表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Drive us crazy  作者: 神代 鶫
「彼女達の物語」
29/60

人形の家

琴音ことね

 漆黒の美しい髪。やまとと呼ばれる国の出身で、第一皇女である蓮花れんかに仕えている。彼女が神託を受け、琴音はジャクリーヌに来ることとなった。蓮花のために、世界を旅している最中。霊刀を3ふり所持している。

 元々袴姿だが、旅の途中で出会ったデザイナーと仲良くなったことがきっかけで、和洋折衷になっている。

 標準語で喋ってはいるが、実は……


 ジャクリーヌから遠く離れた場所にある、名も無き小さな街。ここは、子供達を守るために「ニキータ」という名の貴族が作ったと言われているシェルターの1つだ。中央にはニキータの石像、それを取り囲むように家が並んでいる。

 街の外れにある墓地に、雨が降る中、歌を歌いながら傘を使って舞っている女性がいた。墓石の前で舞う彼女の動きに合わせて雨も舞う。スカイグレーの髪が青く輝き、水と合わさって神秘的な雰囲気を醸し出していた。

 これは、亡くなってしまった者達へ送る鎮魂歌。遠くまで届くよう思いを込めて歌い、舞う。この墓石の下に埋葬されているのはごく1部。並ぶ墓石の真ん中にある慰霊碑は、名を忘れられた者達のために作られたものだ。

 舞い終えた女性は、慰霊碑を見つめていた。自分が生きているのは運が良かったから。生きていても心が壊れてしまった者もいる。


「……わたしは、運が良かった」


 名を忘れられた者達。実験が始まったあの日から5年ほど前まで、死んだ被験体はゴミのように捨てられていたという。


 ――――ここは、実験の犠牲になった被験体の墓場だ。


「成功体のお墓だけなんて、ひどすぎる話だわ。たくさんの犠牲があって……わたし達がいるのだから」


 彼女は「ルミナス」。成功体である彼女は実験を終えて、ここで暮らしていた。ここに連れて来られたのは、5歳の時。お金に困った両親に売られた彼女は、ここでずっと暮らしていた。ここで暮らしているのは、みんな同じような子供達。子供のための施設というのは嘘だ。ここに連れて来られた子供は、被験体ということを知らずに過ごすこととなる。

 しかし、今現在は新たな研究は行われていない。その理由の1つは「マザー」が死んだからだ。ミスティが施設を破壊した時、マザーはそこに滞在していて、爆発に巻き込まれて亡くなった。


「……ボレロ。ナターシャ。オーウィミィ。ワカナ。サフィア。ストロベリー。フリージア。リリカ。ベルアィーダ……」


 自分と同じ成功体だが、死んでしまった子達の名前を呼ぶ。リリカ以外はクローンも残っていない。その欠員補充をするために、マザーを中心として動いていたが、ミスティを使った実験の失敗によりすべてが焼失してしまった。


「あ~! ここにいたぁ。ルミナスちゃん、みんなとティータイムのじかんだよぉ!」


 人形を大事そうに持っている無邪気な女性が、ミスティに駆け寄ってくる。見た目は20代だが、喋り方が幼い子供だ。幼児退行してしまった彼女の名は「ニーナ」。双子の姉である「ボレロ」が亡くなってしまったあの日から、彼女の幼児退行が始まった。


「あのね、オフェリアちゃんが、さんかするって!」

「オフェリアが? そう……願いが叶ったからかしら? 体調が良くなったのね」


 手を繋いでみんなが暮らす邸へ歩く。邸に暮らしているのは成功体と呼ばれる子達。成功体のクローンは各地に散らばっているため、ほとんど接触することは無いのだが、オフェリアは自身のクローンであるオメガとの繋がりが強かった。


「ねがいごとかなったの? よかったねぇ!」

「ええ。良かったわね」


 邸の玄関の前に人影が見えた。車椅子に乗っているオフェリアと、車椅子を押す1人の女性がルミナスとニーナに気が付くと手を振る。


「オフェリア、少し顔色が良くなったわね」

「はい……。やっと、願いが叶いましたから……。私を殺そうとした両親への復讐を、私が叶えてくれました。だから、とても調子が良いんです……」


 話しながら中へと入ると、駆け出したニーナを目で追う。


「……ニーナさんの幼児退行は止まったみたいですね」

「ええ。恐らくは……幸せだった頃まで幼児退行したんだと思うわ。家族で仲良く暮らしていた頃まで」


 ニーナが大切にしている人形。彼女はそれをボレロと呼んでいる。


「思い出さないほうが幸せなこともあるでしょう。辛い過去が心を蝕むのなら忘れていた方が良い。誰しもが、強いわけではないもの」


 オフェリアの車椅子を押している女性が、ウェーブのかかった真紅の髪を後ろに払うと、白檀の香りがした。


「ノワールさんも、ですか?」


 振り返って問いかけると、頷いた。


「私も、あまり過去の事は思い出したくないわ」


 ダイニングルームに入る。テーブルの上には色々なデザートが並んでいて、すでに全員揃っていた。席に着くと、ノワールと同じ、成功体の世話をしている「コレッタ」という少女が、紅茶を注いでいく。食事は、すべてコレッタが用意していた。今までは個々で食事をしていたが、ノワールとコレッタが来てからは、全員揃う様になり、前より雰囲気が明るくなっている。


(マザーが亡くなった。クローンを使っての実験は中止になったけれど、恐らくはホムンクルスや試験管ベビーでの実験は続けられている……。むしろ、メインはホムンクルスに移行していた)


 目の前で、楽しそうに会話している仲間たちを見ながら、ルミナスは注がれた紅茶を口に運ぶ。


(その方が、色々と都合がいいという理由は納得できるわ。子供を集めるにも限界があるもの。だけど……あの人は信用できない)


 マザーが亡くなった後に、コールドスリープから目覚めた「カミーユ」。成功体の中にもコールドスリープで100年以上眠っていた者達がいるが、誰一人、彼の存在を知らなかった。信用できない理由はもう1つ。ここを「人形の檻」と読んだこと。彼女達にとって、ここは檻なんかではないのだ。


「ルミナスちゃん、これおいしいよ」


 ニーナからマフィンを受け取り、ありがとうとお礼を言って微笑めば、ニーナは無邪気に笑った――――。



「カラルナ」

 アーケード街にある「ゆりかもめ」というお店のウエイトレス。しっかり者で、ルイゼのお姉ちゃんのような存在。彼女目当てで来るお客さんもいる。

 セクハラをしてくる客は容赦しないで出禁にするらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ