……なんということだ……。これは、事実なのか?」

「はい。本当の娘さんは、生まれてすぐに亡くなっています。そのショックでおかしくなった奥様を守るためにルイゼさんを連れて来たようです」


 ヒースクリフとエドガーは幼馴染で、とても仲が良い。妻である「ルチア」の元を離れられないエドガーに変わってヒースクリフがルイゼを連れて来た。幸いなことに、ルイゼのおかげでルチアは落ち着いたという。


「彼は、暗殺者としての素質がある子供を育てています。気まぐれで、ルイゼさんのような子供もいるのですが、すべて祝福により守られています。彼に喧嘩を売るもの好きはいませんから。手を出した人の末路は……お分かりでしょう?」


 アルザスとモニカは顔を見合わせた。

 

「ヘザーは、魔王の逆鱗に触れたということか……。いや、しかし……ルイゼのことを知っている者は他にいるのか?」

「いえ、恐らくは居ないかと。ただ、シスターセシリアが、ルイゼは息を吹き返した奇跡の子と言っておりました。そういう体になっているのでしょう。ヒースクリフさんという方は、この街でとても信用されている方のようですし……彼が言ったことを皆さんが信じたのです」

「そうか……そうじゃな。これは他人が踏み込むことではあるまい。2人だけが知っていればいいことじゃ。聖女教会も色々大変じゃな」


 カトリーヌは「いえ」と首を横に振る。


「人身売買でも、売られた先が良かったのです。祝福は、売られた子供を守るもの。彼なりの優しさです――と、言うと怒られますが」


 まるで、知り合いとでもいうかのような言い方ではないかと思ったモニカは、カトリーヌを見ると、カトリーヌは微笑み返した。


「彼と聖女教会は相反します。けれど、子供達に関しましては情報提供の契約をしておりまして、彼のところに売られた子供の情報は、全て聖女教会で管理しております」


 聞きたくなかった話に、アルザスとモニカは耳を塞ぎたくなった。聖女教会として、暗殺業は認めていない。子供達への二度と戻ってくるなという祝福がなければ、契約も成立していないだろう。2人は顔を見合わせるとため息をついたのだった。


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