悪魔なの?
「エクレール」
エスメラルダと契約している自称眠り羊。幻獣であり、雷を自在に操る事が出来る。金色の瞳。エスメラルダと対照的なロングウェーブの髪型で、髪の色はアメジストのような強い紫色。頭には黒い角が生えている。
普段はノンビリゆったりとした喋り方だが、睡眠妨害や、エスメラルダに手を出そうとするとキレて、声のトーンが変わる。冷静沈着な喋りになるため余計に恐い。
寝だめが出来るため、何も無ければずっと寝ている。睡魔>幻獣としての誇。目があっただけで、相手に恐怖を与えることが出来る。
穴が開いたところへ案内されたヴェロニカとモニカは、その穴を上から覗いた。底が見えないため、かなり深いことが推測される。風が通り抜ける音が恐怖を煽った。
「ここから落ちたの!? ……よく無事だったわね……」
ヴェロニカはクラクラするわ、と言い、穴から離れた。
「いやはや、ここで良かったというところじゃな。ここは、誰が置いたか分からぬゴミ置き場じゃったからな、人も近づかぬ。ここのゴミは……落ちたかもしれぬが、人間は大丈夫だろう。というか、普通の人間なら死ぬ。間違いなく」
「……大丈夫です。下から人の気配は感じられないので、心配ないかと思います。でも、危ないですよね。塞ぎますか?」
「そうじゃな……塞がないとまずいな」
近くに聖女教会がある。その隣には孤児院も存在する。子供がここに来ないとも言い切れない。
ミスティはわかりましたというと、地面に手を触れた。大きな穴はみるみるうちに無くなり、元通りとなる。
「これで、いいですか?」
「なんと!」
モニカは塞がった穴の上で飛び跳ねた。
「うむ、問題ない。大丈夫じゃ。しかし、こんな簡単に穴が出来るとは……ソニアに報告せねば」
戻ろうとした3人は、聖女教会から出てきたメヌエットに呼び止められた。
「あれ? おはようございます! どうしたんですか?」
「ちょっと、街を案内してるところなの。紹介するわね、ヴァルキュリアに加わってもらったミスティよ。ミスティ、彼女はメヌエット。聖女教会で働いているわ」
メヌエットはよろしくお願いしますと、頭を下げた。
「ヴァルキュリアは一気にメンバー増えたね。こっちは大変みたいだよ。なんか、悪魔じゃないかって事件があったらしくてドタバタしてるんだ」
「あら、そうなの?」
「うん。ほら、これ」
肩掛けカバンに入っていた新聞を取り出すと、記事を指差した。それは、話題に上がった貴族殺しの記事だった。
「これは……、なるほど。犯人は娘で、その娘が悪魔に憑りつかれている可能性があるのじゃな」
「……あれ?」
ミスティが、載っているオフェリアの写真を見て首を傾げた。どこかで、見たことがある気がする。
「この子……施設で見たことあるかもしれません」
「え? 施設って……?」
今度はメヌエットが首を傾げた。
「メヌエット、新聞を見せてくれ」
「あ、うん」
新聞を受け取り、ちゃんと記事に目を通す。そこには確かに数10年前の事故で死亡したと思われていたが生きていたと書かれていた。
「まさか、事故に見せかけて誘拐されたということか……? ミスティ、施設にいた者達の素性とかは知っているのか?」
「聞いたことないからわかりません。ただ、新しく来る子はみんな子供で、確か家族がいない子ばかりだったと思います」
「ねえ、これおかしくないかしら? 殺害現場にいたオフェリアは10代前半くらいって書かれてるけど……事故にあった時6歳。それから数10年って……詳しくは書いてないけど、計算合わないと思わない?」
幼く見える子なのかもしれない。しかし、今、この状況で導き出された答えは――――クローン。
「もしや、オフェリアも被験体として……」
「はい。ですけど……ごめんなさい。顔と名前を憶えているのは2人だけなので……本当に彼女だったかまでは自信がありません」
「でも、引っかかったんでしょう? 矛盾している点も踏まえて考えれば、被験体って可能性は高いわ」
話していることの意味が分からないメヌエットを置いてきぼりにし、あーでもないこーでもないと話し合う。耐え切れなくなったメヌエットが声を上げた。
「あの! ボクにはさっぱりなんだけど、悪魔は無関係ってことでいいのかな?」
「すまんすまん。そうじゃな、悪魔ではないと思うが、絶対そうだとも言い切れぬ」
新聞を折りたたみ、メヌエットに返した。鞄にしまったメヌエットはまずいかもなぁと呟く。
「なんじゃ? 悪魔でないとまずいのか?」
「うーんと……聖女教会からシスターマーガレットの処分についての通達があったんだけど……追放されないための条件が、この事件なんだよね。悪魔じゃなかったら、どうなるんだろ?」
盛大なくしゃみを2回続けてする。マーガレットは、うう……と唸りながらティッシュで鼻をかんだ。ティッシュに収まらなかった鼻水が見えて、隣にいるセシリアが眉をひそめながらも新しいティッシュを手渡した。
「ありがとうございます……」
「アレルギーですか?」
「いえ、きっと、わたしのことを誰かが応援してくれてるんですよ!」
2回のくしゃみは、良い意味ではない。しかし、マーガレットにはそんなことは通じないであろう。セシリアは聞き流すことにした。
「いいですか? 悪魔の仕業ではないかと不安に満ちています。人々の不安を取り除けるよう努力しなさい。悪魔の仕業でなかった場合は本部からまた指示が出ます。こちらは一切手を貸しません。シスターでありたいのであれば、問題を起こさずに解決するのですよ?」
「はい! もちろんです! シスターマーガレットにお任せください!」
何故だろう。ものすごく不安になるのは。マーガレットは意気揚々と馬車を下りて行った。
シスターマーガレットの処分について。本部からの通達があってすぐに出発した。タモラ侯爵の殺害に悪魔が絡んでいる可能性がある。すぐに対処せよ。なお、本件はシスターマーガレット1人で行う事。問題を起こさずに解決せよ。この事件を解決したのち、評価により処分を決める。
「……恐らく、本部から監査官が送り込まれているはず……。シスターマーガレット、本当に本当に問題を起こしては駄目ですからね……!」
セシリアは、マーガレットが無事に事件を解決できるよう神に祈るのだった――――。
モデルナのワクチン2回目の地獄でした……。副反応ここまでとは……2日休みもらえて良かった……。




