夢から醒めた人形
【ダリア】
世界を旅する旅人である女性。年齢は10代後半から20代前半。
強い黄赤のショートヘアに、暗い青みの緑の瞳。
マーガレットとは幼馴染であり、被害をたくさん受けている苦労人。言葉使いが悪いのもそのせいである。
基本的には面倒見がよく、頼まれると断れない性格。友人も多い。
フリルやレースなどが苦手。
――窓が無い白い部屋に、わたしはいた。部屋にあるのは寝るためのベッドとお人形。それと、絵本。
決められた時間に外に出て、お友達と遊ぶことが出来るのが唯一の楽しみだった。
「……あれ? ――ちゃんは?」
いつも遊んでいた女の子が今日はいない。
「おねつがでて、休んでるんだって」
「そうなんだ……。早く、げんきになるといいね」
そう話した女の子もいつしか姿を見せなくなって、熱が出たという女の子も姿を見ることは二度となかった。――彼女達の名前も顔も、もう思い出せない。
「あたし、ナターシャっていうの! よろしくね!」
「えっと、オ、オーウィミィです……」
覚えているのは、2人の女の子だけ。だけど、元気で明るかったナターシャは、病気で隔離されてしまい、オーウィミィもそれから数か月後に姿を見せなくなってしまった。
この2人を覚えているのには理由がある。
それは――再会した時に、中身が変わってしまっていたから。
「……あなた、誰?」
目を覚ますと、そこは知らない場所だった。ふわふわした布の上に寝かされていることを理解して、ゆっくりと上半身を起こす。
「……ここは、どこ?」
自分を追いかけて来たドールを倒したとき、それが原因で地面に穴が開いて遺跡へと落ちた。そこには自分と同じ存在がたくさんいて、ここなら身を隠すことが出来るかもしれないと遺跡の中を彷徨った……ところまでは覚えている。
しかし、ここは明らかに違う場所。自分が過ごしていた場所でもない。それに……
「……青い空……」
窓から空を見上げる。必死で逃げて来たため、空を見上げることもしなかった。
「これが、外の世界……」
窓から身を乗り出そうとした動きを止めて振り返る。近づいてくる足音が聞こえてきた。敵意が感じられないことにホッとする。
「あっ! 目が覚めたのね。気分はどう? どこか痛いところとかない? お腹空いてない?」
ノックをしてから部屋に入って来たアプリコットが、笑顔で駆け寄り、質問攻めにする。だが、女性は一切顔色を変えることは無い。
「お医者さん曰く、疲労が原因だって。美味しいものたーくさん食べればすぐ元気になれるわ」
「……お医者さん……。疲労……。美味しいもの……」
単語を1つ1つ確認しているかのような呟きに、アプリコットは困惑したが、自分はアプリコットと笑みを浮かべて名乗った。
「あなたの名前は何て言うの?」
「……ミスティ」
「ミスティちゃんね! ご飯食べれる? 一緒に行こ」
アプリコットに手を引かれながら歩き出す。
『外の世界って、すっごーく広いんだって! いつか一緒に行こうね!』
そうナターシャに言われたのはいつの頃だっただろうか。雰囲気が似ているから、ナターシャの事を思い出したのかもしれない。そんなことを考えながら1階へと下りていく。
「キャラメルちゃんのご飯、すっごく美味しいのよ。ミスティちゃんもすぐ元気になれるわ」
ご飯を美味しいと思ったことがないミスティは、表情にはださないが、意味が理解できずにただ困惑していた。食事は食べなければ死んでしまう物。お皿に乗せられた正方形の形の食べ物を決められた数だけ食べて生きてきた。
「……この匂いは、なんですか?」
「今日の朝ご飯は焼き立てのパンとコーヒー……あ! ミスティちゃん、コーヒーと紅茶、オレンジジュースもあるけど、どれがいい?」
何を言っているのか理解できないミスティを置いてきぼりにして、アプリコットは話を勝手に進めていた。
「苦いの苦手ならミルクたーくさんいれてもいいかも。オレンジジュースはね、手作りなんだよ。みんな~、ミスティちゃんを連れて来たよ」
「あや、良かった~。目が覚めたんですね。ささ、どうぞこちらへ~」
キャラメルが椅子を引いて、アプリコットがミスティをそこまで連れていく。椅子に座ると目の前に置かれた焼き立てのパンとハッシュドポテト、サラダにスクランブルエッグ。フルーツ。どれも見たことがないが、その匂いにお腹が鳴った。
「たくさん、食べて下さいね!」
医者は、ミスティがずっと食事をとってなかったのではないかと言っていた。お腹が鳴ったことで、やはりそうだったんだと皆、色んなものを進めてくる。
「飲み物決めた? 決められなかったら全部用意するよ?」
「はい! お任せください~」
何故、楽しそうなのだろうかと疑問に思いつつ、隣に座ったアプリコットのマネをしてパンを2つに割って口に運んだ。
「……美味しい」
「でしょ~?」
「これが……パン」
「え? ちょっと待て。まさかだけど、パン食べたことないのか?」
頷くミスティを見て、衝撃が走る。
「食事はこういう固形物だったから」
ジェスチャーと口で簡単に伝えると、全員身を乗り出して先程より強めに色んなものを食べろと勧める。
聞けば、水しか飲んだことが無いと言う。キャラメルも飲み物を全部用意して運んできた。
「私の国にいる忍びが食べる、一粒食べたら何日かは大丈夫みたいなものでしょうか……」
「ああ、それ、傭兵も常備してるわよ。私も持ち歩いてたわ。仕事の内容によっては食事なんてゆっくり出来ないもの」
「はわわ……アレ、美味しくないです~……。あんなものは食事として認めません。ミスティさん。パンまだいーっぱいありますよ~。追加しますか?」
ミスティは頷いた。バスケットに入っているパンをトングで掴んでミスティの皿に乗せる。ミスティは嬉しそうにそれを口に運んだ。
「話せない事なら話さなくてもよいが、何故あそこにいたのじゃ?」
2つ目のパンを食べ終えたミスティに、モニカは話しかけた。
「……地面に穴が開いて、あそこに落ちたから……」
「穴……。やっぱり、この街から遺跡へ入れる場所が何か所か存在しそうね。ソニア達に報告しないと……。あとで、その場所を案内してもらえるかしら?」
「はい。……でも、私といると狙われるかもしれないです」
狙われるという言葉に、ヴァルキュリア達は顔を見合わせた。
「それは、どういうことじゃ?」
「私を捕まえるために、ドールが追いかけて来てます。1体は倒したけど……すぐに復活するからキリが無いです」
ミスティは分かっている範囲で説明した。自分は住んでいたところを破壊してしまったこと。そのせいでドールという人に追われていること。ドールは何体存在するのかわからないということ。
安心できたのは、ドールという存在は、人と関わることを嫌がるということだけだ。恐らくは街の人に危害はない。しかし、ミスティと一緒にいる場合は別かもしれないという。
「なるほど……。あともう1つ。あの遺跡にいる人ではないモノが見えるか?」
「見えます。だって――――私と同じ存在だから」
キャラクター紹介を前書きにいれることにしました。
引き続きよろしくお願いします。




