表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Drive us crazy  作者: 神代 鶫
「彼女達の物語」
22/60

約束

「マーガレット」

 黒みがかった赤褐色のおさげショートに、茶みを帯びた深い黄緑の瞳。

 悪魔祓いのフリーシスターであるが、問題児。歩く大迷惑。存在自体が大迷惑などと呼ばれてしまうほどの行動をとるため、ダリアが酷い目にあっている。しかし、シスターとしての能力は合格であり、もう少し落ち着いて欲しいところだ。

「私の友達だったの? そう……覚えていなくてごめんなさい」


 見た目はナターシャだけれども、中身が……違う。全てが違うものだ。別人だということに気が付いたあの日。オーウィミィもナターシャと同じように、別人になってしまったことで確信した。


「ナターシャは昨日亡くなったの。実験がうまくいってたのに、病気になってしまったから、記憶の共有とか色々中途半端な状態なのよねぇ……まあ、記憶なんて必要ないからいいのだけれど。あ、私のことはナターシャじゃなくてイオタって呼んでちょうだい」


 そう言ったイオタ。


「オーウィミィ? ああ、あたしの本体のことか。悪いけど、もう会うことは出来ないよ。悪い病気で隔離されてるからね。もう用無しだし、近いうちに処分されるはずさ。ああ、そうそう。オーウィミィじゃなくてカッパね。名前、間違えないでよ?」


 そして、カッパ。

 2人はこう続けた。自分は成功作だと。

 成功作という言葉が、1つの答えとなる。顔も覚えていないあの子達は――――死んでしまったのだ。

 2人は大人達が「ドール」と呼んでいた。人ではなく人形になってしまったのだと理解すると同時に、次は自分の番ではないかと気がついた。

 

 2人に会った次の日。目が覚めると、ミスティは培養槽の中にいた。身体は拘束されているために動かすことは出来ない。透明な液体の中から見える景色は、恐怖でしかなかった。

 ガラス張りの巨大な水槽や、カプセルが並べられた空間に、白衣を着た人達がいて何かを話している。自分と同じように培養槽の中に入れられた子達がいるが……もはや、生きているのが不思議なくらいの状態になっていた。

 顔が半分無い人。上半身だけの人……そんな人が入れられた培養槽の周りに研究員である大人達がいた。


 ――逃げなきゃ。私も殺されてしまう。でも、どうやって?


 恐怖で怯えるミスティの前に男性の研究員がやって来た。見覚えのある顔。話したことは無いけれと、ナターシャとよく一緒にいた男性だ。


「やあ。気分はどうかな? ついにこの日が来て嬉しいよ。ここにいる尊い犠牲のおかげで……この日を迎えられた。神に感謝しよう! 君という存在を手に入れることが出来たのだから」


 この人は何を言っているのだろうか。うっとりとした眼差しで、ミスティを見つめている。その視線が気持ち悪い。


「たくさんの被験体が犠牲にはなったが、ナターシャもオーウィミィも私が作り出したんだ。間違いなく、成功するぞ。魂の相性は抜群。私は間違いなく神となる!」


 何かが培養槽の中に入れられた瞬間、ミスティの意識は暗闇へと落ちた。深く深く沈んでいき、一気に浮上する。

 意識が戻った時、ミスティは瓦礫の山の上に立っていた。周りにはファタモルガナ達がふらふらと歩いている。


『――――……』


 名前を呼ばれた気がして振り返る。しかし、そこには誰もいない。

 逃げなさい。そう聞こえた気がしたミスティは、駆け出したが、時折頭痛がして、足を止める。


『……何故だ!? 何故、何も起こらない!?』


 頭痛がするたびに声が聞こえる。この声はあの男の声だ。ガラスを叩く音と、男の怒りを含んだ声。


『アラァ……やっぱり失敗したのね。どうしても、彼女のクローンは作れなかったでしょう? 理由は定かじゃないけれど、原因はそれじゃないかしら? だけどね、ドクター? 許可なく実行した責任はとってもらうわ』

『うるさい、うるさい!! 世界を救うための実験なんて、最初から無理だったんだ! オレのせいじゃな……』


 男の首が飛んで床に転がる。血飛沫がガラスにこびりついた。


『イオタ、ご苦労さま。掃除もお願いできるかしら?』

『はい、おまかせください』


 ――ズキン。ズキン。頭が割れそうなほど痛む。動悸がする。乱れた映像。乱れた声。

 映像はブツリと切れて、すぐに他に変わった。研究員達は、誰もいない。ガラスもキレイになっている。あれからどのくらいの時間が経ったのだろうか。


 ――――ミスティ。


 鳴り響く警報音。割れるガラス。悲鳴。


『――――廃棄体、魔力上昇、限界突破。警告警告』


 身体の奥底から力が溢れる。今なら、――――逃げられる。


 解放するんだ。そう聞こえた瞬間。何かが弾けた。


「ぐっ!」


 頭を抱えてしゃがみ込む。


「……そうだ」


 思い出した時、頭痛も動悸も治まっていた。飛んできた炎の矢を、素手で掴むと水で消し去った。

 立ち上がり、ゆっくりと振り返る。そこにいたのはカッパ。ミスティを追って来たのだろう。その手に炎を纏い、睨みつけて来た。


「廃棄体……よくも、よくもやってくれたわね……! おまえのせいで、イオタもマザーも死んだ……っ! 」

「……オーウィミィ……」

「オーウィミィじゃないっていってるでしょう!?」


 炎は渦となり、ミスティを飲み込むが、彼女を燃やすことは出来ない。


「……分かったの。あそこで何が行われていたか……オーウィミィもナターシャもあそこに入れられた被験体……」


 炎から守っていた風が、炎の勢いを増して、空へ舞い上がる。そして、カッパへと勢いよく落ちた。


「ぎゃあぁぁぁぁっ!」

「見えたの……一番奥に、オーウィミィとナターシャがたくさん眠っているのを……あれはスペアボディ。クローン。ホムンクルス……試験管ベビー」


 あの部屋で行われていた非人道的な実験。全てはあの女性、マザーの指示。


「でも、そんなことどうでもいい。私は、外の世界で自由を手に入れるわ。誰にも邪魔させない……」


 外の世界、ナターシャとの約束。果たせなかった代わりに、自分が外の世界に何があるのかを見る。だから――――


「おやすみなさい」


 前に突き出した手のひらから、小さな赤い炎が現れてカッパの方へ飛んでいく。それは、焼かれてもがき苦しむカッパを一瞬で消し炭に変えた。


『あ、あのね。オーウィミィも一緒に行きたいな……?』


 外の世界に憧れた2人に、もう会うことは出来ない。2人の思いを胸に、ミスティは、歩き出したのだった――――。



 

もうすぐ、2回目のワクチンです。周りが全員高熱にうなされててヤバすぎです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ