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Drive us crazy  作者: 神代 鶫
「始まりの物語」
3/60

幽霊と博士

色々訂正してます。タイトルすら訂正しました。こっちのほうがしっくりくる。 

 朝食を食べたダリアはお礼を言い、店を後にした。カラルナに、ジャクリーヌに来たならぜひ行って欲しいと教えてもらった美術館を目指して歩く。ジャクリーヌは芸術の街と呼ばれており、オペラハウスやクラシック、演劇などの大きな劇場が存在している美しい街並みだ。

 美術館を見つけ、入場料を払うと中へ入る。建造物自体が歴史あるものだという美術館の展示物は、遺跡を発掘調査して出て来た物のエリアから順に巡って行くようになっていた。


「……すげぇな」


 遺跡を発掘するために使った装置が中央に展示されており、それを囲むように掘り起こされた物がガラスケースに展示されていた。――この街は遺跡の上に作られている。


『……人は罪を犯した』


 錆びたつるぎが展示されたガラスケースの前に、1人の女性が立っている。ぼんやりとしたシルエットで、何故か顔が見えないが、女性であるということだけは分かった。


『人は刃を振るう。流れたその血は、人を殺した』


 何を言っているのだろうか。他の音がしない。周りに人がいなくなっていることに気が付いた瞬間、女性は姿を消え、音も聞こえだす。


「マジか……」


 これって、アレだよな。幽霊ってやつだよな。そう思った瞬間寒気がして、急ぎ足で遺跡のエリアを後にしようとするが、女性が見ていたつるぎが気になり足を止めた。


「遺跡にあった隠し扉の奥で発見。部屋の中央に突き刺さっていた。キレイな状態だったが、抜いた途端に錆に覆われた……か」


 説明文を読み、つるぎに視線を戻したダリアは動きを止めた。瞬きを数回繰り返し、目を擦る。


「な、んだよ……これ」


 錆びていたはずのつるぎがキレイな状態になっており、ゆっくりと赤く染まって錆びていった。あの赤は「血」だ。そう確信したダリアは、頬を引きつらせながら後退りし、逃げるようにその場を離れる。


「――――見たか?」


 隣の絵画エリアに入り、立ち止まった所で声をかけられた。驚きのあまり、大きな声が出そうになるのを両手で口を押えて堪える。


「おお、すまぬ。驚かせるつもりはなかったのだが……。お主、見かけぬ顔じゃな。旅の者か?」

「あ、ああ……そうだけど」

「そうかそうか。この美術館、なかなか凄いじゃろ? ジャクリーヌの歴史がギュッと詰まっておる。わしもお気に入りじゃ」


 いつの間にか、隣に人が立っていた。まったく気配を感じさせなかったことに警戒するダリアを見て、短く笑う。


「そんなに警戒せんでもよい。わしはモニカ。この美術館の遺跡エリアの展示を担当した者じゃ」


 テンプルとブリッジが付いているモノクルをかけている女性は、モニカと名乗ると首から下げている名札ケースをダリアに見せた。


わしは魔法と科学の融合を研究しておる。一応、博士じゃ」


 魔法と科学の融合――――魔法科学と呼ばれるものは、遺跡エリアにあった発掘するための装置や、貴族に人気がある懐中時計。また、資格が必要だが、銃という武器もその研究の結果だ。とはいえ、遺跡の発掘調査は、まだ手探り状態で作られた物だったこともあり、しょっちゅう壊れていたと記録されている。

 ダリアも、モニカの名前は聞いたことがある。彼女は有名な博士なのだ。


「アンタが、モニカ博士。そうか。確か研究所がジャクリーヌにあるんだっけ」

「うむ。ここは良いぞ。魔法科学の研究に相応しい土地じゃ」


 正体が分かれば警戒心も解けて、ダリアはモニカと並んで歩き出した。彼女の絵画の説明は分かりやすかった。その途中、1枚の絵に足を止める。


「……光の、人」


 人の背中に、グラデーションカラーでとても美しい6枚の羽。


「……天使、ではないんだな」

「うむ。それは、光翼人こうよくじんじゃ。光の翼を持った神に選ばれし光の子。その昔、ここに降り立ったと言われておる」


 モニカは、光翼人こうよくじんについて語りはじめた。光翼人こうよくじんはこの地に降り立った。遺跡で暮らしていたジャクリーヌの人々は、その姿を見て、光翼人こうよくじんを神と信じた。そして、病に苦しむ王様を助けて欲しいと願ったが断られて、光翼人こうよくじんをあのつるぎで刺してしまう。想像していなかった内容に、ダリアは衝撃を受けた。


「……何とも身勝手な話じゃ。そこから、光翼人こうよくじんと人間の争いが始まり……やがて、神は人間に罰を与えた。それが魔物じゃ」


 この世界に突如として現れた魔物は絶命すると、その身体は朽ちて残らない。当初は「悪魔」という存在と同じものだと考えられていた。だが、実際は違っていた。


「ちょ、ちょっと待て。なんか、すげぇ話を聞かされてる気がするんだけどさ……あのつるぎって、錆びたつるぎのことか?」

「そうじゃ。光翼人こうよくじんの血で、つるぎは錆びた。その血を浴びた人は火傷を負い、そのまま息絶えたそうじゃ」


 さっき見たのは、やはり血だったのだ。しかし、何故それが見えたのだろうか。その疑問にモニカが答えた。


「さて、旅の者よ。お主は、アレを見たな? 血を浴びて錆びるつるぎ。その前に立つ女性を」

「……アンタも、見えたってことか?」

「ああ。アレは、あのつるぎで殺された光翼人こうよくじんと関係があった者だと推測しておる。我々に冒した罪を償えと申しておるのじゃ。見た者は契約する事ができるのが何よりの証拠」

「契約……?」

わし達に協力してもらえぬか? ファタモルガナと戦うことが出来るヴァルキュリアのメンバーとして」


 いきなり何を言い出すのだろうか。困惑するダリアに、モニカは簡単に説明した。


 ファタモルガナとは、そこにいるけどそこにはいない敵で、モニカが開発した武器でないと攻撃出来ない生物。ヴァルキュリアはそれと戦う為に作られた部隊だという。

 情報量が多すぎて、頭の整理が追いつかないダリアの腕を掴んだモニカは、出口に向かって歩き出した。

 

「お茶でも飲みながら、ゆっくり考えるとしようではないか」

「いや、ちょっと待てって! まだ、全部見てない……!」


 ダリアは、モニカに引きずられながら美術館を後にしたのだった――――。



ちょこちょこ訂正しながら進めていきます。

 

 

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